[ クローズアップ ]
7つの特別見学で知る街の真髄
文化の華咲く都
プラハ&ウィーン
企画=南家知文/森脇潤
文=佐藤淳子
チェコのプラハ、オーストリアのウィーン―美しい街並みと豊かな文化で知られるこの2つの都市は、中欧でも特に人気の高い街です。ただ、それだけに訪れる人が多く、なかなかゆっくり見学できない場所が多いのもまた事実。そこで、この2つの街の人気観光スポットを、行列も人混みも無縁の環境でゆっくりお楽しみいただくべく、7つの特別見学を盛り込んだ旅を企画しました。ふれるほどににじみ出る街の魅力を、じっくり味わってください。
〈 プラハ 特別入場1 〉
色鮮やかなミュシャの
ステンドグラスに感嘆
プラハ城と聖ヴィート教会の見学
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「百塔の街」と称される美しきプラハの街。丘の上にそびえるのは街のシンボルであるプラハ城
世界最大の人気の古城を特別入場でゆったりめぐる
14世紀、神聖ローマ帝国の首都として栄えたチェコの首都プラハ。ロマネスク、ゴシック、ルネッサンス、バロック、アールヌーボー、ポストモダン、そして現代と、各時代の名建築が調和しながら並び建ち、ほかの都市にはない独特の美しさをたたえています。空を突き刺すようにそびえる塔が点在することから「百塔の街」の異名をもつこの街は、日がな散策していても飽きることがありません。
そんなプラハで最も人気の観光スポットといえば、世界最大の古城としてギネスブックに認定されているプラハ城でしょう。880年頃から建築がはじまったこの城は、17世紀、30年戦争の勃発により一度破壊の憂き目にあいます。それをハプスブルク家の女帝、マリア・テレジアが再建しました。
街を見晴らす丘に建つ城の敷地は広大です。敷地内には広場や教会、さらに各時代の建物が続き、まるで1つの街のよう。なかでも必見は、14世紀前半に建てられた聖ヴィート教会。入口にそびえる2本の尖塔を見上げながら足を踏み入れれば、外光を得て美しく輝くステンドグラスが迎えてくれます。そのなかで最も人々の注目を集めているのが、チェコの画家、アルフォンス・ミュシャの『聖キリルと聖メトディウス』。その鮮やかな色彩はしばし言葉を失う美しさです。教会の信仰祭儀の中心、聖ヴァーツラフ礼拝堂も必見です。壁を覆う宝石、イエスの受難を描いた壁画など、壮麗な装飾は見事というほかありません。
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プラハ城内で存在感を放つ聖ヴィート教会
30年戦争の引き金となった役人窓投げ事件の現場も
城内の王宮は、1918年にチェコスロバキア共和国が承認された際も、チェコ共和国となった現在も大統領府が置かれている重要な場所で、見どころもたくさんあります。たとえば、いつも観光客で賑わっている場所の1つが、ボヘミア行政局のあった3階の部屋。ここはヨーロッパ中を巻き込む30年戦争の引き金となった場所でした。ハプスブルク家のカトリック化政策に反抗したプロテスタントのボヘミア貴族たちが、皇帝の代理人である政務官と書記の3人を窓から投げ落とすという衝撃的な事件がここで起きたのです。
このように見どころの多いプラハ城ゆえ、旅行者で混雑しているのが常ですが、今回の旅では、一般開館時間前の特別入場でゆっくりお楽しみいただきます。人気の聖ヴィート教会も待ち時間なく入場できるだけでなく混雑とも無縁。ミュシャのステンドグラスもご自身のペースで心ゆくまでご鑑賞ください。通常は人波の絶えない「黄金の小径」も静かな環境で見学いただけます。色とりどりの小さな家々が並ぶこの石畳の道の名は、神聖ローマ皇帝ルドルフ2世が錬金術師を集めて住まわせたという伝説に由来するもの。『変身』などで知られる小説家、フランツ・カフカが一時期、仕事場としていた家もここにあります。
〈 プラハ 貸切2 〉
音楽あふれる街の空気を体感
聖ミクラーシュ教会での
パイプオルガンコンサート
巨大なキューポラが目を引くバロック様式の壮麗な教会
チェコ音楽の父といわれる作曲家スメタナが学んだプラハの街は、昔も今も音楽にあふれています。今回の旅では、この街で音楽をゆったりと楽しむ機会をご用意しました。
舞台となるのは、旧市街にある聖ミクラーシュ教会です。旧市街広場の一角、有名な仕掛け時計近くに建つバロック様式の美しい教会で、内部のクーポラ(丸天井)を飾るのは、聖ミクラーシュの生涯や旧約聖書をテーマにした壮麗なフレスコ画。音響の良さでも知られるこの教会では、ミサだけでなく、クラシックのコンサートなども行われています。
ここでパイプオルガンの演奏を皆さまだけでお楽しみください。教会に響き渡るオルガンの音色はきっと記憶に残るものとなることでしょう。
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バロック様式の聖ミクラーシュ教会。教会内にパイプオルガンの音色が響き渡る
〈 プラハ 貸切3 〉
美しきプラハの街並みを
船上から眺望
モルダウ河クルーズ
モルダウ河から望むプラハ最古の石橋
スメタナの代表作『我が祖国』第2番の名にもなっているモルダウ河。プラハの街の中央をゆったりと流れる大河は、ゆったりとした雄大な旋律そのもの。今回の旅では、この河を貸切クルーズで楽しみます。
どこを切り取っても絵になるプラハの街は、川面から眺めることでまた別の表情を見せてくれることでしょう。
河にかかる橋も見どころの1つです。なかでもご期待いただきたいのがカレル橋。プラハ最古のこの石橋には、フランシスコ・ザビエルをはじめ、聖書に登場する聖人や歴史的人物、英雄らの像が、橋の左右に15体ずつ、計30体並び、橋を渡る多くの旅行者の目を楽しませています。船上の皆さまからは、どのような景色が見られるでしょうか。
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モルダウ河貸切クルーズでプラハの街並みを川面から楽しむ
文化の華咲く都プラハ&ウィーン
〈 プラハ 貸切4 〉
プラハ城内の貴族の館で
優雅なひと時
ロブコヴィッツ宮殿での晩餐会
ベートーヴェンゆかりの館で音楽とともにフルコースを
プラハでは、かつて有力貴族として名を馳せたロブコヴィッツ家の館で、音楽とともにコース料理を堪能いただく機会もご用意しました。
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プラハ城内に建つロブコヴィッツ宮殿。優雅そのものの内装
プラハ城の敷地内に建ちながら、城内で唯一私有地となっているこの宮殿は、16世紀半ばに建てられたもので、館内に名だたる画家たちの作品が飾られていることで知られています。長らくロブコヴィッツ家の居城として使われてきましたが、代々の城主のなかでも有名なのは、ベートーヴェンに経済的援助をしていた7代目ロブコヴィッツ公でしょう。名曲『英雄』は当初ナポレオンに捧げられる予定でしたが、ナポレオンが皇帝に即位したことにベートーヴェンが腹を立てたことで、当時のパトロンであるロブコヴィッツ公に捧げられたのだとか。ちなみに、1618年に「窓投げ事件」が起きた際、ケガをした大臣たちが逃げ込んだといわれるのがロブコヴィッツ宮殿です。
さまざまなエピソードをもつこの館で、いにしえの時代に想いを馳せながら、ひと時の晩餐をお楽しみください。
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ロブコヴィッツ宮殿でフルコースの夕食を音楽とともに
〈 ウィーン 貸切5 〉
音楽の都で堪能する天使の歌声
ウィーン少年合唱団コンサート
創設526年の合唱団 前身は宮廷礼拝堂聖歌隊
音楽の都として知られるウィーン。クラシック音楽ファン垂涎の場所が点在するなかで、独特の存在感を放っているのが、ウィーン少年合唱団ではないでしょうか。
少年合唱団の発祥は、今を遡ること500年以上前の1498年のこと。はじまりは、神聖ローマ帝国皇帝マクシミリアン1世が、宮廷礼拝堂専属の聖歌隊に6名の少年を配属したことでした。第一次世界大戦終結時に、一時解散を余儀なくされますが、当時の宮廷楽長が私財を投じて民営の少年合唱団として再生。団員はオーディションで選抜されました。現在、トレードマークとなっているセーラー服は、この時以来のものだそうです。
現在、合唱団を構成する少年たちは約100名。国内外で演奏活動をしながら、小学校4年間、その後のギムナジウム低学年4年間までを、全寮制学校で一般学科と音楽の両方を学んでいます。
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「天使の歌声」として世界に知られるウィーン少年合唱団 ©WienTourismus/Lukas Beck
専用のホールに響く歌声 少年たちとの記念撮影も
巨匠トスカニーニが「天使の歌声」と称したその歌声。来日公演の際にその美しい歌声にふれた方もいらっしゃるかもしれませんが、今回の旅では、本拠地ウィーンのアウガルテン宮殿内専用ホールで、皆さまだけのコンサートをお楽しみいただきます。人生の一時期のみだけに許された少年たちの奇跡の歌声を堪能ください。
コンサート後には、少年たちとの記念撮影の時間もあります。少年たちとの交流もぜひお楽しみください。
〈 ウィーン 貸切6 〉
ハプスブルク家の
夏の離宮をゆったりめぐる
シェーンブルン宮殿の見学
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女帝マリア・テレジアの時代に完成したウィーンのシェーンブルン宮殿
世界の歴史を変えた舞台はマリア・テレジア治世に完成
ウィーンで必見の観光スポットの筆頭に挙げられるのが、ハプスブルク家の夏の離宮、シェーンブルン宮殿です。
17世紀末に建設がはじまったこの宮殿が現在の美しい姿となったのは、女帝マリア・テレジアの治世においてでした。外壁に施された印象的な黄色は、マリア・テレジア・イエローとして今に伝わっていますが、予算があれば金色に塗られる予定だったそうです。バロック様式の外観に対して、1,400を超える部屋が並ぶ内部はロココ様式。フランス式の庭園や動物園、劇場など、広大な敷地内に点在するすべてが優雅そのものです。16人の子の母であるマリア・テレジアの末娘、マリー・アントワネットも、14歳でフランスに嫁ぐまでここで過ごしました。
宮殿の人気をさらに高めているのは、ここが何度も重要な歴史の舞台となってきたという事実でしょう。ナポレオンがウィーンを占領した際にはこの宮殿を宿舎とし、ナポレオン失脚後には、ウィーン会議が開催されました。ハプスブルク家最後の皇帝カール1世は、1918年、ここで退位文書に署名をしています。
人気の宮殿を夕刻じっくりと かつての晩餐会会場も貸切りで
こうして世界の歴史を変える舞台となってきた美しい宮殿は今、常に多くの観光客で賑わう人気スポットとなっています。通常の見学であれば、チケットごとに時間や見学場所が決められ、マイペースで見学することはなかなか容易ではありません。最近は予約自体取りにくい傾向にあります。そこで今回のツアーでは、この人気の宮殿を、観光客の去った夕刻、貸切見学でゆっくりご覧いただくことにしました。かつて優雅な晩餐会が夜毎開催された大ギャラリーも、しばしの間、皆さまだけの空間となります。歴史的に重要な役割を果たしてきた場所の力を存分に体感してください。
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シェーンブルン宮殿の前に広がる美しいフランス式庭園
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長さ約40メートル、幅約10メートルの大ギャラリーでは夜毎舞踏会や晩餐会が開催された
〈 ウィーン 貸切7 〉
世界無形文化遺産を
人気のカフェで体感
ウィーンのカフェ文化体験
芸術家や文豪が集った空間で1杯の香り高いコーヒーを
壮麗な内装が施された店内に大理石のテーブルと座り心地の良い椅子。優雅さをたたえながらも居心地の良いこれらの空間は、ウィーンのカフェに特有のものです。作家シュテファン・ツヴァイクが「世界のどこにもない特別な類の場所」と表現したこの街のカフェは、今も人々の生活に浸透しており、このカフェ文化は、2011年、世界無形文化遺産に登録されました。
今回の旅では、1899年創業の「カフェ・ミュージアム」の一室を貸切って皆さまだけの空間とします。クリムトら名だたる芸術家たちが集った老舗カフェで多彩なコーヒーメニューをお楽しみください。マリア・テレジアの名を冠したリキュール入りコーヒーをお試しいただくのも一興でしょう。
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創業1899年の老舗カフェ「カフェ・ミュージアム」でウィーンのカフェ文化を体感
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カフェのコーヒーメニューは多彩。グラスの水が添えられるのがウィーン式
文化の華咲く都プラハ&ウィーン
「7つの特別見学」を楽しむ
4コース
【Aコース】
華麗なるプラハ、ウィーンの旅 9日間
プラハとウィーンで「7つの特別見学」を楽しむ基本のコースです。「百塔の街」といわれるプラハは、そぞろ歩いているだけでも楽しい街。特別見学のほか、仕掛け時計で知られる旧市庁舎など、見どころが点在する旧市街広場周辺の散策を楽しむほか、城にほど近いストラホフ修道院も見学。修道院に備えられた美しい図書室は必見です。プラハからウィーンへの途上では、リヒテンシュタイン家の夏の離宮だった壮麗なレドニツェ城を観光し、チェコ第2の都市、ブルノに1泊します。プラハ同様、見どころの多いウィーンでは、街で最も高い塔をもつ聖シュテファン大聖堂や、バロック様式が美しいベルヴェデーレ宮殿などを見学。宮殿からはウィーンの街並みが眺望いただけます。
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ベルヴェデーレ宮殿からはウィーンの街並みが一望のもと
【Bコース】
ゆったり度3 プラハ、ウィーンの旅 9日間
余裕のある旅程で旅自体をじっくり楽しみたいという方のために、「ゆったり度3」のコースもご用意しました。「7つの特別見学」はAコースと同様にお楽しみいただきますが、プラハからは、寄り道をせずに高速列車で直接ウィーンに移動。これにより日程に余裕をもたせ、ウィーンではゆったり4連泊します。徒歩での移動を極力なくし、小型車やタクシーなどを利用する体にやさしい旅ですので、ゆっくりしたペースで旅を楽しみたい方、徒歩移動に自信のない方はぜひこのコースをお選びください。
【Cコース】
“ドナウの真珠”ブダペスト 国立歌劇場バレエ鑑賞 11日間
基本のAコースに加え、ハンガリーの首都ブダペストを訪れる旅です。ブダペストではドナウ河のほとりに建つホテルに2連泊。お部屋から美しい古都、ブダペストの街並みを眺望すれば、ここが「ドナウの真珠」と称される理由に合点がいくことでしょう。ブダペストではバレエを鑑賞します。舞姫と戦士の悲恋を描いた傑作『ラ・バヤデール』を国立歌劇場の1等席でお楽しみください。このコースでは、プラハからウィーンへの途上、世界遺産
にも登録されている美しい街、チェスキー・クルムロフに1泊、チェスキー・クルムロフ城などを見学します。日中は観光客で賑わう街も朝夕の時間帯は静けさに包まれます。この時間の散策は、旧市街のホテルに宿泊するこのコースならではの特典です。
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ハンガリー唯一の歌劇場である国立歌劇場でバレエを鑑賞
【Dコース】
ベルリン・フィル音楽鑑賞と古都ドレスデン 12日間
プラハを訪れる前にドイツに立ち寄り、首都ベルリンに2泊するコースです。ベルリンでは、ドイツの象徴、ブランデルブルク門やベルリンの壁などを訪れます。ベルリンでのハイライトは、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団によるコンサート。専用ホールの1等席で、山田和樹さん指揮の演奏を堪能ください。ベルリンからはシュプレーヴァルトに移動し、静かな森を小さな船でゆっくり進む運河クルーズをお楽しみいただきます。この日の宿泊は古都ドレスデン。このコースでは、基本の7つの特別見学はもちろん、Cコースと同様、プラハからウィーンへの途上でチェスキー・クルムロフに1泊し、城の見学などを楽しみます。
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ベルリン・フィルハーモニーによるコンサートを1等席で