阿蘇をはじめとする雄大な自然、風情ある多くの温泉地、歴史の重さを感じる観光スポット、行く先々でふれあう人々の温かさなど、九州には何度も訪れたくなる多彩な魅力が詰まっています。この冬から来年の春にかけて、そんな九州の各地をめぐる4つの旅をご紹介しましょう。
最初にご案内するのは、鹿児島の霧島から桜島、そして指宿までを旅する5日間のコース。この旅でぜひご体験いただきたいのが、指宿の砂浜で楽しめる世界的にも珍しい砂むし温泉です。海岸に自然湧出する温泉を利用したもので、首まですっぽり砂に埋もれると、まるで童心に帰って砂遊びをしているかのよう。体の芯までポカポカ温まり、神経痛、リウマチ、腰痛などに効能があるとされています。めったに出あえないもう1つのシーンが、「出水(いずみ)市ツル観察センター」で見られる1万羽を超えるツル。冬、シベリアから飛来したさまざまな種類のツルが、目の前の干拓地でダンスをしたり大空を舞ったりする様子は、まさに圧巻。人里近くでこれほどの数のツルが越冬するのは、世界でもここだけといわれています。
鹿児島に来たら、その象徴ともいえる桜島を訪れない手はありません。今回、往路のフェリーは、多彩な美しい景観が広がる錦江湾内を遊覧しながら渡る「桜島フェリーよりみちクルーズ」を利用。島内では、噴火口に最も近い「湯之平展望所」へご案内します。
旅の前半に2連泊するのは、霧島連山の南西に位置する霧島温泉郷。標高約600~850メートルの間に、さまざまな泉質の温泉が点在します。そのうちの丸尾温泉にあり、桜島を一望する「ラビスタ霧島ヒルズ」がお泊まりいただく宿。1番のおすすめは、全客室のテラスに設けられた天然温泉露天風呂。開放感たっぷりの大浴場、麗しい日本庭園が目の前に広がる露天風呂、趣の異なる3つの貸切風呂と合わせ、心ゆくまで癒しのひと時をお楽しみいただけます。
2つ目にご紹介するのは、新年を、熊本の黒川温泉と大分の別府鉄輪(かんなわ)温泉でゆったり過ごす3日間の旅。黒川温泉があるのは、大分との県境に近い阿蘇の奥地。豊かな森と清流に抱かれて、30軒の旅館がひっそりと肩を寄せあいます。まるで全体が1つの旅館のような素朴な温泉街で、ぜひご体験いただきたいのが、「入湯手形」による露天風呂めぐり。旅の記念にもなる木製の入湯手形1枚で、温泉街にある28カ所の露天風呂のうち、お好きな3カ所に入湯できます。また、毎年冬から春にかけて行われる「湯あかり」ライトアップも見逃せません。竹製の丸い灯篭と、筒状で高さ2メートルほどの灯篭が描き出す幻想的な世界は、心にふんわりした温もりを届けてくれます。
別府八湯の1つで、ひときわ多くの湯けむりがもくもくと上がる鉄輪温泉でお泊まりいただくのは、別府湾を一望できる「山荘 神和苑 新館 宙SORA」。源泉かけ流しの露天風呂付き客室をご用意し、いつでもお好きなだけ天空の湯あみをご堪能いただけます。
熊本でご注目いただきたい見どころは、2016年の熊本地震による被害から、天守閣全体の復旧が完了し内部が特別公開されている「熊本城」です。築城の名手といわれた加藤清正による名城の魅力をゆっくりとご覧ください。また、最終日、別府で「海地獄」と「血の池地獄」をめぐった後は、100年以上の歴史を持つ老舗料亭へ。豊後水道で捕れた天然とらふぐのコース料理の昼食をお召しあがりいただきます。
花が好きな方にぜひお出かけいただきたいのが、初春の長崎・佐世保をめぐる4日間の旅。そのハイライトが、約100万本のチューリップ畑です。これは、モナコ公国とほぼ同じ広さを持つ、日本最大級のテーマパーク「ハウステンボス」で毎年2月初旬から約2カ月間開かれる「100万本のチューリップ祭」で見られるもの。美しいヨーロッパの街並みや3連風車などを背景に、約700品種の色鮮やかなチューリップがどこまでも続きます。2000年の日蘭交流400周年に合わせてハウステンボスが命名した、「ハウステンボス」という品種が、今春に開催されたイベントで初登場。また、「光の王国」の別名にふさわしい約1300万球のイルミネーションに浮かびあがる夜のチューリップ畑にも心躍ります。煌びやかなイルミネーションは、宿泊する「ホテルオークラ JRハウステンボス」の客室からも楽しめます。
長崎市からハウステンボスへ向かう途中の「西海橋公園」で見られる花は、早咲きの河津桜。運が良ければ、濃いピンク色の花の蜜を求めてやってくるメジロやヒヨドリに遭遇できるかもしれません。
ハウステンボスの前に訪れる観光スポットは、208の島が散りばめられた九十九島。旅では、優美な島々を縫うように紺碧の海をめぐる遊覧船へご案内します。また、時間を忘れて見入ってしまうのが、長崎の「世界新三大夜景」。今回2連泊する「稲佐山観光ホテル」では、そんな夜景を一望できる客室をご用意しました。
長崎を旅したことはあっても、東シナ海に連なる五島列島まで足を延ばしたことのある方は少ないのではないでしょうか。最後にご紹介する旅は、手付かずの自然が残る五島に点在する、潜伏キリシタンの教会群をめぐる3日間の旅。今回は特別に、長崎大司教区認定の教会案内人・梅木志保さんによる詳しい解説とともにお楽しみいただきます。
大小150余りある五島列島の島々の中心は、福江島、久賀(ひさか)島、奈留島、若松島、中通(なかどおり)島の5つ。そこに約50もの教会があり、その多くで今なお信者の方々による篤い信仰が続いています。五島が、独特な雰囲気を湛える“祈りの島”となっていったきっかけは、潜伏キリシタンの移住。江戸幕府による禁教令後、「島原・天草一揆」を経て、キリシタンが厳しく迫害され続けるなか、外海(そとめ)地域の潜伏キリシタンが開拓移民として渡り、息をひそめ祈りが続けられたのです。
2018年、世界遺産に登録された「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の12の構成資産のうち4つが、五島列島に位置する集落や教会。この旅では、頭ヶ島(かしらがしま)の「頭ヶ島天主堂」、奈留島の「江上天主堂」、久賀島の「旧五輪教会堂」の3カ所の構成資産を訪れるほか、解禁後、五島にはじめて建てられたゴシック様式の天主堂などへもご案内します。
潜伏キリシタンが、最後の弾圧の嵐が吹き荒れるなかで隠れた「キリシタン洞窟」を船から見学した後、中通島で宿泊するのが「五島列島リゾートホテルマルゲリータ奈良尾」。眼下に美しい五島灘を一望する温泉大浴場や、幻の高級魚ともいわれるクエのしゃぶしゃぶの夕食をご満喫いただきます。
山懐の温泉から壮観なお花畑、息をひそめた信仰の島まで、九州の旅は心に深く響くものばかり。どうぞ存分にお楽しみください。
五島の旅でご一緒いただくのは、バチカンなどの神父の巡礼に同行することもある、福江島で人気の教会案内人・梅木志保さん。その土地ならではのキリシタンのお話、五島の歴史などを楽しくご案内いただきます。