異国にいる実感は、文化の差異があるほど強烈なものになります。その実感こそ海外旅行の醍醐味! そう考える人にとって理想の旅先の1つといえるのが、イスラム世界かもしれません。
たとえば、着陸直前の機内から見る眼下の街。目に飛び込んでくるのは、モスクのドームとミナレット(尖塔)です。異国の地で迎えるはじめての朝には、夜の明け切らぬ街の静寂を厳かに破るアザーンの洗礼。朝の祈りを捧げる教徒たちに向け、モスクでの礼拝へと誘う朗々としたこの呼び声が各モスクから流れると、アザーンの重なりが独特の響きとなって街を包み込みます。
「スーク」と呼ばれるアラブの市場も異国の香りがたっぷり。店先には色鮮やかな織物が折り重なり、未知の香辛料が鼻腔をくすぐります。街の広場ではミュージシャンが音楽を奏で、大道芸人が次々と芸を繰り出します。夕暮れとともに続々屋台が開き、まるで祭りのよう。闇が濃くなるとともに増す賑わいが、旅行者の心も浮き立たせます。
活気あるスークや広場を中心に広がる街と、いまだ昔の生活様式を守る人々。その佇まいに、現代日本では見られない風情を、ある種の郷愁をもって感じる人も少なくないのではないでしょうか。
三越伊勢丹ニッコウトラベルでは、この魅惑の異文化世界を楽しむ3つの旅をご用意しました。
まずは、海を挟んでヨーロッパと向き合う北アフリカの国、モロッコへの旅です。国土の中央を東西に横たわるアトラス山脈を境に、海側と内陸側で大きく表情を変えるこの国には、実に多彩な見どころがあります。
迷路都市の異名を持つフェズや、巨大なスークを擁するマラケシュなどアトラス山脈以北の街も大いに魅力的ながら、最大の見どころといえばやはり山脈以南の内陸に広がる砂漠の景観でしょう。アフリカ大陸の約3分の1を占めるサハラ砂漠は、その赤みがかった美しい砂と壮大さで多くの旅行者を魅了してきました。ツアーで滞在するのは、サハラ砂漠の入り口にある街メルズーガ。大砂丘の麓のホテルに連泊し、刻々と変化する砂丘の風景を心ゆくまで味わいます。特に早朝の砂丘が織り成す幻想的な光景は、忘れがたいものとなることでしょう。付近にラクダ使いの姿を見つけたら、ラクダに乗って砂丘を行くのも一興です。
カスバ街道の景観もモロッコならではのもの。カスバ(城砦)の名が付くとおり、街道の周囲には数々の城砦が残されています。訪れる2月は、ちょうどアーモンドの花が咲く時期。城砦の点在する砂漠を白や薄いピンクの花が華やかに彩る表情豊かな街道の景観をとくとお楽しみください。
モロッコと同じ北アフリカのチュニジアと、地中海を隔てて約2,300キロの距離にある中東ヨルダン。この2カ国を一度に訪れるユニークな旅もご用意しました。
チュニジアでは、地中海に面した首都チュニスに3泊。イスラム寺院とユダヤ教会が共存するなど、異文化ひしめくこの街を拠点に、古代カルタゴ遺跡をはじめとする観光名所に足を延ばします。チュニスからは、海沿いの丘の街シディ・ブ・サイドへも車で約30分。家々の青と白が鮮やかな対比を成す美しい街です。
旅の後半は、チュニジアから空路約4時間のヨルダンへ。ツアーでは、この国最大の観光名所であるペトラ遺跡をじっくり観光します。3世紀までナバテア王国の首都として栄えたペトラは岩山の裂け目につくられた都市。広大な土地に多くの遺跡が点在しますが、なかでも高さ約80メートルの断崖の間を抜けた先に出現するエル・ハズネ(宝物殿)は圧巻です。徒歩観光となりますが、お疲れの場合は最近導入されたという電動カートで進むのも良いでしょう。
もう1つのハイライトは、塩分濃度の高い死海での浮遊体験です。体験者によれば、「浮く」というより「沈めない」感覚だとか。ここでしかできない特別な経験が待っています。
最後にご紹介するのは、ヨーロッパとアジアが交わる国トルコ。カッパドキアやパムッカレ、イスタンブールなどおなじみの見どころをゆったりめぐる春の旅です。地中海沿いの街イズミールの周辺では桃の花、内陸のカッパドキア地方ではアーモンドと杏の花が見頃を迎え、この時期ならではの景観がお楽しみいただけます。
この旅のポイントは、トルコという国の多彩さを実感できるイズミールでの3連泊。この街を拠点に南に向かった先にあるのはエフェソス遺跡です。ローマ帝国時代のトイレや劇場の跡で休憩をとりながらゆっくり遺跡群をめぐり、古の時間に想いを馳せましょう。翌日は、エーゲ海に突き出たチェシュメ半島へと西へ。目指すは石畳の街並みが美しいアラチャトです。イズミールを起点にオリーブ畑の広がるのどかな風景を行くこの道は「エーゲ海オリーブ街道」と呼ばれ、日本旅行業協会の「ヨーロッパの美しい街道・道20選」にも選ばれています。
同じイスラム世界でも、文化や習慣への影響には濃淡があり、国によって見どころはさまざまです。多彩かつ魅惑の異文化世界への旅。ぜひともご自身の五感で味わい尽くしてください。