人類発祥の地といわれるアフリカ。この地には、ここでしか味わえない感動があります。たとえば、ジャカランダの花が街中を薄紫に彩る光景、豪華列車「ブルートレイン」で堪能する壮大な景観と「ゆっくり」という贅沢、そして私たちに自然の豊かさや尊さを教えてくれる野生動物たち。この秋、スケールの大きな感動を味わいに、いざ南部アフリカへ。
アフリカのなかで、世界有数の「花の楽園」と称されるのが南アフリカ。早春に野生の花が一斉にほころぶナマクワランドなど、花の名所は各地にありますが、南半球が春真っ盛りとなる10〜11月、見頃を迎えるのがジャカランダです。
ホウオウボク(鳳凰木)、カエンボク(火焔木)と並び、世界三大花木の一つとされるこの木の和名はシウンボク(紫雲木)。春、薄紫色の花を雲のようにまとう様子はまさにその名のとおりです。南部アフリカへの旅では、約7万本ものジャカランダが花を咲かせる首都プレトリアを訪れます。
ガーベラ、プロテアなど、南アフリカ原産の花は日本でも人気ですが、実は、ジャカランダはこの国が原産ではありません。1888年、南米から持ち込まれた2本の苗木が最初で、現在、プレトリアで美しい花を咲かせるジャカランダの多くは、この2本の親木から派生したものだとか。その後、種を輸入してプレトリアに提供した実業家のジェームズ・D・クラークさんによって街中にジャカランダの木が広がると、後に「ジャカランダ・ジム」と呼ばれた市職員、フランク・ウォルター・ジェイムソンさんの尽力で、プレトリアは「ジャカランダ・シティ」として知られるようになりました。
南アフリカではかつて、外来種であるジャカランダが生態系に与える影響への懸念から、成木の一部を排除する動きがありました。しかし、地元住民の反対などでその計画は中止されます。もはやジャカランダはプレトリアの文化の一部といえるのかもしれません。
プレトリアでは、高台に建つユニオンビルから街を一望したり、ジャカランダの並木が続くハーバート・ベーカー通りやガバメント通りを訪れたりと、さまざまな場所からジャカランダの美しい薄紫を堪能いただきます。1本でも辺りを華やかにするジャカランダが、道の両側に連なる光景を想像してみてください。この地を訪れて実際の光景を目にすれば、「ジャカランダ・シティ」の愛称も納得でしょう。
花の盛りの時期は天候によって前後しますが、今回の旅では、開花時期の異なるヨハネスブルグにも訪れることで、観賞の機会を増やしています。郊外では、ジャカランダが街路を覆うように並ぶ道をドライブ。花のトンネルをくぐっているかのような体験をお楽しみください。
Surrender to the Luxury of Slow(ゆっくりという贅沢に浸る)。まさに、このキャッチフレーズどおりの優雅さで世界の旅行者を魅了しているのが、南アフリカの豪華列車「ブルートレイン」です。
「青い宝」とも呼ばれるこの列車のはじまりは、開拓時代に遡ります。当時、南アフリカでは、ケープタウンからカイロまで、アフリカ大陸を横断する鉄道を建設するという壮大な計画が進んでいました。残念ながら、結果的には線路がカイロまで延びることはありませんでしたが、南アフリカで建設された線路は、19世紀のゴールドラッシュ、続くダイヤモンドラッシュで集まった多くの人々のための鉄道として活用されます。
やがて20世紀に入ると、富裕層の間で鉄道旅行が人気となり、ロイヤルブルーの車体の豪華列車が登場。第二次世界大戦中こそ運休しましたが、1946年に再開すると、この美しい青色の列車は、「ブルートレイン」として、鉄道ファンだけでなく、世界中の人々の憧れの存在となりました。ネルソン・マンデラ元南アフリカ大統領をはじめ、この鉄道旅を楽しんだ著名人は枚挙にいとまがありません。
今回、皆さまにご乗車いただく地は、ジャカランダの花咲くプレトリアです。ここから大西洋側の街、ケープタウンまで、航空機なら約2時間の距離を、壮大な南部アフリカの光景を眺めながら、2泊3日をかけてゆっくりと移動します。これぞ、まさに「ゆっくり」という贅沢です。
豪華列車の旅は、出発地のプレトリアからはじまります。軽食とドリンクを楽しみながら、列車のチェックインを済ませ、出発の時間をゆったりと待ちましょう。
出発時刻になると、担当のバトラーが客室までご案内。お泊まりいただくのは、デラックススイートです。大きな車窓のある重厚な内装の客室は、窓際のソファーがベッドになる仕様で、昼間はソファー、夜はツインベッドとして使えるようバトラーが手際良くアレンジをしてくれます。列車の客室ながら手狭な印象はなく、昼も夜も快適にお過ごしいただけるでしょう。化粧室はもちろん、シャワー室も完備されています。
バトラーのサービスは24時間対応。高級ホテル並みの、その手厚く、きめ細かいおもてなしは、ブルートレインならではのものといってよいでしょう。
朝、昼、晩の食事は、高級感あふれる内装のダイニングカーでいただきます。夕食時はドレスコードが指定されていて、男性はジャケットとネクタイ、女性はエレガントな服装が目安です。せっかくの豪華列車の晩餐ですので、ここはちょっぴりおしゃれをしてはいかがでしょうか。料理には、スプリングボックの薫製やカルー地方産のラム肉など、その時々に合わせ、新鮮かつ南アフリカならではの地元食材も取り入れられています。南アフリカ産のワインとともに優雅な時間をお過ごしください。必ずや思い出に残る時間となるはずです。
夕食後は、上品な調度品で飾られたラウンジ車両「クラブカー」でグラスを傾けましょう。ブルートレインでは、一部の銘柄を除き、ドリンク類も基本的に代金にすべて含まれています。昼間には、車窓を流れる壮大なアフリカの風景とともに、英国風アフタヌーンティーをお楽しみいただくこともできます。