[ こだわりの旅② ]

飛騨の奥深い魅力を
「美食と匠の世界」から再発見

「オーベルジュ玄珠」がつなぐ
人と大地の物語

企画=江頭啓太郎 文=槙原有希
  • イメージ イメージ 飛騨山裾に佇む「オーベルジュ玄珠」。大地から盛り上がるような設計は、周囲の自然との調和を保ちながら積雪対策も兼ねる
  • イメージ 「オーベルジュ玄珠」シェフ 早川直樹さん
  • イメージ ジビエ猟師 元満真道さん
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「身土不二」を志す滋味深い郷土料理を味わう

空海が弟子に寄せた「山水を経て、玄珠を瑩く」という詩から名をとった「オーベルジュ玄珠」。この美食の宿がある飛騨地方は、名だたる観光地が点在する人気のエリアですが、一歩踏み込んだ視点を持って訪れると、気づかなかったこの土地の魅力を再発見できる旅となります。

ご案内するコースは、「美食と匠の世界」から飛騨の豊かな自然と食を体感する、5組限定の旅。郡上八幡から高山市街までをつなぐ紅葉の景勝道路「せせらぎ街道」沿いに2020年に誕生した「オーベルジュ玄珠」に連泊します。シェフを務める早川直樹さんに、名前の由来や「オーベルジュ玄珠」の食のこだわりを伺いました。

「この名には、訪れた人が身土不二の食を楽しみ、ゆったりとした時間をお過ごしいただくことで、自然と一体となる透明な境地になり、心身ともに本来の自分に還る場所にしたいという想いが込められています」。

ダイニングでは、清らかな川に恵まれた鮎や岩魚、豊かな森で育った鹿、猪などのジビエ、季節の山菜や野草など、この地域ならではの食材を使った旬の郷土料理を味わえます。人間の体と土地は切り離すことはできず、その地でとれた旬のものを味わうことが命を育むという「身土不二」を志すお食事です。

早川シェフは、東京?兆本店で約10年修業した後、パリ、バンコクなどの日本大使館で研鑽を積んだ経歴を持ち、常に最善の食材を探すことに心を砕いてきたといいます。その早川シェフがこの地で出あい、心底惚れ込んだ「とびきりの力強い食材」を使った和食は、滋味深い味わいです。

  • イメージ イメージ シンプルモダンで快適な空間が広がるダイニング
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紅葉する飛騨の山に囲まれ自然と一体化する時間を

「オーベルジュ玄珠」では食材を届けてくれる生産者とのつながりを大切にしています。早川シェフは、生産者の方から直に聞く話には料理づくりへのヒントがあふれていると言います。

「ジビエの調達をお願いしている地元の猟師、元満真道(もとみつしんどう)さんからは、鹿がどんなものを食べて育っているのかを聞き、その食材と鹿肉を組み合わせたひと皿を考案したこともあります。彼女が提供するジビエはとにかく品質が高い。季節によって変わる肉そのものの味を邪魔しない調理法を考え、余すところなく使わせていただいています」。

  • イメージ イメージ 元満さんのジビエから、早川シェフが繊細な和食を生み出す

元満さんは、自給力を高め理想とする生活がしたいという願いから飛騨へ移住した女性です。

「ジビエ猟師になるきっかけは、捕獲された動物が活かされない現状を目の当たりにして衝撃を受けたことでした」と元満さんは語ります。「おいしくいただくことが一番の供養」と考える元満さんは、「命をいただく」ということを実感する日々を送っています。この旅では、初日の夕食での歓談、2日目の朝に予定された山のお散歩を元満さんとご一緒いただきます。

「この地域にはダムがないので、清き水に山の栄養分が川に流れ込みます。ドングリなどの木の実や山菜なども育ちやすく、それが生物の多様性につながり、滋味深い味が生まれます。川のせせらぎや鳥のさえずりを聞いたり、満天の星を見上げると、何物にも代えがたい圧倒的な大自然を感じます。10月下旬から翌月にかけての飛騨の山(森)のなかは“自然界のすべての色という色がここにある”と思えるほど、美しい季節です。山のなかで土の匂いを感じ、自然と一体化する時間を過ごしていただきたいですね」。

ぜひ、美食から広がる知られざる世界をご堪能ください。

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企画担当・江頭啓太郎より皆さまへ
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この飛騨の旅は、「観光地としての魅力以上に土地そのものの良さを伝えられる旅をつくりたい」との思いから企画したものです。今回のツアーの核となるオーベルジュ玄珠は、半径50キロ以内の食材のみを使い、家具や内装も可能な限り飛騨の職人が設えた宿。企画づくりの際には、ジビエ猟師の元満さんをはじめ、宿に携わった職人の方々をなんと20名以上もご紹介いただき、飛騨に対するオーナーの深い愛情を感じました。また、オーベルジュという名のとおり、食へのこだわりが詰まった宿ですが、料理並んで私が感動したのは夜の風景。頭上には満点の星が広がります。ここは贅を尽くした宿ではありませんが、「贅沢なひと時を与えてくれる宿」でした。