[ 特集① ]

麗しき富士山
日本の絶景、私の絶景

企画=篠原陽子/森脇潤/開沼愛加里 文=槙原有希
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“日本人の心のよりどころ”といわれる、秀峰・富士。企画担当がこよなく愛する富士山は三者三様。それぞれの富士山を堪能する旅をご案内します。

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歌川広重が描いた“東海道一の絶景”に出あう

街道ハイキングの旅

篠原陽子(しのはら ようこ)

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歩いたからこそ思い出に残る薩埵(さった)峠からの風景

私がおすすめする富士山は、江戸時代に活躍した浮世絵師・歌川(安藤)広重が描いた風景そのままの雄大な姿です。53の宿駅を叙情豊かに描いた『東海道五十三次』は、天保年間に出版された浮世絵のシリーズ。そのなかの『由井 薩埵嶺』は、駿河湾にせり出した薩埵山の中腹にある峠から見える“東海道一の絶景”が描かれています。眼下に広がる駿河湾と地平線に見える山並み、奥にそびえる美麗な富士山が織りなす絶景です。ハイキングを楽しみながら、広重が描いた風景に出あう2泊3日の旅をご紹介します。

初日には、世界遺産に登録された富士山の構成資産の1つである三保松原を散策します。中央付近にある「羽衣の松」は天女と地元の漁師の出あいを描いた「羽衣伝説」の舞台といわれています。海岸の松原越しに見える富士山をお楽しみください。

  • イメージ イメージ 駿河湾と富士山が一望できる薩埵峠からの眺望

翌日は、興津駅周辺から薩埵峠展望台を目指して街道ハイキング。およそ3.8キロの道のり(東海道の一部)を2時間ほど歩きます。展望台からは広重の描いた風景を眺めます。自分の足で歩くからこそその光景は思い出深いものとなるでしょう。『東海道五十三次』に描かれた往時の面影を残し、広重が見たであろう風景をこのように彷彿とさせる景色にはなかなか出あえません。晴れた日には、広重が好んだ「ヒロシゲブルー」の美しい海が煌めいています。ご希望の方は展望台からの復路でタクシーをご利用いただくことも可能です。

3日目は、熱海港から高速船で約30分、“首都圏から一番近い離島”というキャッチフレーズで人気の初島へと向かいます。船や初島の港からは、本土からとは別の角度で富士山を眺めることができます。島では周遊道の散歩で島内観光をお楽しみください。海鮮の昼食を味わい、島の古来種や亜熱帯の植物を見学できる「アジアンガーデン」、初島灯台や初木神社などを訪れます。

なかなか出あえない富士山と初島を組み合わせた街道ハイキングの旅へ、ぜひお出かけください。

  • イメージ 松原越しに富士山を望む三保松原。空気が澄む晩秋から冬は富士眺望のベストシーズン 
  • イメージ 初島「アジアンガーデン」で亜熱帯の植物を見学
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陸から、海から文化的背景も知り

あらゆる角度から富士を再発見する旅

森脇潤(もりわき じゅん)

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新スポットも含め “お気に入り富士”を見つける

葛飾北斎が描いた『冨嶽三十六景』に新しく加えたいほどの迫力ある富士山が私のイチオシです。それは、今年7月にオープンしたばかりの「FUJIYAMAタワー」の展望台から見える富士山です。「富士急ハイランド」エリア内、高さ55メートルからの眺望には遮るものが一切ないので、下から上、左から右まで全方向に広がる富士山の姿を楽しむことができます。現地を視察したのですが、息を呑む景色でした。遊園地のなかにありますが、バスを降りて約100メートル歩けばそこにはエレベーター。あとは一気に展望台まで上がってしまうので、階段を登る心配はなく、気軽にお楽しみいただけます。

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ご紹介するツアーはすべて澄んだ空気に白銀の富士が映える12月初旬に出発。山梨県、静岡県、そして海上から、千変万化の富士を愛でる3泊4日の旅です。眺望だけでなく、富士信仰の地などをめぐり、富士山の文化的重要性にも迫ります。

1日目に「FUJIYAMAタワー」からの絶景をお楽しみいただいたあと、富士講巡礼の地である忍野八海へ。「山中湖 花の都公園」で気象条件が合えば、ダイヤモンド富士を見学できる機会を設けています。2日目には、富士信仰を広めた御師の家「御師旧外川家住宅」などを訪れ、午後には身延山ロープウェイで山頂へ。山頂からは、天子山塊の背後に富士山が見える“裏富士”といわれる風景を楽しみ、伊豆半島、駿河湾を眺望します。

翌日は日本平ロープウェイで久能山東照宮を見学。富士山本宮浅間大社では、富士山の雪解け水を集めて湧出する湧玉池や、徳川家康公の寄造営による本殿などを拝観します。最終日は、清水港から駿河湾フェリーに乗り、海上からの眺望をご堪能ください。

また、旅の締めくくりには、「伊豆パノラマパーク」から望む富士の雄姿を目に焼き付けましょう。テラスから、富士山や駿河湾を一望することができます。あらゆる角度から富士山を望み、その魅力を実感してみませんか。

  • イメージ 12月上旬は澄んだ空気に富士山が映える絶好の季節(伊豆パノラマパーク)
  • イメージ 駿河湾フェリーで海上からの富士の眺望を楽しむ
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名宿「富岳群青」と「日本平ホテル」で

絵画のような富士を堪能する旅

開沼 愛加里(かいぬま あかり)

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時の移ろいとともに変化する富士山を味わう

空気が澄み渡る冬、刻々と表情を変える姿を宿の客室からゆったりと愛でる。これぞ、私がおすすめする富士山です。今回の旅では、1日目は土肥温泉に位置する「富岳群青」、2日目は静岡市にある「日本平ホテル」に宿泊。どちらも富士山を望む、定評のある宿です。趣の異なる両方の眺めを一度に楽しむことができる2泊3日の旅をご案内します。

離れに8つの客室がある「富岳群青」は、別荘のような宿。客室の大きな窓に広がる絶景は、額装された絵画のような美しさです。すべての客室には、広いデッキテラスと富士の眺望が楽しめる露天風呂が付いています。1日目のチェックインは夕刻を予定していますので、まず夕日に赤く照らされた富士を湯船から愛でるひと時を過ごされてはいかがでしょうか。宿の名にある「富岳」は富士山の別名。「群青」は海を表しています。海に浮かび立つような富士山を、潮騒とともに贅沢にお楽しみください。

  • イメージ イメージ 「富岳群青」の露天風呂に浸かり海に浮かぶような富士を

“風景美術館”と称される「日本平ホテル」は、足を踏み入れると、テラスラウンジには吹き抜けのガラス越しの富士山、三保松原、駿河湾の大パノラマが広がります。おすすめは、ダイニングの外にある芝生の庭園からの眺め。眼下の清水港とその先に広がる富士は、開放感あふれる風景の主役です。客室の窓からも時の移ろいとともに変化していく富士山をご堪能いただけます。また、夜の帳が下りると、「日本夜景遺産」に認定された夜の風景が輝きはじめます。

年末と年始には、「日本平ホテル」に宿泊する1泊2日の旅も2コースご用意しています。年末のコースでは、港町・焼津で歳末のお買物を楽しむ旅を。年明けのコースでは、富士山本宮浅間大社への初詣を織り込んでいます。両コースとも、フードパークやいちご狩りなど見どころが満載です。

日本を代表する絶景、富士。見る場所や時間など、さまざまな条件によって姿を変えます。あなたはどの富士山と出あいますか。

  • イメージ イメージ 「日本平ホテル」の庭園から見渡す駿河湾と富士の絶景