2022年1月19日から日本橋三越本店で開催される「人間国宝 井上萬二 白磁三代展 −康徳・祐希とともに−」に先だって、磁器の里・有田(佐賀県)に出かけてみませんか。井上萬二窯や柿右衛門窯の訪問と併せて、芸術・文化、食の彩りにあふれた佐賀県の魅力にゆったりとふれていただけます。
染め付けを一切せず、ありのままの造形美を究める潔さ。純白の磁肌が醸し出す、端麗な艶やかさ。数多の陶磁器にあって、有田焼の白磁ほどに日本人の美意識を揺さぶる器も希有でしょう。白磁の名匠・井上萬二さんが生まれ故郷で作陶の道に入ったのは、17歳の時。有田焼の窯元だった実家でのスタートでした。造形の要であるろくろ技術は、ろくろ師・初代奥川忠右衛門に10年以上にわたって師事。さらに佐賀県立窯業試験場に就職し、陶土や釉薬、築炉、焼成などあらゆる角度から焼き物を徹底的に研究した後、満を持して自分の窯を持つに至ります。重要無形文化財保持者として1995年に認定されたのは、白磁に寄せる想いの賜物だったに違いありません。
ご案内するのは、そんな人間国宝の窯を訪問する旅。工房の見学とともに、逸品が展示されたギャラリーをご鑑賞いただきます。楽しみなのは、「形そのものが文様」という井上さん直々の陶芸談義です。海外の大学で作陶を英語で指導したり、壮大なグランドキャニオンにひかれて何度も訪れたり。伝統に捉われず、常に新しいことに挑戦し続ける氏の人柄までも感じ取っていただけるでしょう。
井上萬二窯にほど近い柿右衛門窯にもご案内します。濁手(にごしで)と呼ばれる乳白色の素地に鮮やかな“赤”の上絵を焼き付ける独自の“柿右衛門様式”は、ドイツのマイセン工房をはじめ海外にも多大な影響を与えました。工房やギャラリー見学に加えて、15代当主の陶芸談義も。ふと敷地に佇む柿の木を眺めると、初代の“赤”への情熱が伝わってきそうです。
日本が世界に誇る白磁、伝統の赤絵。その風雅な世界をゆったりとご満喫いただくために、滞在先にもこだわりました。
1日目は、東唐津の「洋々閣」で。明治・大正の面影を今に残すこの純和風旅館は、かつて石炭産業を牽引した財界人の定宿でした。料理旅館としても定評のある老舗で、玄界灘で獲れた旬のアラ(クエ)を、花びらのように美しい薄造りや、ふっくらとしたあら煮で堪能しましょう。
2日目は、オーナーへの船舶引き渡しの場として、大島造船所が威信をかけて建造した「オリーブベイホテル」でどうそ。設計は世界的な建築家・隈研吾さん。館内のアートな空間や造形コレクションにも目を瞠ります。
帰路の途上では、旅館に設えたサロンでこだわりの嬉野茶を。昼食は、「佐賀牛ステーキならここ」と地元では一目置かれるレストラン「季楽本店」で、とろけるようなA5ランクの味わいをご堪能ください。玉ねぎやにんにくなどの地元野菜も絶品です。
佐賀の地が綿々と紡いだ芸術と文化にふれ、地産のガストロノミーをご体験いただけるこだわりの旅へ、「人間国宝 井上萬二 白磁三代展 −康徳・祐希とともに−」開催を控えた時期にぜひどうぞ。