旅の醍醐味の1つは、その時その場所でしか出あうことのできない一瞬の煌きにあります。日の出とともに全貌を現す大渓谷、黄金の朝陽に照らされた石造りの家々、陽光を浴びて深みを増す紺碧の海、落陽とともに漆黒に包まれる大地……。そんな美しい瞬間の体験談を交えながら、春夏出発の海外ツアーのなかから、選りすぐりの6コースを企画担当者/添乗員自らご紹介します。
フランス南部に位置するカルカッソンヌは、ヨーロッパ最大規模の城郭を擁する美しい街です。(長谷川 賢)
全長約3キロの二重城壁に囲まれた旧市街には、壁に沿って52の塔がそびえ、街を眺望するコムタル城、ステンドグラスの美しいサン・ナゼール・バジリカ聖堂など多くの見どころがあります。「カルカッソンヌを見ずして死ぬことなかれ」。そんな言葉が語り継がれるほど、訪れる価値のある街として知られており、1997年には世界遺産にも登録されました。
今夏のツアーでは、フランス南西部の素朴な村々をめぐった後、最後にこの城郭都市を訪れ、旧市街に建つ名門ホテル「オテル・ド・ラ・シテ」に連泊します。
日中多くの観光客が訪れる旧市街も、朝はひっそり。少し早起きして静寂に包まれた石畳の小道を歩けば、まさに中世の時代に迷い込んだような気分になります。この厳かな雰囲気こそ、この街本来の姿。そして、それはこの場所にゆっくり滞在するからこそ味わえるものです。
陽が落ちたあとには、街はもう1つ別の表情を見せてくれます。城壁を望む河の辺りまで散歩をすると、そこから見えるのは見事にライトアップされた城郭都市の偉容。暗闇に浮かび上がる幻想的な光景は、日中とはまったく違う印象を与えてくれることでしょう。
ホテルの建物は、かつて隣接する教会の司教が寝泊まりしていた司教館を改装した歴史的建造物です。ツタに覆われたネオゴシック様式の外観に、クラシックな内装。敷地内には緑に囲まれた静かな中庭もあり、ゆったり寛げる場所に事欠きません。ツアー最後の夜は、ホテル内のレストランでフランス料理を心ゆくまでご堪能ください。
クロアチアは、内陸と海沿い双方にそれぞれ独特の景観を有する美しい国です。なかでも「アドリア海の真珠」と謳われているのが、城塞都市ドブロヴニクです。(森脇 潤)
数あるヨーロッパの城塞都市のなかでドブロヴニクが異色なのは、海に突き出した形で要塞化されていること。大国に囲まれながら約500年の間、独立を守ってきたのはこの立地によるところが大きいでしょう。そしてこの特異な立地は現在、その美しい景観で旅行者を魅了しています。城壁からは紺碧のアドリア海が一望のもとに。旧市街は、1周約2キロの城壁に囲まれた小さなエリアですが、大聖堂、聖フランシスコ会修道院など見どころが満載です。
ツアーが催行される初夏は、開放的な雰囲気のなかで旅を楽しめる格好の季節。ツアーでは、この街に3連泊し、旧市街の見どころをじっくり見学するだけでなく、この城塞都市の全貌を望むことができるスルジ山展望台を訪れたり、アドリア海を船で遊覧したりと、さまざまな角度から街を楽しみます。
帰国前日の午後には自由時間も設けました。旧市街の路地裏をめぐってカフェに立ち寄るなど楽しみ方はいろいろですが、何よりおすすめしたいのは城壁の散策です。山側にはオレンジ色の屋根の連なる旧市街、反対側には紺碧のアドリア海。潮風に吹かれながらこの景観を眺める気持ち良さは格別です。アイスクリームやジュースでひと息つくのも良いでしょう。ご希望の方は、添乗員が眺望ポイントをご案内します。ぜひ、時間を気にすることなくゆったりと散策をお楽しみください。
今夏のツアーでは、アドリア海屈指のリゾート、フヴァル島も訪れます。片道約1時間のクルーズで訪れるこの島にも城塞があり、ここから見るクロアチアの海岸線も必見です。
かわいらしい民族衣装をまとった人々に穏やかな山々。「チロル」の地名から連想される牧歌的な光景をまるごと楽しめるのが、インスブルック近郊テルフスにある「インターアルペンホテル チロル」です。(坂口 智一)
ヨーロッパアルプスの端にあたるチロルの山々は、イタリア、スイス、フランスに比べ、高さが低めで稜線も緩やか。その穏やかな景観は、まさに絵本から抜け出たようなやさしい光景です。
今夏のオーストリアツアーで、最後に滞在する「インターアルペンホテル チロル」では、そんな風景をいながらにして堪能できます。チロルアルプスの中心、標高約1,300メートルのゼーフェルト高原に建つこのホテルは、滞在すること自体が旅の目的となるといっても良い場所です。木を基調としたモダンな内装が施された客室は、40平方メートル以上の広々としたつくり。館内のあちらこちらに農民家具と呼ばれる素朴な家具や調度品が配され、独特の温かみで包んでくれます。
そして何よりすばらしいのが、すべての客室にあるバルコニーから周囲の山々を眺望できること。朝、目覚めれば、窓の外に広がるのは、爽やかな山の景観です。初夏の清々しい空気とともに、チロルの眺望を満喫してください。心のこもったサービスや、ホテルスタッフがまとうチロル地方のかわいらしい民族衣装も、旅の楽しさを増してくれるでしょう。
ハプスブルク家の栄華とともに、オーストリアの自然を辿るこのツアーでは、テルフスにウィーン、ザルツブルクを加えた3カ所を拠点にじっくり観光地をめぐります。「ヨーロッパで最も美しい花の村」に選ばれたアルプバッハ村など、チロルの山並みに佇む小さな村も訪問。ザルツブルクでは街の中心部に滞在するため、朝夕の散策も楽しい時間となることでしょう。
地平線まで広がる大平原に、ポツンとある一枚岩。オーストラリアを訪れる人の多くが旅の目的とする場所の1つが、このエアーズロックではないでしょうか。(篠原 陽子)
現地を訪れると、あの丸みを帯びた造形物が、山ではなく、1つの岩であることにまず驚かされます。この一枚岩の魅力は、時間とともに変わる表情の豊かさにもあります。朝陽を浴びてピンク色に染まったかと思えば、日中は鮮やかな青空を背景に、くっきりとその姿を浮かび上がらせ、陽が落ちる頃には、刻々と岩肌の色を変えていきます。そして、漆黒の闇に包まれたその上空には満天の星。そこには、日がな1日見つめていても飽きない、圧倒的な存在感があります。
ツアーでは、エアーズロック近くのホテルに連泊し、オーストラリア先住民の聖地であるウェーブケーブや、彼らの貴重な水場であったカンジュ渓谷を見学するとともに、こうした岩自体の表情の変化も心ゆくまで味わっていただきます。夕刻から夜にかけて、エアーズロックを望む屋外でシャンパンのグラスを傾け、民族音楽とともに食事を楽しむ機会もあります。夜は南半球でしか見られない星空を堪能ください。
また、もう1つの人気スポット、ブルーマウンテンズ国立公園の近郊にも連泊し、ロープウェー、トロッコ列車などさまざまな方法でこの豊かな自然を楽しみます。谷底の遊歩道から見る景観もまたひと味違った趣。「青い山」という地名は、蒸発したユーカリの木々の油分が日光に反射し、山全体が青く霞んで見えることから付けられたものだとか。シドニーからの日帰り観光で訪れるツアーも多いなか、この地にあえて連泊することで、世界遺産でもあるこれらの山並みや樹海、渓谷の美しさをゆっくりとご満喫ください。
広大なアメリカ大陸のなかでも、西部の景観は、とにかく雄大かつ独特。グランドキャニオン、アンテロープキャニオン、モニュメントバレーなど、地球上のここでしか見られないような景観があちらこちらに広がっています。(内島 雄貴)
これら壮大な景観を有する国立公園や国定公園を含む半径約230キロのエリアを「グランドサークル」と呼びますが、今夏のアメリカツアーでは、この地の観光ルートに、空から楽しむ独自の行程を組み込みました。
この遊覧飛行に使用するのは、9人乗り程度の小型飛行機。最初の飛行の出発点は、グランドサークルの中心にある巨大な人造湖、レイクパウエルです。映画『猿の惑星』のロケ地であることからもわかるとおり、辺りに広がるのは、まるで地球以外の星であるかのような特異な光景。深い谷底を流れるコロラド河を堰き止めてできたこの湖は、「水をたたえたグランドキャニオン」とも呼ばれます。
レイクパウエルからのフライトの着地点は、西部劇の舞台としてもお馴染みのモニュメントバレーです。ここでは、西部劇の巨匠がこよなく愛した撮影地、ジョン・フォード・ポイントなどを地上からも見学。次の飛行では、グランドキャニオンまでの絶景を楽しみます。
遊覧飛行は、上空という特別な場所から眼下の景観を楽しむ手段であるだけでなく、陸路なら数時間かかる移動を大幅に短縮し、広大なエリアを効率的にめぐる移動手段でもあります。こうして生まれた行程のゆとりは、また別の楽しみをもたらしてくれます。グランドキャニオンで待っているのは、連泊するからこそ出あえる景観。早朝、闇に包まれていた渓谷が日の出とともに次第に全貌を表す様は圧巻です。夕刻には、今度は渓谷が徐々に深い色に包まれていく光景をご堪能ください。
東西文明の十字路。トルコという国を表す時によく使われる表現ですが、このことをより実感できる街がイスタンブールです。(内島 雄貴)
イスタンブールは、マルマラ海と黒海を結ぶボスポラス海峡によってヨーロッパ側とアジア側に二分されています。ローマ、ビザンチン、オスマンという3つの帝国の首都として栄えたこの街には、ブルーモスク、アヤソフィア、トプカプ宮殿、グランドバザールなど見応えのある観光名所が数多くありますが、そのほとんどを擁するのがヨーロッパ側。そのため一般のツアーでは、アジア側を訪れる機会はあまりありません。
しかし、アジア側も、訪れてみると非常に興味深いエリアです。大都市の洗練された空気をまとうヨーロッパ側に対して、どことなくのんびりとした雰囲気のアジア側。河ほどの幅しかない海峡1つ隔てただけで、ここまで雰囲気が変わることに驚きます。アジア側からヨーロッパ側の職場に通う人も多く、朝夕、通勤客を乗せたフェリーが海峡の両岸を往復するのが日常の光景となっています。
春のトルコツアーでは、青く輝くボスポラス海峡をゆったりクルーズした後、アジア側を訪れます。訪ねる街は木造の家々が並ぶユスキュダル。往年の人気歌手・江利チエミさんが、この街に伝わる民謡をもとにした「ウスクダラ」という曲を歌っていたので、もしかしたら耳なじみのある人もいるかもしれません。
ツアーでは、エフェソス遺跡、カッパドキア、パムッカレなど、広大な国土に点在する観光スポットを長距離バスの代わりに飛行機で効率良くめぐります。アジア側の観光ができるのも、イスタンブールに3連泊するこのツアーならでは。ゆとりの日程で、この魅力満載の国を存分に味わってください。