[ 海外特集① ]

連泊だから見えてくる豊かな表情

この秋、スペインの真髄へ

企画=森脇潤/木島将也/安部川帆南 文=吉田千尋
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それぞれの街でゆったりと滞在しながら、めぐっていく。だからこそ足を延ばせる場所があり、意外な素顔に出あえることも。地域ごとに鮮やかな個性を抱くスペインこそ、そんなスタイルの旅が似あいます。街の魅力を雄弁に物語る名門ホテルに連泊しながら、この国の真髄を探しに、出かけませんか。

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ガウディだけではないバルセロナ
奥深さを味わい尽くすスペイン周遊

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「カサ・フステル」3連泊 建築の二大巨匠にふれる醍醐味

街全体が美術館のようなバルセロナや、アラブ文化薫るアンダルシア、華やかな首都マドリード。最初にご紹介するのは、はじめてスペインを訪れる方におすすめしたい周遊の旅です。

「カサ・ミラ」など、名立たるガウディ建築が集まるバルセロナのグラシア通りは、とあるホテルからはじまります。曲線が強烈な印象を残すガウディとは異なる、優美な佇まいの「カサ・フステル」。手がけたのはガウディの師であり、ライバルといわれたモンタネールです。可憐な花々の装飾を巧みに用いたことから、“花の建築家”と称されました。

  • イメージ イメージ モンタネール作のカタルーニャ音楽堂
  • イメージ モンタネール建築に泊まる贅沢を。大富豪が妻への贈り物として依頼した華麗な邸宅ホテル「カサ・フステル」
  • イメージ 「芸術は病を癒やす」という信念のもとで建てられた「サン・パウ病院」も、モンタネール作

この旅ではバルセロナで3連泊し、二大巨匠がしのぎを削ったモデルニスモ(19世紀末から20世紀初頭の建築様式)の躍動感を味わいます。モンタネール作の「カタルーニャ音楽堂」や「サン・パウ病院」、ガウディ作の「グエル公園」、2026年にメインタワー「イエス・キリストの塔」が完成すると発表された「サグラダ・ファミリア」も見逃せません。刻々と変わるその姿を、目に焼き付けましょう。

  • イメージ 2026年、メインとなる「イエス・キリストの塔」が完成予定の「サグラダ・ファミリア」
  • イメージ サグラダ・ファミリア内部はステンドグラスが 幻想的

ご宿泊は、先にご紹介した「カサ・フステル」です。富豪マリアーノ・フステルが愛する妻への贈り物としてモンタネールに依頼した邸宅で、完成当時、バルセロナで最も豪華な建物と称賛されました。花のモチーフがあしらわれ、気品に満ちあふれた空間が、20世紀初頭の趣を今に伝えています。壮麗なモンタネール建築に滞在する喜びを、ぜひご堪能ください。

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アンダルシアの光と影 今も残るアラブの薫りを訪ねて

輝く太陽の光とフラメンコ、“情熱の国”と呼ばれるスペインのイメージが色鮮やかに迫りくる、それがアンダルシアです。さらにこの地には、イスラム王朝をめぐる壮大な物語が刻まれています。ゆったりと2連泊することで、情熱的というだけではない奥深さに浸りましょう。

8世紀から約800年にわたりイベリア半島を支配したイスラム王朝。その終焉の舞台が、アンダルシアのアルハンブラ宮殿でした。最後の砦を奪ったキリスト教の支配者は、びっしりと施された装飾の美しさに目を見張り、破壊せずに残したといわれます。

グラナダの光と影を映すこの宮殿を訪ねることはもちろん、アラブ風の雑貨が所狭しと並ぶアルカイセリア地区を歩くのも貴重な体験です。ヨーロッパでもここでしか見られない独特の雰囲気のなかで、イスラム王朝の時代に思いを馳せてみてはいかがでしょう。

アルハンブラでは、街を代表する老舗ホテル「アルハンブラ・パレス」に滞在します。一歩足を踏み入れれば、まるで『千夜一夜物語』の世界に迷い込んだかのよう。風情に満ちたグラナダの旧市街を、客室から一望できるのも大きな魅力です。

  • イメージ イメージ イスラム王朝の世界へと誘われる「アルハンブラ・パレス」に2連泊
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急な階段や長時間の歩行を避けた「ゆったり度3」の旅も

スペイン周遊の旅では、お体の負担を極力減らした「ゆったり度3」の旅もご用意しました。バルセロナの名建築「カサ・フステル」3連泊、「アルハンブラ・パレス」2連泊などの贅沢な滞在はそのままに、タクシーやミニトレインなどを利用し、歩く時間を少なくしたルートでご案内します。

連泊でじっくりと向きあうからこそ見えてくる物語。はじめてでもスペインの奥深さを知ることのできる旅は、忘れえぬ体験となることでしょう。

  • イメージ イメージ 古都トレドの全景を望むパラドールでのランチタイムは格別
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大聖堂に寄り添うパラドールに滞在
“歓喜の街”サンティアゴを堪能する

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2度目以降の方におすすめする 北スペイン巡礼ルートの旅

独自の言語であるガリシア語が飛び交い、ケルト民族の音楽が聞こえてくる地。イベリア半島北部のガリシア州では、一般にイメージされるスペインには収まらない空気が漂います。まだ見ぬ表情に出あえる「北スペイン」の各地を、連泊中心でめぐる旅はいかがでしょう。

州都のサンティアゴ・デ・コンポステーラは、エルサレム、ローマに並ぶキリスト教三大聖地の1つといわれています。人々は中世の時代から、ピレネー山脈を越えて北スペインを横断する巡礼路を通り、この地を目指しました。目的地は、サンティアゴの中心にある大聖堂。現代も、大きなバックパックを背負った巡礼者が毎年数10万人もここを訪れます。大聖堂の前で見られるのは、固く抱きあって歓喜の声を上げる人々。長い道のりを越えてきたその姿に、胸が熱くなる瞬間です。

  • イメージ イメージ 聖ヤコブの象徴ホタテ貝は聖地への道しるべ
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各地のパラドールに計6泊 歴史的建造物に滞在する喜び

サンティアゴでは、大聖堂のすぐ隣に建つ500年以上の歴史を誇るパラドールに3連泊し、祝福に満ちた街の雰囲気をたっぷりと味わっていただきます。「パラドール」とは、古城や宮殿などを改装して宿泊施設とした国営ホテルのこと。文化遺産を保護するスペイン独自の取り組みで、価値ある歴史的建造物に泊まるという貴重な体験をもたらしてくれます。

北スペインを東から西へめぐるこの旅では、巡礼の経由地であるレオンなど、各地のパラドールに宿泊。サンティアゴを含めて計6泊という、贅沢な滞在を実現しました。かわいらしい街の雰囲気に調和した貴族の邸宅や、スペイン・ルネッサンス様式の元修道院など、それぞれに趣あふれる空間をぜひご堪能ください。

  • イメージ イメージ 巡礼者たちが集う大聖堂のすぐ横に建つパラドールに3連泊
  • イメージ サンティアゴの大聖堂
  • イメージ パラドール中庭を囲む美しい回廊も必見
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州公認の日本人ガイドとめぐる特別プログラム

聖地という言葉に、宗教の知識がなければ楽しめないのでは……と思われる方もいるでしょう。この旅の大きな魅力の1つが、州公認の日本人ガイドとめぐる特別プログラム。分かりやすく楽しい解説で人気の堀いつこさんが、サンティアゴをご案内します。

大聖堂では、通常ルートでは入れない「栄光の門」へ。巡礼者たちがここに手をつき、祈りを捧げた証である中央の柱の指の跡など、解説とともにふれる歴史に感動もひとしおです。

さらに、聖堂内で巨大な香炉を吊るして振り子のように揺らす巡礼の儀式「ボタフメイロ」など、一般的なツアーではまず実現できない聖地でのひと時を特別に味わっていただきます。巡礼を終えた人々も満喫する市場のレストランなど、北スペインの美食に舌鼓を打つひと時も大きなお楽しみです。

めぐるほどに、深い魅力があふれる北スペイン。美しき祈りの地で、新たな感動の時が待っています。

  • イメージ イメージ (左)作品保護のために通常入館では見られない「栄光の門」も堪能する(右)1.6メートルほどの巨大な香炉を揺らす巡礼の儀式「ボタフメイロ」は圧巻