[ クローズアップ ]

大地を彩るワイルドフラワーから
可憐な高山植物まで

花々に魅せられて

企画=木村聡/江頭啓太郎/篠原陽子 文=大友園子
  • イメージ イメージ 西オーストラリア州南西部に広がるワイルドフラワーの花畑(©Kyoko Oakley)

あるがままに自生するワイルドフラワー、短い夏を謳歌するように咲く高山植物。どちらも個性的で生命力にあふれています。オーストラリア、南アフリカ、そしてモンゴル……世界各地の草原で可憐に揺れる花々が大地を彩ります。その地ならではの自然景観や季節の行事、滞在なども楽しみながら、生きるべき場所で命をつなぎ、花を咲かせてきた植物たちの奇跡の光景を、ゆったりとめぐる旅に出かけませんか。

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2つのワイルドフラワー街道を満喫

西オーストラリアの花々に出あう旅

パースから行く花街道で可憐な野の花をたっぷりと

日本では秋の気配を感じる頃、南半球のオーストラリアは春を迎え、花々が咲き出します。広大な国土を持つオーストラリアは地域によって気候や風土が異なるため、植物も多種多様。なかでも西オーストラリア州はワイルドフラワーの宝庫です。特に今回訪れる南西部では、約7,000種が自生しています。

西オーストラリアに広がるワイルドフラワー街道は1つではありません。ゆったりと花観賞をするため、1日の移動時間を抑えつつ見どころを訪れ、花々との出あいを楽しみながら2つの街道をめぐります。大きな道路を外れて、間道に入れば一面色とりどりのワイルドフラワーの花畑が広がっています。花々をたっぷり楽しみたい方には必見のルートです。

今回は7日間にわたってワイルドフラワーの専門家でもあるオークリー今日子さんに同行していただき、お話を伺いながら楽しみます。花々が見頃を迎える場所を訪れ、花の名前や特徴などの説明を聞くこともできます。花好きの方にとっては、時間があっという間に過ぎてゆく充実した旅となるでしょう。

  • イメージ イメージ リースの形を自然につくるリース・レシュノ―ルティア(©Kyoko Oakley)
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ダイナミックな自然景観や“世界一幸せな動物”と出あう

オーストラリアならではの楽しみもあります。花めぐりの途中、ダイナミックな自然景観を眺めにカルバリー国立公園にも立ち寄ります。2020年にオープンした新アトラクション「スカイウォーク」からは、約80キロにわたる峡谷のダイナミックな風景を一望にできます。

パース滞在中には、インド洋に浮かぶロットネスト島も訪れます。ここは白砂のビーチに囲まれた小さな島で“世界一幸せな動物”ともいわれるクォッカでも知られています。口角が上がっているクォッカはいつも笑っているように見える愛らしい動物。その表情に思わずこちらも笑顔になります。

  • イメージ 大峡谷に張り出すように設置されたカルバリーのスカイウォーク
  • イメージ いつも笑っているように見えるクォッカ。好奇心旺盛な人気者
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花ガイド・オークリー今日子さんに聞く

西オーストラリア
ワイルドフラワーの魅力

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西オーストラリア州全般のガイドを務めるオークリー今日子さん。ワイルドフラワーが大地を彩る季節には、花ガイドとして多くの日本人旅行者を案内しています。花について学ぶうちに「魅力にひき込まれた」というオークリーさんにお話を伺いました。

  • イメージ イメージ 色とりどりのワイルドフラワーが西オーストラリアの春を彩る(©Kyoko Oakley)
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咲きたい所に咲く ワイルドフラワーの魅力

ワイルドフラワーは、人の手によってつくられた整然とした花畑とは違って、さまざまな種類の花が不規則に混ざって咲きます。大自然のなかで環境に合わせて少しずつ変化しながら「咲きたい所に咲いている」ことがワイルドフラワーの魅力でもあります。

植物の生態系が豊かな西オーストラリア州では、ワイルドフラワーの約60パーセントが固有種です。キク科やラン科などの特徴ある多種多様な花々を気軽に見ることができ、花の時期になればバスを降りてすぐに一面の花畑をご覧いただけます。

たとえば「ワトル」は日本では「ミモザ」と呼ばれるアカシア属の黄色い花。西オーストラリア州西海岸では、葉に特徴のある「カットリーフ・ワトル」がよく見られます。固有種のランも多く自生しています。パースの北では「ノーザン・クイーン・オブ・シバ」という珍しいランが、むらさき色の可憐な花を咲かせます。

  • イメージ イメージ 西オーストラリア南西部の西海岸でよく見られるカットリーフ・ワトル(©Kyoko Oakley)
  • イメージ イメージ 可憐な花を咲かせるラン科のノーザン・クイーン・オブ・シバ(©Kyoko Oakley)
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鳥による受粉で子孫を残す 進化する花々たち

お客さまから「お好きな花は何ですか」というご質問を受けることがあります。それぞれに個性があり、どの花が好きというより、自然のなかで頑張って咲いている姿に愛おしさを感じます。

ワイルドフラワーは、栄養分の少ない土壌であっても、子孫を残すために、工夫して生きていく方法を見つけてきました。植物は昆虫に受粉させ子孫を残すものがほとんど。しかし、西オーストラリアでは鳥に受粉させる植物も少なくありません。鳥による受粉の機会を増やすために自ら色や形を変え進化してきた花もあります。

その1つがカンガルーポー。鳥がとまりやすい形をしており、特にその1種であるマングレス・カンガルーポーは鮮やかな赤と緑で鳥をひきつけます。西オーストラリア州の州花で、この地域にしか自生していません。昔は動物に食べられてばかりだった植物も、進化の過程で動物たちを利用して子孫を残すようになりました。

  • イメージ イメージ マングレス・カンガルーポー(別名・レッド&グリーンカンガルーポー)(©Kyoko Oakley)
  • イメージ イメージ 鳥に好まれるバンクシア(©Kyoko Oakley)

一方、自然発生する火事を利用して子孫を残す植物もあります。たとえば、キャッツポーは山火事のあとにぐんと成長し、グラスツリーは、火事が起こると花を咲かせ種をつくります。

  • イメージ 山火事のあとによく生育するキャッツポー
  • イメージ 山火事のあとに花を咲かせるグラスツリー
    (©Kyoko Oakley)
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西オーストラリア州に固有種の植物が多い理由

パースを中心にした西オーストラリア州南西部に固有種の植物が多いのは、そこがインド洋と内陸の砂漠地帯に囲まれた孤立した地域だからです。オーストラリア大陸やアフリカ大陸は、数億年前に南半球に存在していたゴンドワナ大陸の一部でした。いずれの地にもその時代から、進化しながら命をつないできた植物が自生しています。

ワイルドフラワーの魅力は尽きません。見頃を迎えた花を探しながらめぐるのは、ワイルドフラワーの旅の醍醐味です。ぜひ、西オーストラリア南西部の多彩な花々を楽しみにお出かけください。

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