雄大なグランドキャニオンを一望する「マーサーポイント展望台」
アメリカの大自然は、地球の記憶そのもの。幾億年という時をかけて、大地が刻んだドラマには、誰もが息を呑むに違いありません。そんなアメリカ合衆国の名だたる絶景ポイントを、西部、北西部、アラスカの3つのエリアに分けてご紹介しましょう。
まず、西部で圧巻の存在感を放つのが「グランドキャニオン国立公園」です。コロラド河の浸食によって、2億年を超える地層が幾重にも重なる大峡谷は、赤や橙、褐色の岩肌が果てしなく続きます。その壮大なスケールと静寂が織り成す光景は、地球が積み重ねた悠久の時間を感じさせる別世界。「マーサーポイント展望台」などからの鮮やかな朝焼けと夕景は、刻一刻と表情を変えながら、まるで大地が呼吸するような輝きで満たされます。
また、ユタ州東部に位置するモアブの街にほど近い「アーチーズ国立公園」は、長年にわたる風と雨が刻み出した、2,000を超える天然の岩のアーチが有名です。その情景は、あたかも大自然の彫刻庭園のよう。孤立するデリケートアーチや最長のランドスケープアーチ、絶妙なバランスロックなど、数々の奇岩に目を奪われます。さらに、南へ進んだ荒野のなかにそびえ立つ、巨大な岩丘群のパノラマビューが「モニュメントバレー」です。“アメリカの原風景”ともいわれる一帯は、先住民族であるナバホ族の居留地。約5,000万年の時を経て形づくられた、高さ約300メートルにもおよぶ岩丘は、まさに大地のモニュメントと呼ぶにふさわしい威容といっていいでしょう。その、どこまでも続く荒涼とした世界は、『駅馬車』、『イージー・ライダー』、『フォレスト・ガンプ』といった、さまざまな映画の舞台にもなっています。同じユタ州南部の「ブライスキャニオン国立公園」で見られる、「フードゥー」と呼ばれる尖塔群も、地球とは思えない不思議な景観です。眼下の谷底に広がる、巨大な尖塔のパノラマをご満喫ください。
アーチーズ国立公園で最長の弧を描く「ランドスケープアーチ」
赤土の大地に巨岩群がそびえる「モニュメントバレー」
岩山が背後に迫り、敷地内からモニュメントバレーの絶景を望む「グールディングス・ロッジ」
谷底に立ち並ぶ奇怪な尖塔の数々を見下ろせる「ブライスキャニオン国立公園」
ユタ州からアリゾナ州に入ってすぐのペイジ近郊にある渓谷群が「アンテロープキャニオン」。ここもナバホ族の居留地内にあり、1997年に一般公開されました。深さ30メートルを超える切り立った砂岩の壁には、風と水が刻んだ、うねるような模様が浮かびあがります。この渓谷内は、太陽光の差し込み方によって、景色が劇的に変化するのがポイント。特に、太陽が横から岩盤を照らす午前中は、光と影に彩られた大自然のアートのような光景を最大限に楽しめます。また、アンテロープキャニオンと同じく、ペイジが拠点となる「レイクパウエル」は、コロラド河をせきとめて造られた、1周約3,000キロの人造湖。レンガ色の大峡谷上部と、青く澄んだ湖面が織り成す静かなコントラストは、いつまでも心に残る風景です。
差し込む太陽光が褐色の岩を赤く染める「アンテロープキャニオン」
映画『猿の惑星』のロケ地としても有名な「レイクパウエル」
カルフォルニア州中部、シエラネバダ山脈のほぼ中央に広がる「ヨセミテ国立公園」も、アメリカを代表する自然遺産として知られるところ。1890年に国立公園に指定され、土地の約九割が手付かずの自然のまま保たれているのが特徴です。その花崗岩の渓谷全体を見渡せる、絶景ポイントの1つが「トンネルビュー」。正面に、世界最大の花崗岩の1枚岩といわれる「エルキャピタン」、右手に高さ約188メートルの優美な「ブライダルベール滝」、奥には世界中からロッククライマーが集まる「ハーフドーム」がそびえ、ヨセミテを象徴する大パノラマが広がります。
ロッキー山脈やシエラネバダ山脈を越える大自然のなかのルートが魅力の、大陸横断鉄道アムトラック「カルフォルニアの風」
氷河によって円頂形の半分が削り取られたといわれる、ヨセミテ国立公園の「ハーフドーム」
マーセド河の静かな流れや花崗岩の断崖を望みながら、森と草原をゆったり歩く、ヨセミテ渓谷のハイキングコース「バレーループトレイル」。時にはミュールジカなどの動物が姿を見せることも
1872年に世界初の国立公園に制定された「イエローストーン国立公園」も、アメリカを代表する絶景ポイントの1つです。ワイオミング州北西部を中心とする広大な地熱地帯には、約1万カ所におよぶ温泉や間欠泉などが点在し、地球のエネルギーを間近で感じることができます。なかでも美しさが際立つのは、アメリカ最大の熱水泉である「グランド・プリズマティック・スプリング」。ここは2つの方法で見学するのがおすすめです。1つは、すぐ横の遊歩道を歩いて、湯気の合間から、熱水の流れや微生物による色彩の変化を間近に観察できるルート。もう1つは、丘の上の展望台から、虹色のグラデーションを見下ろすルートです。一方、同じワイオミング州にある「グランドティトン国立公園」は、静謐な荘厳さに包まれる山岳地帯。雪を頂くティトン山脈が麗しい湖面に映る情景は、まるで時が止まったかのような静けさです。
ティトン山脈を眺めながらのんびりと散策する時間も贅沢なひと時
噴き上がる間欠泉と色鮮やかな熱水泉。原始の地球を思わせる「イエローストーン国立公園」
ダイナミックなアメリカの大自然を体感するなら、山岳、氷河、海、野生動物が1つにつながるアラスカもおすすめです。まず訪れたいのが、水上飛行機でアクセスする「カトマイ国立公園」。ベアウォッチングの聖地として知られ、9月上旬から中旬にかけては、滝壺に豪快に飛び込み、サケを捕らえるヒグマの姿を間近で観察できます。また、北米最高峰のマッキンリー山を擁する「デナリ国立公園」も見逃せません。セスナによる遊覧飛行では、白銀の山脈と氷河の谷が一望でき、雲の合間に現れるマッキンリー山の神々しさには、誰もが言葉を失うことでしょう。そして、「キーナイ・フィヨルド国立公園」の氷河クルーズでは、氷塊が崩れ落ちる轟音が静寂を切り裂く瞬間や、ラッコ、アザラシなどの動物に出あえるかもしれません。悠久の時間と壮大な自然の営みが息づく極北の地では、命がひときわ輝きます。
「カトマイ国立公園」の滝壺に立ち、サケを狙う巨大なヒグマたち
青く輝く氷河の海をめぐる、「キーナイ・フィヨルド」のクルーズ船
氷河の谷を越え、白銀の峰々を望む、「デナリ国立公園」の遊覧飛行
今年2025年、ニューヨークは、前身の街「ニューアムステルダム」の建設から400年という記念の年でした。花崗岩の上に建った大都市では、超高層ビルが林立する煌びやかな街並みのなかに、「セント・パトリック教会」などの石造りの建造物が時折姿を見せてくれます。そんな街を上空から一望できる新しい展望台が、2021年に完成した「サミット・ワン・ヴァンダービルト」です。地上約300メートルの高さから眺める夕景や夜景は、これぞ摩天楼というゴージャスさ。まるで天蓋の星々が地上に降り注いだかのようでした。パソコンを抱えて急ぎ足で歩く人、大きな犬を連れてセントラルパークを散歩する人、スマホ片手にキャリーケースを引っ張る人……都会の喧騒のなかに溶け込む日常と観光は、私たちが日頃イメージするニューヨークらしさそのものです。そんな風景をカフェで眺めながら過ごすのも楽しみですが、生涯で40作品に満たない寡作な画家・フェルメールの8作品を見られるのもこの街ならでは。そのうちの5点が「メトロポリタン美術館」に、3点が「フリックコレクション」に所蔵されています。
アメリカ経済の中心がニューヨークなら、政治の中心はワシントンD.C.。「ナショナルギャラリー」でもフェルメール作品を鑑賞でき、独立宣言が採択されたフィラデルフィアにある「バーンズコレクション」では印象派の作品が所狭しと並べられています。来年、1776年の独立宣言から250年となる記念すべき年に、建国の歴史を刻むアメリカ東部3都市を訪ねてみませんか。
「サミット・ワン・ヴァンダービルト」からのニューヨークの夜景
「メトロポリタン美術館」のフェルメール作品
フェリーから眺める、リバティ島の「自由の女神像」