[ クローズアップ ]
艶やかな京の錦秋を訪ねて
企画=伊藤麻美子/大川喜史
文=吉田千尋
華やかに、時には静かに、さまざまな姿で語りかけてくる紅葉。その豊かな表情を味わえる、京都の旅をご用意しました。
「殊の旅」からは、艶やかにライトアップされた紅葉と名刹を訪ねる旅。「和の旅」からは、雲海のような紅葉や床もみじなど、多彩な美しさを堪能する旅。
どちらも歩く時間は少なめに、そして、訪ねる名所はたっぷりと。澄み切った空気のなかで、まだ見ぬ錦秋が待っています。
〈 殊の旅 〉
灯りに浮かぶ紅葉と名刹。
幽玄の世界に誘われて
貸切りでゆったり拝観する仁和寺、毘沙門堂門跡
宵闇のなかで、ふわりと光をまとった木々が浮かび上がります。紅や黄金に艶めいて織りなされるのは、日常を忘れてしまうほどの幻想的な世界……。
想いを叶える上質な旅をお届けする「殊の旅」では、紅葉の名所を訪ねることはもちろん、ライトアップされた彩りもお楽しみいただく贅沢なひと時を盛り込みました。仁和寺、東寺、清水寺など、普段は観光客で混雑する名刹を、閉門後の貸切りなどの静かな環境でゆったりと拝観していただける、3つのツアーをご紹介します。
はじめにご案内するのは、仁和寺と金戒光明寺、それぞれのライトアップを貸切りなどで堪能していただける3日間の旅。遅咲きの「御室桜」で知られる仁和寺は、境内を彩る約300本のもみじも実に見事です。国宝である金堂へ向かう道を歩けば、迎えてくれるのは美しい紅色に染まる灯り。重要文化財の五重塔など、江戸時代に建立された数々の建造物が並ぶ広大な境内を、案内付きの貸切りでお楽しみいただけます。
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ご本尊を祀る金堂と紅葉を照らし出す、仁和寺のライトアップ
浄土宗の大本山である金戒光明寺では、山門や境内を美しく染め上げる紅葉が圧巻です。ライトアップされた彩りを、閉門後にゆったりと、庭園コンシェルジュの案内で堪能していただきます。庭園の池に映り込む紅葉などの神秘的な彩りに、思わず目を奪われることでしょう。
早朝には、山科の地に佇む毘沙門堂門跡へ。開門前の朝に貸切りで、静かな境内の紅葉を楽しみます。敷きもみじが染める参道など、山寺ならではの風情に包まれるひと時です。広々とした渓谷を抱く東福寺や、妙心寺塔頭大法院の茶室へ続く露地の紅葉など、それぞれに色鮮やかな名刹の風景が、深く心に沁み入ります。
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庭園コンシェルジュの案内でめぐる、金戒光明寺のライトアップ
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山寺の風情があふれる毘沙門堂門跡は、開門前の静かな時間に貸切りで
壮麗な東寺のライトアップ 非公開別荘の名庭も堪能
藍色の夜空に、紅色の光、そして五重塔……。2つ目にご紹介するのは、真言宗の総本山である東寺のライトアップを拝観できる、3日間の旅です。一般客よりも先に、優先入場で境内へ。金堂や講堂、五重塔を照らし出す光と紅葉の共演、そして瓢箪池に揺らめきながら映る木々は、息を呑むほどの美しさです。また、通常は非公開の、歴代の天皇をお迎えする特別な場所であった小子房を、僧侶の案内付きで拝観します。
そして、日差しのもとで楽しむ紅葉は、足利氏の菩提寺である等持院。庭園の常緑樹と紅葉、黄葉が描く味わい深い彩りに魅了されることでしょう。
「近代庭園の最高傑作」と謳われるのは、別荘が多い南禅寺界隈でも特に名勝とされる「對龍山荘(たいりゅうさんそう)」。東山を借景とし、滝や池など水の流れを巧みに配した庭園に、紅葉した木々が彩りを添えます。通常は非公開ですが、今回は特別に、案内付きで約2時間の見学をお楽しみいただきます。この時期だけの名庭の風情を、ぜひご堪能ください。
そのほか、通常は非公開とされている真如寺など、普段はなかなか見られない名所の紅葉を満喫できる時間が待っています。
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京都の町のシンボルともいえる東寺の五重塔と紅葉が、夜空に浮かび上がる
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近代庭園の傑作とされる、通常は非公開の名勝「對龍山荘」へ
燃え立つような紅葉と光の共演を清水の舞台から
最後にご紹介するのは、清水寺のライトアップを楽しめる、1泊2日の旅です。平成から令和の大改修を経て、昨年12月に美しくよみがえった「清水の舞台」。せり出すように建てられた本堂からは、光に包まれた燃えるような紅葉と、煌めく京都の夜景が広がります。ご本尊である十二面千手観音菩薩立像の慈悲を表しているという、青い一筋の光も幻想的です。
宿泊する京都ブライトンホテルの特別プランにより、一般の方を含む約50名限定で拝観できるので、普段は賑わっている境内をゆったりと静かにめぐることができます。さらに、「今年の漢字」の揮毫で知られる森清範貫主の法話も。光をまとった紅葉とともに、心満たされるひと時をお過ごしいただけることでしょう。
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清水寺のライトアップでは、観音菩薩の慈悲を表す青い光が夜空を照らす
2日目は、庭園の紅葉が美しい建仁寺へ。細川護熙氏が約1年をかけて描き、今年の6月に奉納したばかりの見事な襖絵もご覧いただきます。
ライトアップされた美しさを愛でる、現代ならではの紅葉狩り。それぞれに心酔わせる彩りのなかで、この時期だけの幽玄の世界をお楽しみください。
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建仁寺に奉納された細川護熙氏筆の襖絵「瀟湘八景図(しょうしょうはっけいず)」
艶やかな京の錦秋を訪ねて
〈 和の旅 〉
苔むした庭園や床もみじ。
多彩な紅葉に出あうゆとり旅
渓谷の紅葉を抱く東福寺 雲海のような彩りのなかへ
海のように広がる紅葉や、参道を染め上げる敷きもみじ。柱で絵画のように縁取られた庭園……。ゆとりを大切にした「和の旅」では、さまざまな表情の紅葉を4日間でゆったり堪能する、2つのツアーをご用意しました。
1つ目は、3連泊でめぐる京都の旅。紅葉の海とも例えられる絶景が広がるのは、境内に渓谷を抱く東福寺です。紅葉は京都随一ともいわれ、本堂から通天橋を渡れば、眼下には色鮮やかな約2,000本ものもみじが。燃え立つような彩りが秋風に揺れる景色は、まさに雲海を思わせる美しさです。
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東福寺の境内では、錦を織りなす紅葉の海が広がる
しっとりと情緒に満ちた時間が流れるのは、山里深く、建礼門院が隠棲した大原に佇む三千院門跡。門をくぐれば、長い年月を物語る深い緑の苔庭と、艶やかな紅葉の共演が迎えてくれます。
磨き抜かれた床に庭園の紅葉が映り込む貴重な床もみじを堪能できるのが、実相院門跡です。光が反射して生まれる神秘的な彩りは、立つ位置や見る角度によって姿を変えていきます。
紅葉を堪能するこの旅では、古き良き日本の原風景が残る、京都の里山も訪ねます。「美山かやぶきの里」は、茅葺き屋根の民家が残る山村集落。歴史を物語る景観が、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。大切に守られてきた風景のなかで、懐かしく温かい里山の秋を感じていただけることでしょう。
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京都府のほぼ中央に今も残り、のどかな風景に心が和む「美山かやぶきの里」
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山里に佇む三千院門跡は、苔むした庭の緑と紅葉のコントラストが美しい
湖東三山、近江の古刹と京都の庭園美を味わう
もう1つの旅では、滋賀と京都の名所を訪ねます。琵琶湖畔の大津に2連泊、そして京都に1泊。それぞれを代表する名刹などで、変化に富んだ紅葉の姿をゆったりお楽しみいただけるツアーです。
滋賀では、鎌倉時代から平安時代にかけて建立された、琵琶湖の東側に佇む古刹へ。「湖東三山」と呼ばれる、3つの寺院をめぐります。およそ1,000本もの楓が彩る西明寺、そして、“血染めの紅葉”とも呼ばれるほどに境内が深紅に染まる金剛輪寺。山城らしい風情が漂う百済寺では、重厚な石垣参道を埋め尽くす散りもみじの絨毯が迎えてくれます。
さらに西側、近江(湖西)を代表する紅葉の名所へ。もみじやいちょうで境内が色とりどりに染まる興聖寺や、紅葉のトンネルのような参道が続く西教寺を訪ねます。途中、約2.4キロにわたって続くメタセコイア並木も圧巻です。道の両側に植えられた木々が豊かに生い茂り、まぶしいほどの彩りが降り注ぎます。まっすぐに延びる道を行くほどに、夢見心地になれるひと時です。
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聖徳太子創建と伝わる百済寺は、参道の散りもみじが美しい
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紅葉のトンネルのようなメタセコイア並木
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湖東三山の紅葉の名所、金剛輪寺は “血染めのもみじ”といわれるほど鮮やかな彩りに
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柱にくっきりと縁取られた見事な「額縁庭園」が見られる圓光寺
琵琶湖畔の名所を満喫した後は、比叡山の麓へ。京都の庭園美を存分に味わうことができる寺院を訪ねます。もみじの紅色と美しく刈り込またさつきが白砂に映える詩仙堂、枯山水庭園と紅葉が詫び寂びの世界を描く曼殊院門跡。「額縁庭園」で知られる圓光寺では、書院から外を眺めると、柱の額縁に切り取られた名庭「十牛之庭」が広がります。色づいた楓と、杉苔の上の散りもみじが描く絵画のような風景は、いつまでも心に刻まれることでしょう。
渓谷を舞台にした華やかな紅葉や、静かに沁み入る庭園の彩り。寺院のなかで出あえる床もみじや額縁もみじなど、多彩な紅葉が待つ京都、滋賀の旅。この秋、まだ見ぬ色鮮やかな思い出をつくりに、出かけてみませんか。