[ クローズアップ ]

駐在員からの手紙

いつかのパリへ、再び

To PARIS Someday, Again

企画=古澤雅史 文=北条かや
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再び自由に海外へ旅立てるその日まで

海外への扉が閉ざされ、早1年半。この間、多くの方々が旅への思いを募らせ、かつて抱いた外国への憧れに心を燃やしているのではないでしょうか。

ヨーロッパやアメリカなど、一部の国では海外からの渡航者を受け入れはじめています。しかし、多くの方が日常的に旅を楽しめるようになるには、もう少し時間がかかりそうです。

私たち三越伊勢丹ニッコウトラベルもこの1年半、旅することへの情熱と憧れを絶やすことなく、「新しい日常」におけるツアーの形をさまざまに思い描いてきました。今もまだ渡航制限は続くものの、世界は確実に歩みはじめています。

再開第1弾として2022年春には、フランス、パリへの旅を計画しています。次期オリンピックの開催地としても注目を集めるパリ。私たちの永遠の憧れ“花の都”こそ、旅の再開にふさわしいという思いがありました。

昨年は厳しい外出制限のもと、華やかな景色が一変したパリ市内。しかし今、静まり返っていた街並みには人々が戻り、パリ市民たちは新しいライフスタイルを受け入れはじめています。その様子はたくましくもあり、古くからパリに暮らす人々が求めてきた「自由」や、自分たちの手で日常をつくり出す「ブリコラージュ」の精神を体現しているようでもあります。

  • イメージ イメージ 今再び、多くの観光客を集めるエッフェル塔(2021年9月撮影)

今回のスカイニュースでは、そんな最新のパリの様子を「駐在員からの手紙」という形でお届けします。

市内に滞在する三越伊勢丹の駐在員が見た、リアルで活気あふれるパリの今。来るべき次の旅へ向けて、花の都の現在を確かめに行きましょう。

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ロックダウンから日常へ
動き出したパリの街

  • イメージ イメージ 再開したアンヴェール広場のマルシェ。百貨店よりも安く新鮮な野菜や果物が手に入る(2021年9月撮影)
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自由が失われ一変した花の都

2020年3月、パリ市内はそれまで見たことのない静寂に包まれていました。外出は1キロ圏内に限定され、スーパーなど必要最低限の買い物にも身分証などが必要に。街からは観光客が消え、警察官や軍隊が見張りに立つようになりました。

パリの春といえば、長い冬が明け、解放感から人々が1年で一番生き生きとお出かけを楽しむ季節。花が咲き乱れ、カフェのテラス席でエスプレッソ片手に会話を楽しんだり、公園でのんびり寝転んだりするカップルなど、街全体が晴れやかな空気に満ちていたものです。

それが昨年は、5月になっても自由に外を歩き回ることすらできないのですから、自由を愛するパリ市民の悲哀は相当なものでした。ルーブル美術館も休館し、人々が消えた広場はまるで冷たい模型のよう。公園にも鍵がかかり、それを「公園開放だ」と言って壊そうとする人も見かけました。カフェの閉店にも抗議デモが起きたといいます。パリ市民にとって、公園やカフェでの自由が奪われるのは耐え難いことだったのでしょう。

そんななかでも、街角での小さな交流が心を癒してくれました。駐在員として赴任して間もなかった私は、自宅近くを散策しながら写真を撮っていたのですが、同じようにカメラを構えたパリジャンの中年男性が、にっこり微笑みかけてくれたのです。人との会話がめっきり減っていたので、ちょっとした笑顔のやり取りがうれしかったのを覚えています。

  • イメージ イメージ 人のいないルーブル前広場。観光客も風景の一部だったと知る(2020年9月撮影)
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ペットの飼育や観葉植物がブームに

ロックダウン中でも、パリ市民はあの手この手で生活を楽しもうとしていました。ペットの散歩であれば外出が許可されるため、中型犬や大型犬を飼う人が増えました。自宅で過ごす時間を豊かにしようと、観葉植物も人気に。家庭菜園もブームで、色々なお店でグッズが販売されていました。あまりの人気に、午前中で売り切れてしまうことも多かったようです。

  • イメージ イメージ ペットの飼育がブームとなり、公園での散歩を楽しむ人たち(2021年9月撮影)

5月にロックダウンが一部解除されてからは、パリ市内で大きな変化がありました。それは、車の量が減ったこと。大気汚染が緩和され、澄んだ青空に映えるエッフェル塔を見たときは、これまでにない感動を覚えました。多くの市民が「車のいない快適なパリ」を支持し、自動車道を削って歩道や自転車専用レーンにする流れも加速しています。

公共交通機関での通勤はまだ不安だからと、自転車通勤に切り替える人も増えました。休日のサイクリングも人気で、店頭では自転車の売り切れが続出。

パリの街は、歩行者や自転車に優しく生まれ変わったのです。

  • イメージ イメージ セーヌ河のクルーズ船。現在は多くの観光客でにぎわっている(2021年7月撮影)
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メイド・イン・パリに注目 市庁舎でフェアも

去年の夏は多くの市民が、ニースや郊外の山々などフランス国内での旅行を楽しみました。「メイド・イン・パリ」が注目され、地産地消を楽しもうという流れも。市庁舎では、食べ物やファッションなど「パリの名産品」フェアが開かれており私も何度か訪れました。年末には再びロックダウンが敷かれたものの、クリスマス休暇には人々の集まりが許可され、イブの夜は外出制限も解除。マクロン大統領も、家族と過ごすイブを楽しんだようです。街にはイルミネーションが輝きました。

3度のロックダウンを乗り越えたパリは、新しいライフスタイルを受け入れて大きく変わりはじめています。今年の5、6月にはワクチン接種率が高まり、ワクチンパスポート(衛生パス)か72時間以内のPCR検査などでの陰性証明があれば、EU圏内の移動が認められるように。街では英語の会話を耳にすることも増え、観光客が戻ってきているのを実感します。

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新名所が続々オープン 王室の調度品保管所も

新しい名所も続々とオープンしています。セーヌ右岸ポンヌフ近くにある老舗デパート「サマリテーヌ百貨店」は、この夏16年ぶりにリニューアルオープン。150年以上の歴史を誇る老舗百貨店ですが、2001年にLVMHグループが買収した後は、老朽化で一時閉鎖されていました。古い歴史ある建物を美しくリノベーションし、モダンと融合させた店内はまるで美術館のよう。日本の皆さまにもぜひ訪れていただきたいです。

コンコルド広場に面した「オテル・ド・ラ・マリーヌ」も、新しいパリの観光スポットです。もともとルイ一五世の時代に使われていた王室の調度品保管所でしたが、1798年からは海軍省の本部が置かれていました。それがこの夏、4年の修復工事を経て、18世紀の装飾文化を見学できる文化施設へとリニューアル。当時の壮麗な内装をそのままに蘇らせたサロンやギャラリー、コンコルド広場を一望できるバルコニーなど、どれもため息が出るほどの美しさです。

生まれ変わったパリでは、新しい名所が皆さんの訪れを待っています。次の旅の計画を、今から立ててみませんか。

  • イメージ 「オテル・ド・ラ・マリーヌ」では、18世紀の装飾芸術を見学できる(2021年9月撮影)
  • イメージ リニューアルオープンした老舗のサマリテーヌ百貨店