冬の楽しみというと、やはり温泉や雪景色を思い浮べることが多いでしょう。そして、冬の夜に輝きを増す満天の星々は、冬にこそ楽しみたいものの1つです。この冬、凛とした空気のなか、無理なく星空を満喫する旅に出かけてみませんか。日常を少し離れ、ぜひ思い出に残る時間をお過ごしください。
冬にこそこの目にしたい星々の輝き
晴天率が高く空気の澄んだ冬は、星々がその輝きを一段と増す季節です。冬の星座を象徴する星座の1つオリオン座。ふと見上げた南の空で青く輝くリゲルや3つ星などに、季節を感じられる方もいらっしゃるでしょう。都会でも星を眺めることはできますが、街明かりに邪魔されることなく満天の星を眺めるなら、やはり標高の高い場所がおすすめ。凛とした空気のなか、普段は目にすることのない星々の姿を存分にご覧いただけることでしょう。
冬の星空を楽しむ旅、まずご紹介するのは長野県駒ヶ岳「千畳敷カール」で見る星空です。「千畳敷カール」は、遥か昔の氷河期にできた大きなU字谷。年間を通じて運行する「駒ヶ岳ロープウェイ」を利用して訪れます。乗車するしらび平駅(標高約1,662メートル)と終点の千畳敷駅までの高低差が約950メートルほどあり、到着する千畳敷駅は日本一標高が高い「日本最高所駅」。下車と同時に山並みが一望できます。夏から秋にかけて混み合うこともありますが、この時期の利用客は、ほぼ「ホテル千畳敷」に宿泊する人だけです。
日本初の山岳ロープウェイ「駒ヶ岳ロープウェイ」で千畳敷へ
雪景色の千畳敷カールと標高約3,000メートルに迫る中央アルプスの山々の景観を楽しみつつ、唯一の宿泊施設の「ホテル千畳敷」へ向かいます。標高約2,600メートルに建つこのホテルは、登山客も利用する千畳敷カール唯一の宿泊施設。客室にバス・化粧室はついていませんが、広いテラスからは、千畳敷カールや周囲の山々が織り成す雄大な景観を一望にできます。訪れる人が少ない時期なので混み合うことはほぼありません。目の前に広がる真っ白な冬の山並みと大空の雄大な風景を心行くまでお楽しみいただけます。
夜の帳が下りると、満天の星々が輝きはじめます。周囲に街明かりは一切ありません。空一杯の星々が輝くさまはまさに圧巻。日常を忘れる瞬間といってもよいでしょう。こうした絶景は、ホテルのテラスや建物のすぐそばで眺めることができます。冷えてきたら屋内に戻り、少し経ったらまた外に出て星を眺めるなど、気軽に冬の星空を満喫することができます。日常生活では見ることのできない夜空の景観を、時間や周囲の環境に気にせず安心して堪能できるのは、なんとも贅沢なひと時。星が落ちてくるような夜空の下、「ここまでやってきてよかった」と心から感じられることでしょう。
「ホテル千畳敷」は、標高約2,612メートルの高所にあるため、人工の明かりを気にせず満天の星を眺めることができる
壮大な雲海やアルプスの山々にのぼる朝日も宿泊した人だけが目にする光景
目の前をさえぎるものがない「ホテル千畳敷」のテラス。日中は雄大なカール地形などを眺めながらのんびりできる
翌日は「かたくらシルクホテル」に宿泊。露天風呂付きのゆったりした客室で寛いだ滞在をお楽しみください。
標高約2,000メートルを超える山々が連なる八ヶ岳連峰。標高が高く、空気も乾燥して気温も低いため、星がより鮮やかに見られる場所として知られています。「八ヶ岳高原ロッジ」のある野辺山高原は、天文学者が選ぶ「日本で一番綺麗な星空ベスト3」として、「日本三選星名所」にも選ばれています。そして、「八ヶ岳高原ロッジ」は上質な音楽イベントなどでも知られる宿泊施設。今回は、定評のあるこの「八ヶ岳ロッジ」に宿泊して、星景写真家・有賀哲夫さんの解説とともに冬ならではの星座観察を楽しむ「スターライトベストフォト・星空観望会」に参加します。日時限定でのイベントで人気の催しです。
当日は、星の撮影経験豊富な有賀さんから写真の撮り方などの解説を聞いたのち、実際に「八ヶ岳高原ロッジ」エントランス前で星を観察します。周辺には、人工の明かりや建物がないので、遠くまで移動することなく、エントランスを出てすぐの場所で、照明を落とし星空観察ができます。屋外でも15分程度のレクチャーがあり、全体で約1時間、ほぼ歩くことなく冬の八ヶ岳ならではの星空観察が楽しめます。この機会に星空の撮影にチャレンジしてみるのもおすすめです。満天の星々の下で、専門家から星にまつわるお話を聞くのも楽しく、とても贅沢なひと時。あっという間に時が過ぎます。
「八ヶ岳高原ロッジ」エントランス前で行われる「星空観望会」。星景写真家・有賀哲夫さんの解説を聞きながら星々を満喫する
日本有数の星空を眺めた翌朝は、無理なく少しゆっくりしてから出発します。ホテルフロントからは八ヶ岳連峰最高峰の「赤岳」をご覧いただけます。冷えた空気のなかで眺める朝日に輝く白い山々の姿も、また旅の大切な思い出となります。刻々と表情を変える山岳風景を、ぜひ目に焼き付けておきましょう。
帰路の途中、創業300年、「七賢」で知られる山梨銘醸株式会社に立ち寄ります。1880年(明治13年)、明治天皇の山梨・三重・京都御巡幸に際し、七賢の母屋の奥座敷が「行在所」に指定されました。今回は当時のまま大切に保存されている「行在所」も見学します。
「八ヶ岳高原ロッジ」のフロントから見る雪景色の赤岳。空の青さに白い山並みが際立つ
長野県阿智村は、2006年(平成18年)環境省による全国星空継続観察で「星がもっとも輝いて見える場所」として認定されました。もともとスキー場として知られていましたが、すばらしい星空が評判となり、多くの人が訪れるようになりました。やがて星空を楽しむお客さまのために、夜も快適なゴンドラを運行。山頂まで快適に行け、星空も漫喫できると評判です。
現在は星空を楽しみに訪れる方のために、「星空ナイトツアー」が催されています。参加者は全長約2,500メートル、高低差約600メートル、所要時間約15分のゴンドラで街の光が届かない山頂まで登り、星空をお楽しみいただくイベントです。星空の下で、座り心地の良いアウトドア向けのリクライニングチェアを利用して、楽な姿勢で寛ぎながら星々が瞬く夜空を満喫。ほかにも、常設されている天体望遠鏡で月面観察や惑星観察にチャレンジすることもできます。
宿泊先の「石苔亭いしだ」からゴンドラ乗り場へはジャンボタクシーで向かいます。星空を満喫したあとは、お宿のとろりとしたお湯が評判の温泉で温まりましょう。
ゴンドラに乗って約15分。標高約1,400メートルで行われる「星空ナイトツアー」に参加する
※「スターライトベストフォト・星空観望会」は雨天の場合、有賀さんの珍しい星景 画像の数々を解説とともにご案内します。