[ 国内特集① ]

新緑の日本を愛でる感動の旅

透き通る「青もみじ」の神秘を

企画=山口真司/柳幸治/原田知美/中島悠 文=浅見浩二
  • イメージ イメージ 鏡面仕上げを施した漆塗りの床に、青もみじが映り込む宝徳寺の本堂
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磨きあげられた床に映る 青もみじに息を呑む

今年もまもなく清々しい新緑の季節がやってきます。その日本の初夏を彩る、みずみずしくも艶やかな自然の美しさを前にすると、誰もが心洗われるような気持ちになるのではないでしょうか。今回ご紹介するのは、そんな新緑らしい透き通るような青葉が圧巻の「青もみじ」の世界に浸る旅。そして、さわやかな空気のなか、ゆっくりしたペースでハイキングを楽しむ旅。薫風を感じながら、豊かな癒やしの時間をご堪能ください。

青もみじとは、一般に、春の若葉から深みを増すカエデのことをいいます。その優美で幻想的な景観が見どころの旅で、まずおすすめなのが、群馬県桐生市の山あいに佇む「宝徳寺」です。ここは、宝徳年間(1450年頃)に、桐生地域の領主であった桐生佐野正綱公により創建された禅寺。関東では数カ所のみといわれる禅宗方丈様式の本堂でご覧いただくのは、約28畳の床面に映り込む、センセーショナルなまでに美しい青もみじの風景です。春から初夏にかけてと秋の特別公開の時期にだけ見ることのできる、その神秘的な世界はまさに息を呑む優艶さ。赤や黄に染まる秋とはまったく異なる、清麗なフレッシュグリーンの鏡像をご満喫ください。

  • イメージ イメージ 上下反転した形で水鏡のように映り込む、空と青もみじ

床に映る青もみじは、京都ではよく知られているものの、関東の寺院ではほとんど見られません。当日は床の間際まで近づけるので、低い位置からの撮影で、石庭の向こうの実際の青もみじと水鏡に映るような情景の両方を1つの画面に収めることができます。また、本堂では、仏法を守護する神として崇められる二柱の龍を描いた、壮観な襖絵もご覧いただけます。

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異なる色合いの苔と青もみじの雅なハーモニー

壮麗な青もみじを楽しめる2つ目のコースは「箱根美術館」へ。ここは、戦中戦後の混乱期に造園された庭園のなかにある、日本陶磁器などを展示する美術館です。「神仙郷」と名付けられた庭園は、自然の山水美と人工的庭園美を調和させた1つの芸術品として造られたもの。入口から続く石畳の散歩道の先に、中国風の「竹庭」、築山、渓流、瀧などを回遊する「石楽園」、緑の絨毯のような苔ともみじが美しい「苔庭」などが広がっています。なかでも最もご注目いただきたい苔庭には、約130種類の苔と約220本のカエデを配植。苔と青もみじのしなやかなコントラストをご堪能いただけます。

  • イメージ イメージ 青もみじと一面の苔が木漏れ日に輝く、箱根美術館の苔庭
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青もみじと由緒ある 建築物が描き出す庭園美

青もみじを愛でる3つ目のコースでは、日本・中国をはじめとする東洋美術の価値ある作品の数々を収蔵・展示した、熱海の高台に建つ「MOA美術館」を訪れます。約七万坪におよぶ広大な敷地には、檜皮葺き・入母屋造りの「能楽堂」や、復元制作した豊臣秀吉の「黄金の茶室」、150本以上の眩いばかりの青もみじと、由緒ある建築物が調和する「茶の庭」といった日本情緒あふれる施設が点在。ガイドの案内付きで、鮮やかな青もみじの庭、美しい文化財と建築物をご覧いただきます。

  • イメージ イメージ 石畳の苔や青もみじで若緑色に染まる、MOA美術館の茶の庭