[ 海外特集 ]
錦秋の北半球と、春の花開く南半球
地球が織り成す色彩のなかへ
企画=木村聡/飯尾賢一/安部川帆南/江頭啓太郎
文=吉田千尋
澄み切った空気のなかで、燃え立つように染まりゆく木々。北半球が秋色をまとう頃、南半球は穏やかな日射しに包まれ、花々が春を告げます。まったく反対の季節が同時に訪れている、地球という壮大な舞台。それぞれの彩りを最適な時期に謳歌できるのが、海外を旅する醍醐味です。艶めく錦秋と、花々が香る春から夏。あなたはどちらの季節へ出かけますか?
秋が深まる北半球で、
艶めく紅葉の森や湖を味わう
道の向こうから近付いてくる、真っ赤に燃えるような木々。カエデが群生する「メープル街道」に入ると、思わず言葉を失うほどに右から左から鮮やかな彩りがあふれます。その風景に心を酔わせながら向かう先は、世界最大級の紅葉名所であるカナダ東部のローレンシャン高原です。
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メープルの森が続く広大なローレンシャン高原
いくつもの湖が点在する丘陵地帯は、紅色や黄金色で埋め尽くされています。煌めく水辺と紅葉の彩り、連なる山々のグラデーションなど、さまざまな表情を楽しめるのも魅力。広大な高原らしい多彩な景色を味わっていただけるよう、こちらでは3泊4日というゆとりある滞在としました。
たとえば、ゴンドラに乗って空中散歩。眼下にどこまでも広がる紅色の絨毯と、山頂からの眺めは圧巻です。かわいらしい家々と紅葉が絵になるモン・トランブラン村の散策も心躍るひと時。モンロー湖など見どころが多いモン・トランブラン国立公園では、その時に紅葉がピークを迎える場所を選んで訪れるのも、ゆとりある旅ならではのお楽しみです。
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カナダを象徴する絶景。見どころが続くメープル街道をドライブ
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カラフルな木造家屋がかわいらしい小さな村の散策も
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秋景色のなかで、かわいらしい野生動物に出あえることも
高原の彩りを満喫したあとは、メープル街道を駆け抜ける列車に乗り、赤く染まるトンネルを通って歴史都市ケベックへ。風格に満ちあふれた城館風ホテル「ル・シャトー・フロントナック」に2連泊する、贅沢な時間が待っています。セントローレンス河と紅葉を見下ろす眺望は、風情たっぷり。世界遺産の城壁内を気軽に散策できるのも、宿泊するからこそ味わえる体験です。
実は紅葉の名所でもある、ナイアガラの滝もめぐります。大地を引き裂くように流れ落ちる滝と、その周りを抱く艶やかな木々の彩りという独特の美しさを放つ光景は、深く心に刻まれることでしょう。展望台からの雄大な眺めだけでなく、滝つぼに近付く遊覧船でその水量を体感できます。
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ケベックの高台に佇む城館風ホテル「ル・シャトー・フロントナック」
カナダ東部に加え、西部のロッキー山脈まで足を延ばすコースもご用意しました。こちらではダイナミックな山岳美とともに、東部で見られるカエデの紅葉とは異なる、シラカバやカラマツの黄金色をお楽しみいただけます。ロッキーでは3泊し、ミルキーブルーの氷河湖、黄葉が染めあげる森などを散策。この時期だけの絶景が続くカナダでの時間に、さらなる豊かな彩りを添えてくれる旅です。
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カナダ西部も楽しむ旅では壮大なロッキー山脈が迎えてくれる
ヨーロッパ屈指といわれる紅葉を訪ねて、クロアチアとスロベニアへ。クロアチアの首都ザグレブの南に位置するプリトヴィッツェ湖群国立公園は、鮮やかに色付く木々とヒスイのような水面の共演が見られる地です。約300平方キロの広大な敷地では、無数の滝が大小さまざまな湖をつなぎます。
変化に富んだ景色を楽しめる公園内は大きく上下に分けられており、通常訪れることが多いのは標高の低い下湖群。カルスト大地を成す石灰岩に浸透し、ろ過された水は驚くほどきれいで、魚の泳ぐ姿や池の底まで見えるほどに澄み切っています。湖畔に続く遊歩道を歩き、清涼な空気と深い秋色に包まれるひと時を。たっぷり終日を確保しているので、一般的なツアーでは訪れる時間のとれない上湖群まで出かけ、ベールのように流れ落ちる幻想的な滝などひと味違う水の芸術を満喫できます。
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無数の滝や湖が見られるプリトヴィッツェ湖群国立公園
スロベニアで待っているのは、幻想的なブレッド湖です。遥か彼方に見える冠雪のアルプス、エメラルドグリーンの湖、そして紅葉という、まさにこの場所ならではの彩りに出あえます。
さまざまな秋の恵みも、旬を迎える頃です。アドリア海に面したイストラ半島では、特産のトリュフ料理を名店で味わうランチタイムを。隠れ家リゾートのフヴァル島ではワイナリーを訪ね、紀元前から変わらない希少種のぶどうでつくられる芳醇なワインをいただきます。彩りも美味も魅力的な東欧の秋を、ぜひご堪能ください。
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ブレッド湖では手こぎボートで小島を訪ねる
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イストラ半島では、旬を迎えるトリュフを名店で堪能する
国土の約七割を森と湖が占めるフィンランド。色付く大自然とともに、神秘のオーロラ観賞や、自然と共存する文化のなかで育まれた北欧デザインにふれる旅をお届けします。
ヘルシンキにほど近いヌークシオ国立公園は、首都圏にありながら峡谷や湖を抱く原生林が残された自然の宝庫です。短い秋を謳歌するようにシラカバが色付き、黄金に輝きながら水面に映る光景には、心癒されることでしょう。
北極圏に位置するラップランド地方では、客室にいながらオーロラを見ることのできるガラスイグルーに宿泊します。心地良い空間から幻想的な光のカーテンを眺めるひと時は、まるで別世界を漂っているかのよう。外に出ても気温は零度前後なので、それほど厳しい寒さもなく楽しめます。トナカイとともに暮らす先住民族サーミの文化にふれるのも、この地方ならではの貴重な体験です。
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オレンジや黄金に艶めく森と湖が美しい、ヌークシオ国立公園
洗練された北欧デザインのルーツに迫るのは、ヘルシンキとその郊外。「マリメッコ」や、小さな村の工房からはじまった「イッタラ」のガラス工場などを見学すれば、多くの人に愛されるブランドの奥深いストーリーに感銘を受けることでしょう。
大自然、オーロラ、デザインというフィンランドらしさを一度に味わえる旅をお楽しみください。
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夜空に揺らめく神秘のオーロラを、ガラスイグルーの客室から
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「マリメッコ」のおしゃれな社員食堂でのランチタイム
地球が織り成す色彩のなかへ
春から夏へ向かう南半球で
可憐に咲く花々を愛でる
北半球が紅葉に染まる頃、待ちわびた春を迎える南半球。最初にご紹介するのは、日本ではあまり見られないジャカランダの花々に魅了される南アフリカの旅です。
ジャカランダの和名は「紫雲木(しうんぼく)」。その名のとおり、漂う雲のようにふんわりと藤色をまとった木々の姿はどこまでも幻想的。柔らかなその色に包まれる街プレトリアは、別名「ジャカランダシティ」とも呼ばれる名所です。開花時期が異なるヨハネスブルグとあわせて3泊することで、花の盛りを逃さずに観賞。高台からの眺望やお花見ランチ、日本の桜並木のように花舞うトンネルのドライブなど、さまざまな楽しみ方で味わいます。
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沿道を覆い尽くすように咲く藤色の花
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約7万本ものジャカランダが植えられているプレトリアの街
かつてヨーロッパの貴族が休暇で訪れる地であった南アフリカでは、優雅な佇まいと広大な敷地を持つ英国式邸宅ホテルが多く見られます。この旅では、敷地内にジャカランダが咲く「キエビッツ・クルーン」など、クラシックながらも洗練された邸宅ホテルに計4泊するのも大きな楽しみです。
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限られた場所でしか見られない、真っ白なジャカランダも
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庭園レストランでお花見をしながらのランチタイム
南アフリカで外すことのできない見どころもしっかりとめぐります。ゾウの群れをはじめ、さまざまな野生動物に出あえるサファリ体験のほか、ケープ半島まで足を延ばして“ペンギンの楽園”ボルダーズ・ビーチを訪ねたり、喜望峰から大海原を見渡して大航海時代に思いを馳せるひと時も。ビクトリアの滝では、轟音とともに大地の裂け目へと流れ落ちていく景観に圧倒されることでしょう。
ジャカランダの花、野生動物や大自然。10月から11月に訪れる南アフリカの春を、存分に満喫できる旅です。
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世界三大瀑布の大迫力。轟音とともに流れ落ちるビクトリアの滝
紺碧の海と、純白のビーチ。南国の楽園ニューカレドニアの彩りが、より一層華やかになる時期があります。11月から2月、真っ赤なフランボワイヤンが花開く季節です。花の名は、フランス語で燃え立つことを意味しています。和名も、「火焔樹」。まさに誰もが炎をイメージする深紅の花です。
花々がいたるところで咲きはじめると、街の景色は一変。海とビーチの色と相まって、鮮やかなトリコロールカラーで彩られます。季節を告げる花々に迎えられ、フランス領らしい洗練された街並みと、ポリネシア文化が共存するリゾートを楽しみましょう。
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フランス領らしい街並みを華やかに彩るフランボワイヤン
公共交通機関が少なく、個人では移動しにくいニューカレドニアですが、この旅では日本人ガイド付きで効率良く、見どころが点在する島をめぐります。アメデ島やブーライユでは、底がガラスになっているグラスボトムボートで、カラフルな熱帯魚が見られるサンゴ礁の海へ。ダンスショーやパレオ・ショーなど、ポリネシアの伝統文化にふれるひと時も。夕日や夜景が美しい水上レストランでのディナーなどで、獲れたてのシーフードを味わえるのも魅力です。
時差はわずか2時間、お体の負担少なく訪れることのできるニューカレドニア。フランボワイヤンが咲き、心まで華やぐ彩りのなかで、南国リゾートの旅を満喫してはいかがでしょう。
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アメデ島ではグラスボトムボートなどで1日を楽しむ
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力強く華やかなダンスショーで、ポリネシア文化を体験
南半球で緯度が高いニュージーランドでは、12月頃に初夏を迎えます。はるか昔に大陸から離れ、独自の進化を遂げた動植物が生きるこの地で、大自然を彩る花々を探しに出かけましょう。
ニュージーランド最高峰のマウントクックの山麓では、マウントクック国立公園内唯一のホテルである「ザ・ハーミテージ・ホテル」に2連泊します。観光客が帰ってからはじまる静寂の時間は、宿泊客だけの特権。山肌が夕日に染まりゆくドラマチックな眺めは格別です。散策は起伏の少ないコースをのんびりと。マウントクックリリーなどの高山植物や、蜂蜜で知られるマヌカの花が見られます。
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山麓で清楚な美しさを放つマウントクックリリー
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清々しいテカポ湖畔に咲くルピナスの彩りも印象的
旅の後半では、秘境ミルフォード・サウンドへ。通常はクイーンズタウンから長距離のバス移動で訪れるツアーが多いところ、この旅ではミルフォード・サウンドの玄関口テアナウに2連泊するゆとりのある日程です。フィヨルドを遊覧船でめぐれば、自然の造形美に思わず息を呑むことでしょう。
とびきりの絶景のなかで、可憐に生きる花々を慈しむ。ここではそんな旅が待っています。
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宿泊するからこそ味わえる夕日に染まるマウントクック
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迫りくるフィヨルドのなかを遊覧船でめぐるミルフォード・サウンド