ひと味違う感動体験が待つ「憧の旅」では、この春、伝統工芸の第一人者を訪ねる新企画がスタート。第一弾は、2人の匠と出あう旅です。古都奈良の文化を、“触れる事のできる芸術 使う事のできるモノ”としてプロデュースする「なら工藝館」との共同企画により、好奇心を豊かに満たしてくれる2日間をお贈りします。
鳥のさえずりと、清らかなせせらぎ。静かな里山にある工房で、カツン、カツンと、のみの音が響き渡ります。木を削るのではなく、「取る」と表現する、奈良一刀彫の第一人者・荒木義人さん。木が少しずつ表情を変え、やがてそのなかから生命が現れる瞬間を目の当たりにできる、何とも贅沢なひと時です。
日本を代表する工芸作家として高い評価を得ている荒木さんの名に、なじみのある方も多いことでしょう。日本橋三越本店のひな人形展でも毎年出品され、あっという間に完売となるほどの人気を誇りますが、実は工房でツアーの見学を受け入れるのは今回がはじめてとのこと。三越伊勢丹ニッコウトラベルのお客さまということで、特別に許可をいただくことができました。
お正月、ひな祭り、端午の節句などの祝いごとを彩る荒木義人さんの作品は、古都の暮らしに深く根づいている
1つひとつの作品は、その名のとおり一刀ごとの軌跡を残した大胆な面が魅力です。「面の構成が的確であれば、細かく彫るよりもずっと生き生きする。それが一刀彫の目指すところ」と、荒木さんは語ります。ひたむきな想いが込められている、生命力に満ちた躍動感と温かみ。彩色も含めてすっきりと研ぎ澄まされた表現ならではの、見る人の想像力を豊かに広げてくれる存在感です。
およそ900年の歴史を持つ奈良一刀彫の原点は、春日大社の祭礼に奉納する人形といわれています。彫跡が残る仕上がりは、人の手を極力加えていない、神事にふさわしい清浄さの象徴なのだとか。ツアーの1日目は、奈良一刀彫と縁の深いこの春日大社を参拝していただきます。名立たる戦国武将や将軍が奉納した釣燈籠が約1,000基並ぶ回廊など、壮麗な社殿での静謐な空気に包まれるひと時も、忘れ得ぬ体験となることでしょう。
世界遺産の春日大社では、中門や御廊、御本殿を参拝
白い素地に織り成される、四季折々の藍色。穏やかなグラデーションで描き出される染付(そめつけ)は、心をそっと澄み渡らせるような美しさです。旅の2日目は、日本橋三越本店で個展を開催するたびに絶大な人気を誇る、陶芸作家・本多亜弥さんの工房を訪ねます。
多くの人をひきつけて止まないのが、風に揺れる花びらや葉を思わせる、本多さんならではの絵付けの瑞々しさ。これは太い筆に顔料をたっぷりと含ませ、指先でスポイトのように巧みに操りながら染め付ける「濃(だ)み」という伝統技法によるもので、単に塗るだけでは決して描くことのできない、繊細な濃淡が表現されています。
器を傾けて流れる色を導いたり、逆に筆にそっと吸い取らせたりしながら生み出されていく、藍の世界。工房では、一瞬たりとも目が離せない貴重なその技を披露していただくとともに、さまざまな制作秘話も伺います。貴重なこの機会を、ぜひご堪能ください。
皿やコーヒーカップなど日常を彩る器のほか、茶道具、時計まで、幅広いジャンルの作品を生み出している本多さん。さらに染付作家としては珍しく自らろくろを操り、素地に彫りを施す「染付彫」と名付けた器も発表しています。どこまでも繊細でありながら、凛とした美しさを放つ作品の佇まい。それは、伝統をしっかりと受け継ぎながらも新たなスタイルに挑戦し続ける、本多さんの生き方そのものといえるかも知れません。
顔料をたっぷりと含ませた太い筆を、巧みに操る本多亜弥さん。モダンかつ繊細な染付の美に魅了される
荒木さんと本多さんの作品は、工房見学のあとに立ち寄る「なら工藝館」でもご覧いただけます。奈良のさまざまな伝統工芸品が展示された空間を、ぜひお楽しみください。
2日目には、匠を訪ねる旅の締めくくりにふさわしく、奈良公園近くの名店「夢窓庵」でのご昼食をご用意しています。世界的グルメ雑誌で高く評価される本格懐石料理の美味はもちろんのこと、静寂に包まれた約300坪の見事な庭園、全国から取り寄せたこだわりの器も、旅の楽しみを豊かに彩ってくれることでしょう。
芸術として鑑賞するだけではない、作家の深い想いにじっくりとふれることのできる2日間。心華やぐ春にぴったりの体験が待つ奈良の旅へ、ぜひお出かけください。
季節を告げる日本庭園と、こだわりの器を愛でながら、「夢窓庵」で懐石料理のご昼食