秋の深まる時季に富士山を訪ねて東へ向かい、絶景ホテルと、名門クラシックホテルに滞在いただく旅をご紹介します。日々の喧騒を忘れ、きめ細かなおもてなしと贅沢な空間で、上質な時間をお過ごしください。
標高約300メートルの丘陵地に位置する「日本平ホテル」は“風景美術館”と呼ばれています。到着してまず、天井まで全面ガラス張りの巨大な窓から、一幅の絵画のような富士山と三保松原、駿河湾の大パノラマを眼前に望めます。
時間の経過ごとに表情を変える富士山は、客室の窓と広いバルコニーからご堪能ください。宿泊するからこそ見られる「日本夜景遺産」に認定された日本平の夜の景色もお楽しみいただけます。
「富士屋ホテル」は、1878(明治11)年に外国人向けホテルとして創業した日本初の本格的なリゾートホテル。改修工事を終え、和洋折衷の斬新な建物群はそのままに、宮ノ下温泉の源泉を引いた大浴場や、宿泊者専用ラウンジなど新たな魅力も加わりました。
なかでも目を引くのは、日光東照宮本殿をモデルに設計されたメインダイニング。豪華な格(ごう)天井には高山植物や野鳥が描かれています。郷愁を誘う空間のなかでご賞味いただくのは創業当時のレシピを受け継ぐ、洗練されたフランス料理。かつて上流階級の社交場だったことを感じられるひと時です。庭園では、美しい紅葉も見られることでしょう。
それぞれに特色をもった2つのホテルでの滞在をお楽しみください。
次は天草と雲仙を訪ねて西へ向かう旅です。まずは熊本城へご案内。復旧工事が完了した天守閣内部を見学します。
そして旅のハイライトの1つ、JR九州の観光列車「A列車で行こう」に乗車します。車内は16世紀に天草に伝わった南蛮文化をテーマとした、色鮮やかなステンドグラスで彩られています。BGMは旅情を深める軽快なジャズが流れ、車窓からは有明海と雲仙岳を一望できます。バーカウンターでドリンクを片手に、映画のワンシーンのような列車の旅をお楽しみいただくのも一興です。
天草北部の通詞(つうじ)島沖合に、世界的にも珍しい、定住する野生のミナミハンドウイルカが回遊しています。その数200頭ほど。この地域のイルカウォッチングは、1年を通じて90パーセント以上の高い確率で見ることができます。専門ガイドとともに、空調が完備された快適な船内でゆったりと、2時間のクルーズをお楽しみください。
さらにフェリーで島原半島へ上陸し、日本初の国立公園に指定された雲仙へ。雲仙は良質な温泉に恵まれ、明治時代から外国人避暑地として親しまれてきた高原リゾートです。宿泊は九州で唯一のクラシックホテル「雲仙観光ホテル」。1935(昭和10)年に外国人向けの洋風のホテルとして開業、現在は登録有形文化財に指定されています。2004年から約5年かけて改修されました。
外観はスイスの山小屋風建築で、館内は客船をイメージしたデザインでまとめられています。客室はゆったりと広く、照明や天井の梁など洋館の趣を味わいながら、クラシックホテルならではの滞在をお楽しみいただけます。アールデコ調の露天風呂付き天然温泉の大浴場もあり、ゆっくり寛げます。メインダイニングは柱のない200畳の大広間。旬のこだわり食材を地元から厳選した、伝統的なフランス料理をいただきます。翌日には雲仙天草国立公園の360度の大パノラマを空中から満喫できる「雲仙ロープウェイ」と、天草四郎の絵など、キリシタン資料館として公開されている「島原城」へご案内し、見どころが多岐にわたる旅を締めくくります。