その⑪ 添乗中のハプニングから心温まるエピソードまで
ピレネーの山岳景勝と
美食の地バスク 12日間
2019年6月催行
 
森脇 潤 もりわき じゅん 添乗員 文=小野瀬宏子
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添乗員の頼みの綱は天気予報Webカメラとフランクさん!

強風予報で展望台へのロープウェーが運航中止に

今回のツアーは、フランスとスペイン両国にまたがるピレネー山脈とバスク地方を訪れます。前半が自然、後半が美食をテーマにした日程でした。旅の滑り出しは順調で、3日目に訪れたアイギス・トルテス国立公園では色鮮やかな花々を愛でながら、雄大な景色が広がる高原を散策。思わず深呼吸したくなる清々しい空気にお客さまの足取りも軽く、自然の美しさを満喫していただきました。

4日目はスペイン・アルティエスからフランス・ルルドまでバスで移動。到着後に昼食を取っていたその時、現地の手配会社から電話があり…… 翌日に行く予定のピック・ドゥ・ミディ山頂展望台へのロープウェーが強風予報により運行中止という連絡でした。ツアー前半の観光のハイライトで、以前、私が訪れた時にあまりのすばらしさに感動した場所だっただけに、この知らせには困惑。しかし、このツアーはピレネーの観光拠点となる街、リュズ・サン・ソヴールに2連泊します。日程変更すれば、まだ望みはある! すぐに気持ちを切り替えて、天気の情報収集に取り掛かりました。

  • イメージ イメージ 標高約2,800メートルを超えるピック・ドゥ・ミディ山頂展望台

翌日は、展望台付近は悪天候ですが、ガヴァルニー圏谷は午後から天気が良くなることを確認。さらに展望台の山頂に設置されたWebカメラもチェックしました。また、今までの添乗で何度もお世話になった経験豊富な現地ガイドのフランクさんにも連絡し検討した結果、ピック・ドゥ・ミディ山頂展望台は6日目にずらすことにしました。

それでも、山の天候は変わりやすいもの。万一に備え、この日はルルド郊外のピック・ドゥ・ジュール展望台の観光を追加することに。この時点でお客さまへ翌日の天候や日程変更の可能性についてご案内し、ご承諾いただきました。急きょ訪れることになった展望台でしたが、標高約900メートルからの眺めは眼下に新緑、ピレネーの山々の頂上は雪、その上に澄み渡った青空。この季節ならではの景色を見ていただけて良かった! と心から思いました。

  • イメージ ガヴァルニー圏谷では、これ以上ないほどの晴天に恵まれました!
  • イメージ ツアー後半、バスク地方のオーベルジュにて森をイメージしたアミューズなど美食を堪能
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念入りに山の天気を確認し続けて……

5日目の午前中は自由行動に変更。ご希望のお客さまはリュズ・サン・ソヴールの街歩きへご案内し、教会などをのんびりとめぐりました。観光中もスマートフォンで天気予報を随時確認し、午後はこのツアーの目玉の1つ、ガヴァルニー圏谷へ。予報どおりの快晴です。ヴィクトル・ユーゴーが「自然の大劇場」と表現したほどの垂直に立つ巨大な岩の壁はまさに壮観。お客さまも「本当に最高!」と歓声を上げていました。

そして翌日は、いよいよピック・ドゥ・ミディ山頂展望台へ向かいます。午前5時前に起床し、すぐに天気予報とWebカメラをチェック。山頂の天候が良いことを確認できたため、思わずガッツポーズ。この日のガイドのフランクさんからも「今日はOKだね」と言ってもらえ、その言葉をお守りにホテルを出発しました。展望台へのロープウェーは麓から中間駅、中間駅から山頂駅へと2本乗ります。乗り継ぐ時に山の上部が見えたので、これなら展望台も大丈夫! と思いましたが、頂上へ着いた瞬間に雲がかかってしまう可能性も。最後まで安心しきれず“天気の壁”を1つひとつクリアしていくような心境でした。山頂駅に着くと、快晴で全方向にピレネーの勇壮な景色が広がっていました。集合場所などのご案内が終わらないうちに写真を撮りに行こうとされるお客さまもいらっしゃったほど(笑)。皆さまに雄大な山岳美を満喫していただけました。

今回はピレネー2連泊という、ゆとりある行程が吉と出ましたが、自然を相手にしたツアーでは手前みそですが、添乗員の情報収集力と臨機応変な対応が肝心だということをつくづく実感した旅でした。