アンが「輝く湖水」と名付けた風が渡る美しい池
1908年にアメリカで出版された『赤毛のアン』が日本で出版されたのは戦後間もない1952年。この物語は当時少女の間で熱狂的に愛読され、100年以上経た現在もなお世界中で読み継がれ続けています。読む者に勇気と希望を与えてくれる物語が生まれた島へ、アンを探しに行きませんか?
物語の舞台となったのは、カナダ東部セントローレンス湾に浮かぶプリンス・エドワード島。弧を描く3日月の形から、先住民に「波間に浮かぶゆりかご」と呼ばれていました。島には鉄分を多く含む肥沃な土の赤、穏やかな海と澄み渡る空の青、風に揺れる草地の緑のコントラストが美しい、絵ハガキのような風景が続きます。そして、春から秋まで次々と咲く花が訪れる者の目を楽しませてくれるのです。
プリンス・エドワード島の代表的な景色、漁村フレンチリバー
今年の新発表で大盛況だったプリンス・エドワード島の旅。来年は、気候が心地良い、アンが名付けた「歓喜の白路」を思わせるリンゴの並木が花盛りになる5月末と、秋の訪れを告げるゴールデンロッドやアスターが咲く8月末と9月初旬にご案内します。旅のはじまりはアンと同じように、フェリーで島へ上陸。島の北部にある物語の舞台アヴォンリー村のモデルとなったキャベンディッシュ村を訪れます。
アンがはじめて島にやってきた時にも白い花を咲かせていたリンゴの木
まずは、2019年にリニューアルした「グリーン・ゲイブルズ・ヘリテージ・プレイス」へ。ビジター・センターには作者モンゴメリの生涯が数多くの写真や書簡で紹介されており、見ごたえがあります。世界各国で刊行された『赤毛のアン』の表紙や、彼女が撮った島の写真、本人のものといわれるタイプライターも展示されています。「緑の切妻屋根の家」のモデルとなったグリーン・ゲイブルズ・ハウスは、物語に合わせて当時の様子を再現しています。内部は部屋ごとに違う花柄の壁紙が貼られ、ビクトリア調のインテリアでまとめられています。2階には白を基調としたかわいらしいアンの部屋があり、マシュウがプレゼントしたパフスリーブのワンピースなど、物語ゆかりの品々がさりげなく置かれています。物語のなかのアンが、まるで本当に暮らしていたかのような錯覚に陥ってしまいそうです。
物語に登場するアンが暮らした家のモデルとなったグリーン・ゲイブルズ・ハウス
グリーン・ゲイブルズ・ハウス内は、まるでアンがそこに暮らしているかのように再現されている
周辺にはアンが名前を付けた緑のトンネルが続く「恋人の小径」や薄暗い「お化けの森」のほか、彼女が愛した世界がさまざまに広がります。アンをイメージしたかわいい消印を押してくれるグリーン・ゲイブルズ郵便局。モンゴメリがオルガン奏者を務めていたキャベンディッシュ合同教会。彼女が結婚式を挙げたグリーン・ゲイブルズ博物館。アンが「輝く湖水」と名付けた博物館の近くの池。ウエディングドレス(複製)が展示されているモンゴメリの生家や、ブロンズ像、お墓、教鞭をとっていたローワーべデック学校など、モンゴメリゆかりの地も訪問します。さらに、三つ編みの赤毛のカツラ、麦わら帽子にエプロンドレスという本格的なアンの扮装で記念撮影ができる施設にもご案内します。
農業、漁業ともに盛んで“カナダの美食の島”と称されるこの島は、ベリー類や生産量カナダ一のじゃがいもなどの農作物や、酪農も盛んで乳製品も自慢です。特に有名なのがロブスター。バターソースでいただく新鮮で甘くぷりぷりの身をお楽しみいただきます。
木々の緑がまばゆい赤土の「恋人の小径」は物語の世界に誘う
作者モンゴメリが教壇に立ったサマー・サイドの
ローワーベデック学校
島を代表する名産のロブスターは肉厚で甘みたっぷりの芳醇な味
ご宿泊はキャベンディッシュの中心にある1986年創業の「キンドレッド・スピリッツ・イン&コテージ」。グリーン・ゲイブルズから最も近い場所にある人気のホテルです。「キンドレッド・スピリッツ」とは『赤毛のアン』(村岡花子訳)のなかで「腹心の友」の意味。そう、アンと親友のダイアナのことです。エアコン、バスタブ付きの雰囲気のあるお部屋に2連泊します。ホテルの裏手からゴルフ場を横切って徒歩3分ほどでグリーン・ゲイブルズに到着します。滞在中は朝食前にお散歩はいかがでしょう。観光客が集まる前の静かなグリーン・ゲイブルズを、どうぞアンになった気分でお過ごしください。夕暮れ時もおすすめです。
グリーン・ゲイブルズから徒歩約3分の立地「キンドレッド・スピリッツ・イン&コテージ」