「そうだったのか!」 知れば「なるほど!」、知っ得情報
その⑩
アスパラガスのコト 知っ得‼
井上智之

えっ! グリーンアスパラとホワイトアスパラって、同じ品種なんだ‼

  • イメージ イメージ アスパラはドイツの春の風物詩、そして野菜の王様

眠りから目覚めるように、生命がはつらつと息吹く5月。やわらかな日差しを浴びながら楽しむ、産地自慢の味覚狩りは心躍るひと時でしょう。そこで今回の「知っ得」は春の旬食材の1つ、アスパラガス(以後アスパラ)の不思議を探ってみました。

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アスパラの和名がなぜ「雉隠し」に?

栄養満点な上にサラダや肉巻き、パスタと幅広い料理に重宝するアスパラ。瑞々しい旬の味わいは、格別です。そんなアスパラがオランダ人によって日本に伝えられたのは、江戸時代の1781年。当時は食用ではなく、花と赤い実を楽しむ観賞用だったそうです。付けられた和名は、「オランダキジカクシ」。現代人にはなんとも意味不明ですが、成長すると葉のように見える細かな茎(擬葉)が、雉(キジ)を隠すことができるほど生い茂る姿に由来します。

1871年に北海道開拓使がアメリカから食用品種を輸入し栽培をはじめて以後、今や食卓をにぎわせるアスパラ。では、グリーンアスパラとホワイトアスパラの違いをご存じでしょうか? 太陽の光をいっぱいに浴びて育つグリーンアスパラは、光合成によって葉緑素が緑色に。対してホワイトアスパラは、芽に土をかぶせたり遮光フィルムでハウスを覆うなど、日光が当たらないように育てるため乳白色に。栽培方法が違うだけで、実は同じ品種なのです。

なかでもホワイトアスパラは、ふくよかな食感と繊細な甘みから、ドイツでは「白い黄金」、フランスでは「貴婦人の指先」と称される春の風物詩。セレナーデ号の春の船旅でも、必ずお召しあがりいただいています。

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グリーンアスパラの缶詰を目にしない理由

買い置きしておくと、なにかと便利な野菜の缶詰。トマトやコーン、ビーンズ、そしてホワイトアスパラの缶詰と多彩なのに、日本では、なぜかグリーンアスパラの缶詰を目にしません。その理由の1つは、缶詰製造の過程で高温加圧殺菌をグリーンアスパラに施すと、鮮やかな緑色が色褪せるから。その色がおいしそうでないために消費者に受け入れられず、大正時代にはじまったグリーンアスパラの缶詰製造は姿を消していきました。

海外のアスパラの嗜好も、理由に挙げられるでしょう。欧米ではグリーンアスパラよりもホワイトアスパラが人気。それを伝え聞いた北海道・岩内町出身の農学博士である下田喜久三さんがホワイトアスパラの栽培を開始し、地元の農家にも奨励するとともに、この地に東洋初のアスパラの缶詰会社を設立。品質の良さから欧米などで人気になりました。中国や台湾などの安価な缶詰の台頭により衰退しましたが、缶詰の需要自体は今も健在なのです。

一方、グリーンアスパラは、1970年代の「緑黄色野菜」ブームとともに、高い栄養価と手頃な価格で人気上昇。長野県など、寒暖差のある地域の特産物になりました。

  • イメージ 伝来当初は、花と赤い実を楽しむ観賞用だったアスパラ
  • イメージ ポリフェノールたっぷりの別品種「紫アスパラ」も
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食べているアスパラは ほとんどが“オス”

普段なにげなく食べているアスパラですが、その性別をいい当てられますか? 植物は1つの株に雌花と雄花をつける「雌雄同株」の仲間と、雌株と雄株とに分かれる「雌雄異株」の仲間があり、アスパラはホウレンソウなどとともに「雌雄異株」の植物なのです。

そして正解は、ほとんどがオス。たくさんの芽を出すのはオスなので、どうしても農家の皆さんは高い収穫量が見込まれるオスを栽培することに。結果、お店で売られるアスパラはオスの方が多くなります。見分けるポイントは、アスパラの穂先。穂先に隙間があり膨らんでいるようなら、オス。穂先がギュッとしまっているなら、メス。ちなみに栄養価も味わいも、メスの方が高いそうです。

「アスパラの薬用」のこと、知っ得!!
栄養ドリンク!

古くから薬用効果があることで知られるアスパラ。特にアスパラが豊富に含んでいる「アスパラギン酸」は、エネルギー源として最も利用されやすいアミノ酸の1つといわれ、アンモニアの解毒作用も知られています。疲労回復に効果があるとされ、栄養ドリンクにも利用されています。