[ 海外特集① ]
晩餐会と天女の舞いに酔いしれる
アンコール遺跡の夕べ
企画=寺澤欣吾/篠原陽子
文=佐藤淳子
-
トマノン遺跡の前で披露されたのは、祝福、武術、天女、扇、狩猟の5種の舞踏
ライトアップされたアンコール遺跡を舞台に繰り広げられる煌びやかな舞いと洋食コース料理の優雅な晩餐会―今年3月、三越創業350周年記念として催行、ご好評いただいたカンボジアの旅を、よりバリエーションを豊かにして再び催行することになりました。今年お客さまとともにこの特別な旅を体験した3人の添乗員の話を交えながら、来年2月催行予定のツアーの概要をご紹介します。
夜の闇に浮かび上がる遺跡 見事な演出に会場から感嘆の声
世界にその名を知られるカンボジア随一の世界遺産、アンコール遺跡。この貴重な遺跡群をシェムリアップに3連泊してじっくりと観光する旅を催行したのは今年の3月です。充実の旅程のなかで特にお客さまにご好評いただいたのが、アンコール遺跡群の一画を成すトマノン遺跡での晩餐会でした。
-
晩餐会場は、アンコール遺跡群のなかでも保存状態が良いとされるトマノン遺跡
アンコール遺跡群を管理する国家機関、アプサラ機構の許可を得て実現したこの貴重な夜会に、感銘を受けたのはお客さまだけではありません。「それは見事な演出でした」。こう口を揃えるのは、今年3月のツアーで添乗した3人の添乗員です。松原陽介添乗員(以下、松原)は、「すべての演出がすばらしかったです。遺跡の舞台から演者が登場したと思ったら、音楽が鳴り響き、その人たちが配膳。その驚きの演出に会場全体がどよめきました」と振り返ります。
感動の布石はすでに会場入り口からありました。バスを降りると、遺跡を守る門番然としたスタッフが槍を交差して道を通せんぼ。遺跡への道の両脇には何百ものキャンドルが並んで闇を照らし、雰囲気たっぷりです。遺跡の前ではウエルカムドリンクが振る舞われ、カクテルパーティーの趣。その後、ライトアップされた遺跡の前で、驚きの晩餐となったのです。
-
闇夜を数百のキャンドルが照らすなか、槍を手にしたスタッフがお出迎え
-
晩餐会前にはウエルカムドリンクが振る舞われ、
期待感も最高潮に
-
天女が遺跡から現れる幻想的な演出に、会場からため息も
「食事自体もすばらしいものでした」と中島悠添乗員(以下、中島)は語ります。ケータリングではなく、遺跡のなかに即席の厨房を設えてそこから温かい料理を提供。「料理も食器類もレストランと遜色なく、屋外であることを忘れそうになりました」とのこと。「盛り付けや味はもちろん、氷の皿が下からライトアップされるなどのサプライズも」と語るのは山藤琢史添乗員(以下、山藤)。「まさに異空間。夢のなかの出来事のようでした」と振り返ります。食事の間、遺跡の舞台で繰り広げられたのは民族舞踏のショーです。舞いを披露するのは一流のダンサーたち。特にカンボジア伝統の宮廷舞踊、アプサラダンスの見事さに松原は感動したそうです。
-
晩餐会では、ホテルでの食事と遜色ない優雅なコース料理を堪能。約70名のスタッフが笑顔でおもてなし
-
遺跡を舞台に繰り広げられる幻想的な舞踏。伝統楽器の生演奏が会場を盛り上げる
「晩餐会そのものが非日常のものですが、さらに世界遺産の遺跡で行われるということが稀有。そのこと自体に興奮されたお客さまも多かったのではないでしょうか」とは中島の弁。来年のツアーでも、トマノン遺跡での晩餐会を予定していますが、遺産保護の観点から、遺跡での晩餐会開催は珍しいものになっています。この貴重な機会をぜひご体験ください。
3連泊だからこその充実の観光 遺跡では修復スタッフの案内も
シェムリアップに3連泊して、アンコール遺跡群をじっくりめぐるのもこのツアーの特長です。一般的にはアンコールワットだけを見学する1〜2泊のツアーが少なくありませんが、3連泊する当ツアーでは、アンコールトムや、クメール美術の至宝とも称されるバンテアイ・スレイにも訪れます。時代の異なる遺跡をめぐることで見えてくる文化や歴史があるかもしれません。
日本国政府アンコール遺跡救済チームのメンバーによる遺跡案内を旅程に組み込めるのも、3泊するからこそ。「個人旅行ではなかなかできない体験。日本人が海外の貴重な遺跡の保護に取り組む姿にふれ、誇りや応援の念を抱かれた方も多かったようです」と中島。山藤は「古いものを大切にしながら修復を進める日本チームの姿勢に、共感する声もありました」と語ります。現地のカンボジア人とともに遺跡の修復にあたる専門家の話は、その後の遺跡見学に対するお客さまの興味も大いにかき立てたようです。来年のツアーでも、修復現場でお話を伺うとともに、実際の修復の様子も間近で見学します。
-
ご希望により、アンコールワットから昇る朝日の見学へ。3連泊するゆとりの旅程だからこそ早朝の観光にも無理なくご案内
滞在は要人も滞在するラッフルズ 日中はホテルで優雅なひと時を
3連泊は観光の快適性も実現しました。1年のうち最も過ごしやすい時期の催行とはいえ、日中は気温の上がるカンボジア。そこで、最も気温が高くなる昼食後の時間をホテルでゆっくりと過ごしていただき、午前中や夕方に集中して観光を行う旅程としました。「すべての皆さまが元気に観光を楽しまれていました」(山藤)の言葉どおり、ご参加の皆さまには快適に旅を楽しんでいただけたようです。
3連泊するとなれば、ホテルも重要な要素。お泊まりいただいた「ラッフルズ・グランドホテル・ダンコール」は、フランス植民地時代の趣を残す由緒あるホテルで、各国の要人も滞在してきた場所です。山藤によれば「スタッフの笑顔とサービスがすばらしい。館内の雰囲気も開放的で、ロビーなどでリラックスされているお客さまをよくお見かけしました」とのこと。来年のツアーでも同ホテルに3連泊。日中のホテル滞在も、快適かつ優雅なひと時となることでしょう。
来年は地元小学校も訪問します。訪れるのは、日本のNPO法人「HERO」が現地政府と協力して運営する小学校。目覚ましい経済復興の一方で教育の遅れなどが指摘される現状を垣間見るとともに、元気な子どもたちの笑顔にふれる貴重な機会となるはずです。
カンボジアをさまざまな角度から楽しむ旅。ぜひご堪能ください。
-
来年は地元小学校も訪問し、元気なカンボジアの子どもたちと交流
*******************
シェムリアップの名門ホテル
「ラッフルズ・グランドホテル・ダンコール」
ジョセフ・コリーナ支配人から皆さまへ
*******************
私たちのホテルは、アンコール遺跡観光に訪れた方々のための最初のラグジュアリーホテルとして、1932年、シェムリアップの中心部に開業しました。洗練された客室のインテリア、天井でゆったりと回る昔ながらのファン、真鍮の電話、24時間対応のバトラーサービスなど、フランス統治時代の趣と現代的な雰囲気で皆さまをお迎えします。美しいフランス式庭園やプールの眺望もお楽しみください。レストランやバーでは、世界の料理と地元の文化を融合させた食と独特の雰囲気をご堪能いただけることでしょう。
アンコール遺跡の夕べ
1000年前の遺跡が語る
王朝の栄華
日本国政府アンコール遺跡救済チームの技術補佐として修復に携わるとともに、現地で活動する他国の機関との調整や修復終了時の成果のデータ化なども手がける成井至さん。今回の旅では、現在、日本チームが修復を担うアンコールトム遺跡群の1つ、バイヨン寺院を案内してくださいます。現地に暮らして3年目を迎える成井さんに、アンコール遺跡の魅力について語っていただきました。
-
成井さんたち日本チームが修復を進めるバイヨン寺院。アンコールトム遺跡群のなかでも重要な建物
Q まず日本の遺跡救済チームの歴史を教えてください。
A 1993年に開催されたアンコール遺跡救済東京国際会議の翌年、日本国政府により結成され、以来約30年間、修復を担っています。世界遺産と同時に危機遺産に登録されたこの遺跡は、自然崩壊のリスクがあったのです。
Q 風化による損傷ですか?
A 1000年近く前の建物なので風化はしていますが、内戦のダメージも大きいですね。
Q 日本チームが修復を担うバイヨン寺院とは?
A アンコールトム遺跡群のなかでも目玉になる遺跡です。アンコール王朝後期、アンコールワットのすぐあとにつくられたものですが、テイストが違うことに驚かれると思います。
Q 成井さんご自身はどのような点にご興味を?
A 設計段階で当時の人が何を重視し、どんな想いでつくったのか、ですね。寺院をつくったジャヤバルマン七世は積極的に仏教を取り入れた王でした。現在カンボジア人の約95%が仏教徒であることを思えば、当時重視されたことが今に受け継がれた結果ともいえます。建築物からこうした類推ができるのが、とても興味深いです。
Q 建築の専門家から見たアンコール遺跡の魅力は?
A 1000年近くも前の工法で建てられた建物が、今の時代に建ち続けていることでしょう。重機もなかった時代に短期間で建てられたことを考えれば、当時の専制主義がいかに強力だったかがわかります。
Q 遺跡修復での留意点は?
A 修復にはさまざまな国が関わっていますが、全チームの考えが同じわけではありません。原型の復元を優先して解体し、大規模に再建するチームもあるなか、日本チームは、事前に修復の方針を綿密に立て、最小限の介入で修復を進めています。
Q 修復にもさまざまな考え方があるのですね。
A たとえば寺院の伽藍には、東西のラインが北と南でわずかにずれているものがあります。なぜそのような面倒なことをしたか。そこには中心を神聖と考えるヒンドゥー教ゆえ、神さまのいる中心をあえて避けた可能性がある。その可能性を考えず左右対象に修復したら、建設時の意図を無視することになります。私たちはその時代ごとの考え方を尊重したいと考えているのです。
Q なるほど。最後に参加の皆さまへのメッセージを。
A 私たちの活動を通じ、背景にある歴史や未知の部分を知っていただけたらうれしいですね。
-
日本人とカンボジア人が協力して地道な修復活動を続けている
-
ツアーでは実際の修復現場も見学予定
アンコール遺跡とともに
魅惑のインドシナ半島へ
選択肢は3コース
“アジアの桃源郷”ラオスとベトナムの新旧リゾート
アンコール遺跡での優雅な晩餐会をはじめ、特別感満載のカンボジアの旅に加え、同じインドシナ半島に位置する魅力的な国を訪れてみませんか? 来年2月出発のツアーでは、カンボジアの旅と組み合わせられるコースとして、3つの選択肢をご用意しました。
1つ目が、隣国ラオスの旅です。日本人には馴染みが薄いかもしれませんが、ラオスは“アジアの桃源郷”とも称される美しい国です。このコースでは、首都ビエンチャンと古都ルアンパバーンにそれぞれ2連泊します。女性たちのまとう色鮮やかな巻きスカートや、もち米を主食とするラオス料理など、観光スポット以外にもお楽しみのポイントはさまざま。ルアンパバーンでは、オレンジ色の袈裟をまとったお坊さんが列を成して朝の街を行く托鉢の光景に、この国の人々の敬虔さを感じる方もいるでしょう。ツアーでは、ラオスの一般家庭を訪問し、人々の暮らしを垣間見させてもらう機会も設けています。
-
古き良き趣を残すラオスの古都ルアンパバーン
2つ目が、ベトナム“最後の楽園”といわれ、注目を集めているフーコック島です。アメリカの有名な旅行雑誌『トラベル&レジャー』が発表するランキングで「世界最高の島」2位に選ばれたこの島は、美しい自然だけでなく、島間を結ぶロープウェーや、絶滅危惧種のシロサイを含む多くの動物を間近で見られるサファリなど、ユニークな体験ができることでも話題です。今後も続々とホテルが開業する予定の注目のリゾート島に、いち早く訪れてみてはいかがでしょうか。
そして最後が、フランス統治時代から避暑地として愛されたベトナムの高原リゾート地、ダラットです。標高約1500メートルに位置するこのリゾートは常春の地。ツアーで訪れる2月は、1年のなかでもひときわ花が街を鮮やかに彩る時期です。1922年に迎賓館として建てられた由緒ある「ダラット・パレス・ヘリテージホテル」での滞在もお楽しみに。
アンコール遺跡という偉大な遺産を有するカンボジアと、同じインドシナ半島にありながら異なる空気をまとう周辺の国々。2カ国を訪れることで旅の楽しさもふくらむことでしょう。
-
隣島とロープウェーで結ばれたフーコック島。青い海の上を進む爽快な体験を
-
迎賓館としての歴史を有する「ダラット・パレス・ヘリテージホテル」。街やホテルを彩るのは多様な花々
*******************
自分だけの秘密にしたいほど
居心地の良い国ラオス
当社社員:竹下はるか
*******************
私がラオスに留学をしたのは、今から約20年前。大学で専攻していたラオス語の勉強のために、ビエンチャンで1年間ホームステイをしました。もともとこの国の民族の多様性や穏やかな国民性にひかれていましたが、現地で暮らして、この国の魅力を再確認しましたね。朝の托鉢、祭りや儀式、民族衣装など、日常にあふれる伝統文化に、美しさと優しさと居心地の良さを感じました。女性たちがまとうシン(巻きスカート)など、見ているだけでうっとりします。それから主食のもち米を含め、料理がおいしい。ホームステイ先のお母さんが料理上手だったこともあって、留学中、なんと10キロも体重が増えてしまいました(笑)。内緒にしたいくらい素敵な国です。
-
ホームステイ先のファミリーと(右から2人目:竹下)