[ 世界を旅する・ベルギー編 ]

中世に時計の針を巻き戻したような
夜のブルージュ

企画=辻井麻理 文=鈴木祐蔵
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おとぎ話の世界に迷いこんだのかと錯覚するほど、うるわしく可憐なベルギーの水の都ブルージュ。縦横に張りめぐらされた幅の狭い運河には、街の名の由来になった重厚な石づくりの橋が50以上も架けられ、鐘楼や聖母教会、切妻屋根が印象的な赤レンガづくりの建物、緑の樹木が水辺を彩ります。15世紀に運河の沈泥のため繁栄に影がさした影響で、中世のままの姿が息づく小ぢんまりとした街には、そんな絵画を思わせる情景があふれ、「屋根のない美術館」と賛美されるほど。徒歩、小舟、馬車で、さまざまな場所、角度から観賞したくなります。ゆったり滞在すれば、郊外にある村ダムなどへ、風車や田園風景を眺めながらの運河クルーズも楽しめます。

陽が傾くと空の色が刻々と移り変わり、木々が影絵のように黒い輪郭へ。陽が落ちて観光の人影もなくなった夜は静寂が訪れ、ライトアップされた建物や橋など中世の面影が白鳥の浮かぶ河面にもおぼろげに映り、幻想的な雰囲気に。

うっとりするほど滑らかで味わい深いチョコレート、焼き立ての香ばしいワッフルをはじめ、この街は美食の宝庫でもあります。

ゆとりを持って街をめぐることで、思いもかけない珠玉の風景や美味に出あえ、宝探しのように心が浮き立つ時間を過ごせます。