はるか昔に大陸同士がぶつかり、うねり、せり上がった躍動を今に伝えるピレネー山脈。圧倒的な存在感を放つ1,000〜3,000メートル級の峰々が、地中海から大西洋までおよそ430キロにわたって貫きます。かつては文明を分断する壁のように立ちはだかった山脈も、現在は世界の人々をひきつけてやまない憧れの地に。その絶景の懐へ、スペインから入り、国境を越えてフランスへ。見る側によってまったく異なる、迫力に満ちた大自然の表情を体感してみませんか。
旅のはじまりは、スペインから。芸術の街バルセロナで、1年余り前に「聖母マリアの塔」が完成したサグラダ・ファミリアを訪ねます。新たな尖塔が建てられたのは1976年以来のことなので、大きく印象が変わった記念すべきその姿は、ぜひとも心に刻んでおきたいものです。
そして、ピレネー山脈の南麓へ。時が止まったかのようにひっそりと佇む、美しい村アインサを散策します。広大な山脈の景色に抱かれた、中世の暮らしを物語る石造りの家並みに、ほっと心和むひと時です。
スペイン側のピレネー。その特徴は、荒々しい大渓谷です。フランス側よりも日当たりが良いために氷河がほとんど溶けて、削られた岩山がむき出しになっています。その迫力を目の当たりにできるのが、オルデサ・イ・モンテ・ペルディド国立公園です。
スペイン政府公認の、地元を知り尽くした日本人ガイド細川さくらさんの案内で、4WD車に分乗し、変化に富んだ山道をぐんぐんと登っていきます。山麓の小さな街にも立ち寄りながら、断崖絶壁にある5つの展望台へ。1,000メートルほどの高低差がある渓谷を、さまざまな角度から望むことができます。
国境を越えてフランスへ。氷河や滝が流れる風景が続くフランス側のピレネーは、また違う魅力にあふれています。ロープウェーで訪れるのは、標高約2,877メートルにあるピック・デュ・ミディ展望台です。遮るものがなく、どこまでも続く稜線。その真下には、緑に輝く大地が広がります。
氷河の侵食によってできたガヴァルニー圏谷は、フランス側ピレネーのまさに足元といえる地。壁のようにそそり立つ壮大な山へ向かって、河沿いのなだらかな道を散策しましょう。ピレネーの眺望だけでなく、その清々しさも体感できる、心地よい道のりです。
ピレネーの表情を謳歌した旅の締めくくりは、美食の地として知られるバスク地方です。小さな街でありながら、世界屈指のレストランが並ぶスペインのサン・セバスチャンに3連泊し、美しい海岸線の絶景とともに、フランスとスペインの美味を満喫します。
フランスでは、木組みの家々がかわいらしい小さな街アイノアへ。オーベルジュでの優雅なランチタイムが待っています。チョコレートの有名店が並ぶバイヨンヌのポールヌフ通りも、思わず目移りする楽しさです。
スペインに入ってすぐの国境沿いにある街オンダリビアでは、バスク名産の微発泡酒「チャコリ」のワイナリーにもご案内します。サン・セバスチャンでは、夜の帳が下りたら旧市街へ。地元の人や世界各国からやってきた旅人など老若男女で賑わうバルで、ピンチョスディナーをお召しあがりください。ピンチョスとは、彩りも美しい一口料理のこと。新鮮なシーフードなど、贅沢なおいしさを気取らずに味わえるのも、バルならではの魅力です。
夕食後にもう少し旧市街の雰囲気を楽しみたい方は、添乗員が街歩きと2軒目のバルへご案内します。碁盤の目のような路地は歩きやすく、散策にもぴったり。バルをはしごする人々の笑顔に包まれながら、心躍る時間をお過ごしください。
2つの国を分かつ山脈だからこそ、それぞれに楽しめる豊かな魅力。スペインとフランス、どちらも丹念にめぐるこの旅で、言葉では語り尽くせないピレネー山脈の迫力と奥深さを実感していただけることでしょう。