今年の7月、ユネスコにより登録された、日本で5件目の世界自然遺産をご存じでしょうか。それは、琉球列島のうちの中琉球にあたる奄美大島、徳之島、沖縄島北部と、南琉球の西表島の四地域にまたがる計約4万3,000ヘクタールです。この地域は温暖・多湿な亜熱帯性気候で、マングローブや巨大なシダ植物などが見られる原生林のジャングルに、多くの固有種や絶滅危惧種を含む圧倒的な数の動植物種が息づいています。固有種の数は、脊椎動物で71種、維管束植物で188種、昆虫類ではなんと1,607種にもおよび、さらに、95もの国際的絶滅危惧種が存在しています。
今回の世界自然遺産登録は、そんな四島の生物多様性が評価されたもの。世界でも貴重な希少種・固有種の保全に重要な地域として認められました。
そんな生物種や固有種の多さは、海底の火山活動や隆起によって生まれたものではない琉球列島の成り立ちが大きく関係しています。約1,200万年前以前の琉球列島はユーラシア大陸の一部で、大陸と同じ生物が生息していたと考えられています。その後、大規模な地殻変動により、中琉球と南琉球になる部分が大陸から切り離されていったことで、さまざまな生物が島々に取り残されました。
さらに、約200万年前以降になって、中琉球と同じ祖先を持つ大陸の生物が絶滅していったことから、中琉球に残されたものが地球上でここしかいない遺存固有種になったとされています。現在、奄美大島と徳之島だけに生息し、現存するウサギ科のなかで最も原始的な体形をしているアマミノクロウサギもその1つです。
また、1965年に発見されたイリオモテヤマネコは、大陸に類縁関係が強い種が分布していることもあり、9~5万年前頃、氷期(氷河時代のうち特に寒冷で氷河が大規模に発達した時期)に海面が低下し、南琉球と大陸の間の距離がごく小さくなった際、海を渡って南琉球に入ってきたものと考えられています。しかし、西表島での現在の推定生息数は、わずか100頭前後。交通事故の増加などにより、今なお減少傾向にあるとみられています。
四島にはそれぞれ、自然遺産にふさわしい特徴と見どころがあります。
奄美大島と徳之島はどちらも、九州本土と沖縄県の間に連なる奄美群島に位置。そこに点在する八つの有人島のうち最大で、多くが深い森で覆われる奄美大島では、「金作原(きんさくばる)原生林」が一番の見どころです。
高さ15メートルにもなるヒカゲヘゴなどの巨大な亜熱帯植物が生い茂るジャングルは、今にも目の前に恐竜が現われそうな太古の雰囲気満点!“生きた化石”のアマミノクロウサギや、美しい羽色のルリカケスといった希少な固有種も生息しています。
一方、徳之島で世界遺産に登録されたエリアは、島中央を南北に走る山岳地一帯。東シナ海に面した海岸線に不思議な形をした岩や洞門、断崖が連なる「犬の門蓋(いんのじょうふた)」などの景勝地も人気のスポットです。
沖縄島北部の世界遺産は、やんばる(山原)と呼ばれる一帯。「山々が連なり森の広がる地域」という意味そのままに、モコモコとした濃い緑の照葉樹がどこまでも広がります。深い森のなかに足を踏み入れると、めったに出あえないヤンバルクイナが、キョキョキョという鳴き声とともに顔を出してくれそうな期待感が高まります。
西表島は、八重山諸島の1つで、台湾までわずか約200キロの所に位置しています。“日本最後の秘境”と呼ばれる島は、約90パーセントが亜熱帯の原生林で覆われ、ほぼ全域が世界遺産。絶滅危惧種のイリオモテヤマネコやカンムリワシも暮らす濃密なジャングルや、生命の神秘さにふれる日本最大級のマングローブ林は、人間がけがすことを許さない、聖域としての威厳に満ちています。
世界遺産登録記念ツアーとして今回ご用意した旅は、全部で6コース。どれも、世界遺産とふれあいながら、琉球列島の多彩な眩い大自然を満喫いただけます。
最初にご紹介するコースは、西表島を貸切バスでめぐる4日間の旅。八重山諸島の玄関口である石垣島を代表するラグジュアリーホテル「ANAインターコンチネンタル石垣リゾート」を拠点に、西表島、由布島、竹富島を訪れます。ホテルには3連泊するため、お荷物を移動する煩わしさがありません。また、沖縄県内で本島の次に大きい西表島の秘境めぐりは、貸切バスでゆったり快適に。ハイライトの仲間川マングローブクルーズでは、日本最大級のマングローブ林をガイドの説明とともに約70分かけてご覧いただきます。また、イリオモテヤマネコをはじめとする動物の剥製などが展示されている「西表野生生物保護センター」もこの島ならではの見どころといっていいでしょう。さらに、旅では食の楽しみも多彩。特におすすめなのが、石垣島の古民家郷土料理店「舟蔵の里」。島の食材を使った伝統的な郷土料理と八重山そばの昼食をお召しあがりいただく予定です。
2つ目のコースは、「星野リゾート 西表島ホテル」に連泊する四日間の旅。世界遺産の大自然に包まれた星野リゾートで過ごす時間はまさに非日常。周囲に広がる鬱蒼とした亜熱帯の森、すぐ前にある月ヶ浜での夕景や満天の星など、数々の感動体験が待っています。島の見どころをじっくりめぐるほか、ホテル界隈の自然を星野リゾートのスタッフが案内するガイドウォークもお楽しみいただく予定です。
3つ目のコースは、宮古・八重山諸島を連泊でめぐる6日間の旅。見どころたっぷりのコースの前半は、石垣島のリゾートホテルに3連泊。西表島観光の後、島全体が亜熱帯植物園になっている由布島へ水牛車でのんびり向かいます。そして旅の後半は、宮古島から橋で渡れる来間島に昨年オープンしたばかりの「シーウッドホテル」に2連泊。東洋一美しいとの呼び声が高い「与那覇前浜(よなはまえはま)」や、細長く海に突き出た国指定名勝の「東平安名崎(ひがしへんなざき)などの人気スポットへご案内します。
4つ目のコースは、奄美大島と徳之島の自然と文化を満喫する4日間の旅。ハイライトは、奄美大島を代表する観光スポット「金作原(きんさくばる)原生林」の散策です。認定エコツアーガイドの解説を聞きながら、亜熱帯の森に息づく貴重な動植物の生態にふれてみてはいかがでしょう。また、徳之島で当社の貸切りによりご用意したのが、約400年前の薩摩藩支配下の頃から続く闘牛文化に親しんでいただく特別イベント。徳之島闘牛に関するレクチャー、練習実演、牛とのふれあい体験などをお楽しみいただく予定です。
5つ目のコースは、沖縄島北部・やんばるの森をめぐる3日間の旅。国頭(くにがみ)村にある「やんばる学びの森」を訪れ、南方系と北方系が混在した植物相を持つ亜熱帯の森をガイドの案内でゆっくりと散策いただきます。また、そこからほど近い所にある「クイナの森」も見逃せないスポット。実際の生息環境を再現したブースで暮らすヤンバルクイナを間近で観察できるほか、現在の生態や環境状態がわかる資料も展示されています。
最後にご紹介するコースは、海に囲まれたリゾートに四連泊して沖縄本島を満喫する旅。滞在型なのでお荷物の出し入れが必要なく、世界遺産エリアを中心に身軽にゆったり観光できます。石灰岩の海食崖やカルスト地形、マングローブ林など多様な自然環境を持つ「やんばる国立公園」でご案内するのは、巨岩や奇岩、巨大ガジュマルなどが独特の景観をつくる「大石林山」。そのすぐ先、沖縄本島の最北端に位置する辺戸(へど)岬の断崖絶壁からは、太平洋と東シナ海の大海原を一望いただけます。
琉球の世界自然遺産をさまざまなスタイルでお楽しみいただける6つのツアー。どうぞこの機会にお好きな旅をご満喫ください。