世界の客船はサイズも特徴も多様で昨今は大型化の傾向も目立ちますが、海を身近に感じながら、アットホームなおもてなしを楽しみたい方は、小型客船のクルーズに着目してみませんか。
ひときわ個性が輝く小型客船専門の「ウインドスタークルーズ」という船会社があります。同社の客船は1万トン台またはそれ以下のサイズで「ブティック・クラス」と称されるラインナップです。
今回は、帆船タイプの「ウインドスター」で訪れるパナマ運河クルーズと、客船「スターレジェンド」の地中海クルーズの2つをご紹介します。
ウインドスタークルーズは小型船にこだわり続けている会社で、乗客3人に対して乗務員が2人の割合と手厚いサービスを提供することに主眼を置いています。クルーたちは皆優しく、乗船して間もなくすると、乗客1人ひとりを名前で呼んでくれる点などは印象に残ることの1つでしょう。好みのドリンクを覚えていてくれるなど、細かな気遣いが感じられます。ある時、キッチン内部を見学する機会に恵まれた当社スタッフは、壁一面に貼られた乗客の顔写真に、アレルギーや苦手食材などがメモされている徹底ぶりに驚かされたといいます。乗客数が少ないため乗客1人当たりの占有スペースが広く、空間にゆとりが感じられます。乗下船時も待ち時間のストレスがなく、スムーズです。
小回りがきくので大型船が入港しにくい小さな港町にも寄港でき、プライベートヨットのような船旅ができるのも大きな魅力です。また、ほかの客船では許可されないことも多い操舵室の見学が、昼夜問わず自由にできるのも特徴。キャプテンの姿を間近に見ることができるかもしれません。
食事のクオリティも高く、メインダイニングだけでもメインは6種類以上のメニューから選ぶことができ、毎日変わります。世界的にも権威のあるジェームスビアード財団と提携し、複数の有名レストランのシェフが監修する料理も提供されています。予約を取ることすら困難な名店の味を、毎日気軽に楽しむことができる贅沢な日々が続きます。
ウインドスタークルーズは現在は帆船以外も運航していますが、元は帆船からスタートした船会社です。最初にご紹介するのは、同社の良さが凝縮された存在ともいえる帆船「ウインドスター」で2025年2月に出発するパナマ運河クルーズです。
この船の魅力は何といっても帆船でのクルーズ体験ができること。5本マストの船でエンジンを備えており、天候や海上のコンディションが良く、エリア的に可能な場合は、エンジンを切って帆を揚げ、風の力だけで海を滑るように進むことができます。エンジン音のしない海の真の静寂さを感じられるでしょう。
今回は、コンパクトな日程ながらパナマ運河を完全通峡し、人気のコスタリカにも寄港するユニークなコース。全幅が15.8メートルの船で通峡するパナマ運河では両岸の様子が一度に見られ、通常の客船とは一味違った通過体験ができます。デッキで人類最大の偉業ともいえる壮大な運河のドラマチックな風景をご覧ください。
コスタリカでは、大型客船が寄らないような小型船ならではの港も訪れます。生物多様性に富んだコスタリカの秘境、海岸線に手つかずの熱帯雨林が広がるオサ半島などにも寄港します。世界有数の未知なる自然との遭遇に胸が高鳴りそうです。
この船は148人の乗客定員に101人のクルーがサービスにあたり、温かなおもてなしとクルーとの絶妙な距離感がリピーターにも好評です。厨房見学ツアーなどが行われたり、シェフの市場での買い出しに誘われたりすることもあったそうです。食事は上質で、当日に仕入れた食材を使った料理がその日に出ることもあり、これもまた乗客数の少ない客船ならでは。服装はタキシードやネクタイ、フォーマルドレスは不要で、ディナータイムでも襟付きのシャツなどの肩ひじ張らない、スマートカジュアルで寛いでお過ごしいただけます。
次にご紹介するのは客船「スターレジェンド」で、2025年3月にバルセロナ発、ローマ着の地中海クルーズを実施する予定です。この船は、2020年に25.5メートルの船体ストレッチ(拡張)という本格的な改装を実施し、話題を集めました。
同社史上最大の投資で一旦船体を切断し、ブロックを挿入して船体を拡張したもの。この改装で客室が50室増えたり、新しいレストランが増えたりしています。船内ライフを充実させるために、こだわったアップデートをする会社ということが伺えます。
改装により食の選択肢が広がり、モダンなデッキバーベキューのレストランとスペイン創作料理が新しく設けられました。特にスペイン料理は最年少で世界的な格付け評価を得て注目を浴びたアンソニー・サッソ氏による監修で、人気のタパスや、ガリシア風タコや、イベリコ子豚の生ハムなどが味わえます。
居心地の良さの理由の1つに、客室が広いことがあります。最も小さな部屋でも約26平方メートルあり、全客室がスイートで、バルコニー付き客室もご用意しています。 ルームサービスは24時間無料で、コーヒー1杯から注文することができます。お部屋でゆったり過ごす方も多いそうです。優れたマッサージ技術を持つセラピストが乗船しており、小型船ながらスパ施設も充実。無料でドライサウナ、ミストサウナなども利用できます。
ウインドスタークルーズは、長年に渡って勤務するクルーが多く、働きやすい船会社といわれているとか。これもまたサービスの質を保つために大切にしていることで、熟練したクルーが多いからこそ、乗客の心に響くホスピタリティが生まれるのかもしれません。船旅の締めくくりは恒例のクルーショー。クルーの温かみのあるパフォーマンスを観覧し、最後には感動的なお別れの歌が披露されるそうです。このまま乗っていたいと思うような、名残惜しいフィナーレとなることでしょう。
一生忘れられない船旅―そんな言葉が似合うウインドスタークルーズの船で、大海原へ出かけませんか。