[ 海外特集④ ]

スペイン・ポルトガル、ギリシャ

優しい日射しに誘われて旅する

南ヨーロッパ

企画=南家知文/森脇潤/我満弘充/坂部由梨佳 文=大友園子
  • イメージ イメージ 世界が憧れるイアの夕景。白い街並みが夕陽に映える

ヨーロッパの南西端に位置するイベリア半島のスペイン・ポルトガル、エーゲ海に浮かぶギリシャ。文明が交差する濃厚な歴史が流れ、訪れるべき街や見どころが点在する訪問先です。日射しが和らぎ、日常を取り戻した秋はまさにベストシーズン。異国情緒たっぷりの南ヨーロッパへ出かけませんか。

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文明が交錯するスペイン
トレド、コルドバそしてグラナダ

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イスラム文化とキリスト教文化 交錯する文化が放つ歴史の光

北アフリカの砂漠の民が、イベリア半島にやってきたのは8世紀頃のことでした。それから約700年以上もの長きにわたり、この地はイスラム文化の影響を受けてきました。やがて北に追いやられていたキリスト教徒たちは、レコンキスタ(国土回復運動)により、徐々にイスラム勢力を南に追いやり、領土を回復していきます。イスラムの征服者が、異文化と信仰の自由に寛容だったこともあり、スペインをめぐれば、各地でキリスト教文化とイスラム文化が織り成した歴史が放つ、華麗な輝きに出あえます。

中部を流れるタホ河に囲まれた、小高い丘に築かれた古都トレド。およそ400年を経て、キリスト教徒の手に戻った街の中心に建てられたのが、スペイン・カトリックの総本山の大聖堂。内部には多くの金を用いた豪華絢爛な装飾が施され、なかでも採光窓「エル・トランスパレンテ」は一見の価値があります。キリスト教、イスラム教、そしてユダヤ教徒が暮らしたこの街のお土産には、シリアのダマスカスから伝わった伝統工芸品ダマスキナード(象嵌細工)などもおすすめです。

  • イメージ イメージ 中世都市トレド。エル・グレコの傑作も残る
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アンダルシアに残る歴史の美しい残照

スペイン南部アンダルシア地方のコルドバは、約280年間にわたりイスラム教徒による後ウマイヤ朝の都でした。最盛期の繁栄ぶりを伝えるのが大モスクのメスキータ。「円柱の森」と呼ばれる寺院内部は、大理石と赤れんがを交互に組み合わせた馬蹄形アーチが続き、見渡すと目がくらむよう。奥にはアラベスク模様が施されたミフラーブ(メッカの方向を示すくぼみ)があります。再びキリスト教徒の手に戻ったあとも、その見事さに破壊されることなく残りました。

  • イメージ イメージ コルドバのメスキータ。大理石と赤レンガでできた円柱が並ぶ「円柱の森」

13世紀半ばになるとイベリア半島のイスラム勢力の領土はナスル朝グラナダ王国のみとなりました。その栄華を伝えるのがアルハンブラ宮殿です。城内には貴族を中心に多くの人が暮らしていました。今も涼しげな水音が聞こえる王の居住空間だった場所では、随所にあしらわれたアラビア文字や、植物をモチーフにした優雅な装飾に魅了されます。他国からの訪問者が通された「大使の間」の装飾なども必見。また、夏の離宮ヘネラリフェの庭で、今も小さなアーチを描く噴水は、この地の高低差を利用してつくられたものです。

  • イメージ イメージ イベリア半島各地で繁栄したイスラム王朝の終焉の地となったアルハンブラ宮殿
  • イメージ 眺望も屋内の装飾もすばらしい、アルハンブラ宮殿まで徒歩圏のホテル「アルハンブラ・パレス」に滞在 ©Jean-Michel Brunet
  • イメージ グラナダの旧市街。イスラム時代の名残を感じる 迷路のような市場
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北の街から栄光のリスボンへ
ポルトガルの歴史を辿る旅

ポルトガル発祥の地からポルトガル国名発祥の地へ

ユーラシア大陸の最西端に位置するポルトガル。初代ポルトガル国王となったアフォンソ・エンリケスは、北部にある小さな街ギマランイスで誕生しました。小高い丘にある旧市街の入り口の壁には、「ここにポルトガル誕生す」と記されています。このギマランイスから、一筆書きに南下し、大航海時代に沸いた首都リスボンへと旅することで、ポルトガルの歴史も辿ることができます。

  • イメージ ギマランイスに残る初代ポルトガル国王アフォンソ・エンリケスの像
  • イメージ 坂の街リスボンで欠かせないケーブルカー

ギマランイスの南に、ポートワインで知られる港街ポルトがあります。もともと港町だったポルトはローマ時代には「カレ」、やがて「カレの港」を意味する「ポルトゥ・カレ」と呼ばれるようになります。この街はポルトガルの国名発祥の地。アフォンソ・エンリケスの父は、この地をイスラム教徒から奪回し、治めたフランス貴族のポルトゥ・カレ伯爵です。

  • イメージ イメージ 見どころが点在するポルト旧市街はミニバンを利用しお体にご負担なくめぐる
  • イメージ 手軽なお土産としても人気のあるポルトガルのコルク製品
  • イメージ 19世紀の宮殿を改装したリスボンのホテル「ぺスターナ・パレス」。優雅な滞在が楽しめる
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学生の街・古都コインブラから大航海時代を語る都リスボンへ

次に出あうのが中世の街並みが残る古都コインブラ。ポルトガル最古の大学がある街です。この街はポルトガルでのレコンキスタの最前線でした。コインブラを拠点にレコンキスタを進めたアフォンソ・エンリケスは、ポルトガル国王となり、この街を都と定めました。そして1249年、ポルトガルはスペインに先駆けてレコンキスタを終了。その後、都を港町リスボンへ移します。

15世紀、ポルトガルの大航海時代を開いたのは航海王子と呼ばれるエンリケでした。彼がアフリカ西海岸南下を指示し、インド航路への道筋を示します。エンリケ亡きあとも、スペインと競いつつ広げたアジアや南米との交易ルートにより、ポルトガルは莫大な富を得ることになります。今もリスボンの名所として知られる壮麗な装飾が施されたジェロニモス修道院や、ベレンの塔などが、当時の繁栄ぶりを伝えています。

  • イメージ イメージ 壮麗なジェロニモス修道院。ポルトガルの大航海時代の栄華を象徴する建築物
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エーゲ海に沈む夕日をゆったりと
ギリシャ・サントリーニ島

ヨーロッパ文明の源アテネのアクロポリス

エーゲ海に抱かれた国ギリシャ。ヨーロッパの根底を成すギリシャ文明発祥の地です。アクロポリスなど、 この文明が再び注目されるようになったのはルネッサンス期。9世紀以降、ヨーロッパで古代ギリシャのさまざまな価値が再評価されたからでした。こうしたギリシャならではの歴史的な見どころに加え、リゾートを楽しむ人々が訪れます。観光客が減り、日射しが和らぐ9月後半は、街歩きや遺跡めぐりにも適した季節。ギリシャならではの魅力を存分に味わうことができます。

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サントリーニ島とミコノス島2つの島でギリシャを満喫

観光の中心となるのはサントリーニ島。島の頂上に雪が積もったかのように見える白い街並みと青いドームを頂く教会の光景は、1度は目にしたいもの。そして、「エーゲ海に沈む夕日」もまた、この島を訪れる誰もが見たいと思う光景でしょう。しかし島内で、ゆっくりとその光景を楽しめる場所は、それほど多くはありません。夕景で有名な街イアには、夕刻ともなると眺めのよい道に人が集まり、どこも大変混み合います。刻々と表情を変えるイアの夕景を満喫するなら、やはり眺望自慢のレストランに席を取るのがおすすめです。誰もが見たいと望む、夕暮れのエーゲ海を眺めながらゆっくり楽しむお食事は、とびきり贅沢な思い出になります。

サントリーニ島での滞在を満喫したら、アテネに向かう前に、もう1カ所、ミコノス島に滞在してみてはいかがでしょう。サントリーニ島に比べると、何となくゆったりした雰囲気が漂うこの島では、風車があるカト・ミリ丘やカフェが並ぶ街の散策などをのんびりと楽しむのがおすすめ。散歩の途中、島の人気者のペリカンが人目を気にせず歩く姿を見かけるかもしれません。ビーチにも近く、心地の良いホテルに滞在して、時間を気にすることなく過ごしてみましょう。滞在中は、アポロンとアルテミス誕生の島デロス島にでかけてみるも良いですし、静かなビーチで何もしないで過ごした時間も、意外に思い出になるものです。

  • イメージ イメージ 空も海も消え暗闇に浮き上がるサントリーニ島の夜景も外せない
  • イメージ サントリーニ島の青いドームの教会とエーゲ海。どこから見ても絵になる景観
  • イメージ ミコノス島の中心地ミコノスタウン。しゃれたカフェや静かなビーチで気ままに過ごすのもおすすめ
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