日本各地で運行されている観光列車は、車窓を流れる自然の風景や、その土地土地の料理をゆっくり味わいながら、しみじみ旅情に浸れるのが魅力です。おすすめは、自然美も山海の恵みも満載の秋。さあ、郷愁と温もりの列車旅に出かけましょう。
まずご紹介するのは、福岡県の平成筑豊鉄道で運行されている「ことこと列車」を丸ごと貸切ってご乗車いただくコースです。「日本一ゆっくり・おいしい・楽しい列車」を目指す、この優雅なレストラン列車が運行するのは、直方(のおがた)駅から行橋(ゆくはし)駅までの約75キロ。時速約20~60キロで、通常約1時間半の行程を約3時間20分かけてのんびり走ります。車窓からの見どころは、のどかな田園風景と、九州百名山といわれる人気の「福智山」、映画やドラマの舞台にもなった「香春岳(かわらだけ)」など。紅葉がひときわ美しい時期のツアー催行なので、赤や黄に鮮やかに染まる大自然の景観を心ゆくまでご満喫いただけることでしょう。
さらに、今回ご注目いただきたいのが、「アジアのベストレストラン50」に選ばれた、福岡のレストラン「Goh」の福山剛シェフが監修し、列車内で自ら腕を振るう「三越伊勢丹ニッコウトラベル特別メニュー」の昼食。沿線の旬の食材をふんだんに使った1日限りのオリジナル料理を、福山シェフによる料理説明とともにご堪能ください。
また、4カ所の停車駅では、懐かしさと温もりを覚える木造駅舎や、沿線の特産品などを揃えた駅マルシェのほか、今回特別に、炭坑節の歓迎イベントもお楽しみいただきます。
「ことこと列車」同様、九州の紅葉のベストシーズンにご案内するのが、南阿蘇鉄道のトロッコ列車「ゆうすげ号」に乗車するツアーです。「ゆうすげ」とは、夏に沿線で見られるユリ科の高山植物のこと。開放感いっぱいの車内からは、迫力満点の阿蘇五岳や外輪山などを満喫できます。最大の見どころは、終点の立野駅に到着する前に渡る、長さ約166メートルの「第一白川橋梁」。川面から約60メートルの高さからの眺望は、息を呑むほどにダイナミックな大パノラマです。
2016年の熊本地震で被災した南阿蘇鉄道は、そのあまりの被害の大きさから、一時は廃線の危機に追い込まれました。しかし、地元の皆さんの強い要望と熱い支援が国を動かし、7年余りもの年月を経て、2023年7月に全線運転再開を果たしたのです。「ゆうすげ号」は、そんな奇跡の復活を遂げた“なんてつ”のシンボル的存在。今回の旅では、その1車両をまるまる貸切ることで、雄大な阿蘇の景観をゆったりお楽しみいただきます。
また、宮崎から熊本をめぐる2泊3日のツアーは、荘厳さを湛える「高千穂峡」をはじめとした自然の見どころが多彩。高千穂で泊まる「旅館 神仙」の夕食とおもてなしにもご期待ください。
北陸の観光列車旅でおすすめなのが、富山平野を横断する「一万三千尺物語」にご乗車いただく1泊2日のツアーです。「一万三千尺」とは、標高3,000メートル級の立山連峰と深さ約1,000メートルの富山湾の高低差を尺貫法で表したもの。富山駅~泊駅間を往復する約2時間のコースでは、そんな立山連峰や富山湾、日本屈指の急流河川といわれる早月川などの美しい景観と、職人が車内で握る富山湾鮨をご満喫ください。全8貫の富山湾鮨は、今年4月のメニューリニューアルにより、高級魚として知られる「のどぐろ」が加わったほか、お造り用の器には高岡の伝統技術が息づく「能作」製のものが採用されました。
また、ツアー1日目の昼食で訪れる、「里山のオーベルジュ 薪の音」もぜひご注目いただきたいポイント。美しい日本の里山の風景に抱かれて、秋が薫る“里山フレンチ”を心ゆくまでどうぞ。さらに、宿泊は、砺波の奥座敷ともいわれる散居村に佇む、「庄川温泉風流味道座敷 ゆめつづり」へ。しっとりと深まる秋の自然に包まれて浸かる、檜の露天風呂や野趣あふれる岩風呂には、心身ともに癒されるに違いありません。地元の旬の食材にこだわった会席料理の夕食もご堪能ください。
「天空」は、世界遺産の「高野山」へ向かう、南海電鉄の橋本駅から極楽橋駅までの約20キロを走る観光列車です。標高差約443メートルにおよぶ山岳地帯をゆっくりと上っていく時間は、まさに天空の聖地への旅気分を高めてくれるものといっていいでしょう。そんな「天空」に乗車する今回のツアーの最大のポイントは、2両編成の全座席を三越伊勢丹ニッコウトラベルのお客さまだけの貸切りとしたこと。さらに運行区間についても、なんば駅~極楽橋駅間まで特別に延長したことで、大阪中心部のターミナル駅から、座席確保の心配も面倒な乗り換えもなしで、高野山への優雅な列車旅をお楽しみいただけます。
今回の旅で、真言密教の聖地となっているのは、高野山参詣の三大スポットといわれる「奥之院」、「金剛峯寺」、「壇上伽藍」。そのうち、弘法大師がご入定されている聖地「奥之院」と、密教の曼荼羅世界が広がる「壇上伽藍」では、テレビ番組などの出演も多い、清浄心院 高野山文化歴史研究所所長の木下浩良さんにご案内いただきます。また、高野山真言宗の総本山である「金剛峯寺」では、僧侶の方の案内で、通常非公開の「奥殿新書院」を拝観。豪華な襖絵などをじっくりとご覧いただきます。
2泊3日のツアーでは、初日から3日間通しでジャンボタクシーを利用。大きな荷物を車内に置いたまま、身軽に観光を楽しめるのも魅力です。
全国約2,300社余りの住吉神社の総本社である、大阪の「住吉大社」をはじめとした関西の見どころをめぐる2泊3日のツアーでは、最終日に人気の2つの近鉄特急に乗車します。1つ目は、今回、大阪阿部野橋駅から奈良県の橿原(かしはら)神宮前駅まで乗る「青の交響曲(シンフォニー)」です。濃紺のボディカラーにゴールドのラインをあしらった上品な車両デザインと、ワイドな窓や質感にこだわった素材のデラックスシートが心地良い車内空間に抱かれて、ゆったり麗しい時間をお過ごしください。そして、世界遺産「興福寺」のかたわらに立つ「登大路ホテル奈良」でフランス料理の昼食を召しあがっていただいたあと、近鉄奈良駅から京都駅までお乗りいただくのが「あをによし」です。古都・奈良に掛かる枕詞でもある、この観光特急の名前は、奈良の都の美しさをイメージして付けられたもの。天平時代に高貴な色とされた紫の外装と、正倉院の宝物に用いられている天平文様が散りばめられた内装は、古都ならではの悠久の歴史と文化を感じさせてくれることでしょう。
ツアー1日目に、阪堺電車の車両を貸切って向かう「住吉大社」でご案内するのは、閉門後の夜間特別参拝。無言で願掛けをする“無言詣”と、通常非公開の歴史的建造物「神館」での日本料理の夕食をお楽しみください。