世界各地のコンサートにでかけ、観光のみならず、ゆったりと上質な音楽を味わう「音楽の旅」。この夏は、1度は訪れたいザルツブルクや南仏、アメリカ東海岸などで世界有数の音楽祭を楽しみませんか。
秋には、5年に1度開催されるワルシャワのショパンコンクールも見逃せません。
夏のバカンスシーズンは世界各地で音楽祭が催されます。まずはセザンヌの生まれた南フランスのエクス・アン・プロヴァンス、そして地中海に面した公国モナコで開催される人気の高い2つの音楽祭をご紹介しましょう。
7月に開催される「エクス・アン・プロヴァンス音楽祭」。数ある演目のなかから、サー・サイモン・ラトル指揮、バイエルン放送交響楽団の演奏で、モーツァルトのオペラ『ドン・ジョヴァンニ』を鑑賞します。2023年秋にラトルが首席指揮者に就任したバイエルン放送交響楽団は音楽大国ドイツのトップオーケストラ。タイトルロールの『ドン・ジョヴァンニ』は、今注目の南チロル生まれのバリトン歌手アンドレ・シュエンが演じます。創立75周年を迎えたオーケストラと円熟の指揮者によるモーツァルトをお楽しみください。
もう一方は、モナコ大公宮殿の中庭で開催される「モナコ大公宮殿サマーナイトコンサート」。モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団による、ブラームスの交響曲第4番をメインに据えたドイツ・ロマン派のプログラムをお楽しみいただきます。2016年からモンテカルロ・フィルを率いるのは、人気実力とも兼ね備えた日本人指揮者・山田和樹。アルトゥールとルーカス・ユッセン兄弟のピアノデュオとオーケストラの共演も注目です。夜空の下、大公が住む宮殿の中庭で楽しむコンサートは特別な体験となることでしょう。
陽光降り注ぐ季節にプロヴァンスを訪れるなら、ゴッホやセザンヌなどポスト印象派の画家たちの足跡や彼らが描いた風景なども訪れたいところ。日中の観光では、アルルやエクス・アン・プロヴァンスで画家たちが描いた風景やゆかりの場所もめぐります。
北イタリア・ヴェローナ。この街のシンボルともいえるのが、ローマ時代に建設された円形闘技場「アレーナ・ディ・ヴェローナ」です。ここを会場にした壮大な野外オペラを鑑賞します。演目は古代エジプトを舞台にした『アイーダ』。1913年8月にこの会場で最初の演目となって以来、大変人気のある演目です。すり鉢状になった演奏会場は音の響きが良く、古代建築技術の高さを体感する貴重な機会ともなります。リラックスした雰囲気のなかで、夢のような夏の夜をお楽しみください。上演前には、通常は見ることのできないバックステージツアーにもご案内します。
そして国境を越えオーストリア、ザルツブルクへ。各国の著名人らも訪れるザルツブルク音楽祭では祝祭大劇場にて、フランツ・ウェルザー=メスト指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で、ブルックナーの交響曲第9番を鑑賞します。また、ご希望の方にはオプションとして、キリル・ペトレンコ指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団によるマーラー交響曲第9番もご用意しています。ブルックナーもマーラーもオーストリアを代表する作曲家で、壮大な交響曲を残しています。日本人にはなじみ深い作曲家ではないかもしれませんが、ヨーロッパを代表するオーケストラと指揮者による演奏で聴いてこその演目。心に響く音楽体験となることでしょう。1つの旅で演目も会場の趣も異なる音楽会を堪能できる贅沢な経験です。
イタリアではヴェローナへの道すがらワイナリーを訪問してお食事を楽しみ、ザルツブルクではモーツァルトの生家や、湖が点在するアルプスの景勝地ザルツカンマーグートへ。清涼な自然景観もお楽しみください。
小澤征爾が音楽監督として長く在席したボストン交響楽団が、夏に自然豊かなバークシャー地方のタングルウッドで開催する「タングルウッド音楽祭」。1937年、ボストン交響楽団の屋外コンサートがはじまりです。1986年には14歳だったバイオリニスト五嶋みどりが出演。演奏中に2回も弦が切れたたものの、即座に第1バイオリニストと楽器を交換、見事に演奏を終えたエピソード「タングルウッドの奇跡」でも有名です。
メイン会場はクーセヴィツキー・ミュージック・シェッド。壁のない屋根付きの開放的な演奏会場は、小鳥のさえずりが聞こえてくるような、美しい自然に囲まれています。屋外へと広がった「草原の席」では、聴衆が芝生にシートを広げて、リラックスして演奏を楽しんでいます。寛いだ雰囲気のなかでコンサートやピクニックランチを楽しみつつ、ぜひタングルウッドならではの雰囲気を満喫してください。
1日目にはエマニュエル・アックスのピアノで、映画音楽で有名なジョン・ウィリアムズ作曲のピアノ協奏曲とマーラーの交響曲第1番を。2日目はラン・ランのピアノでサン・サーンスのピアノ協奏曲第2番と、ベートーヴェンの交響曲第6番『田園』を堪能します。指揮はいずれも「世界で1番忙しい指揮者」といわれているアンドリス・ネルソンス(ボストン交響楽団音楽監督)です。
また、ボストンでハーバード大学や美術館などを訪れるほか、旅の後半にはニューヨークを訪れ、観光だけなくミュージカルもお楽しみいただきます。
ポーランドの首都ワルシャワで5年に1度、開催されるショパン国際ピアノコンクール。第1回は1927年に開催され、現存するピアノコンクールでは最も歴史があります。これまでマウリツィオ・ポリーニ、マルタ・アルゲリッチ、スタニスラフ・ブーニンら多くのスターを輩出してきました。前回2021年(コロナ感染症拡大のため1年延期)では、反田恭平が日本人最高位の2位になり、日本での注目がより高まりました。
3次まである予選を勝ち抜いたピアニストだけが出場するのがファイナル(本選)です。今回は、3日間にわたって繰り広げられるファイナルの1日を鑑賞します。課題曲は、ワルシャワ・フィルハーモニーとの共演でピアノ協奏曲1番または2番のうちの1曲に加え、今回から『幻想ポロネーズ』が追加されました。
会場にはファイナリストの家族らも集まり、2階席には審査員たちが並んでいます。演奏会とはまた違った張り詰めた空気のなか、ピアニストが魂を込めて奏でる音色には感動を禁じえません。次のコンクールは5年後。まさに貴重な体験となることでしょう。
この旅では、ワルシャワでショパン博物館などショパンゆかりの地をめぐるほか、シェラゾヴァ・ヴォラを訪れショパンの生家でのピアノコンサートも楽しみます。旅の後半にはパリへ。ショパンは若くしてポーランドを離れ、故郷を思いつつも最後はパリで生涯を閉じました。パリでは、ショパンが暮らした住居跡や葬儀が行われたマドレーヌ寺院、ペール・ラシェーズ墓地など、ショパン晩年の足跡もめぐります。