[ 国内特集③ ]

隠岐諸島に誕生した「Entô」に泊まり
自然の恵みを味わう

地球の風景(ジオ・スケープ)を眺め
大地のダイナミズムにふれ

命の循環を感じる旅

企画=関尚美 文=槙原有希
  • イメージ イメージ 大きな額縁のような窓に雄大な風景が広がる「Entô」の客室(Photo by Kentauros Yasunaga)
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「何もない」という旅の贅沢を体感する宿へ

都市から遠く離れ、小さな島に流れる静かな時に身を置く、そんな旅はいかがでしょう。ここは島根半島から北へ約40から80キロに位置する隠岐諸島。特徴的な自然と文化と独自の地質があり、2013年に世界ジオパークに認定されました。

2泊3日の旅で連泊するのは中ノ島海士町(あまちょう)に昨年に誕生した「Entô(エントウ)」です。「隠岐ユネスコ世界ジオパーク」内に立つこのホテルは、大地のダイナミズムを感じる「泊まれる拠点」として注目を集めています。漢字で「遠島」と書くその名は、「遥か彼方、遠く離れた島」を意味しています。

島の歴史を遡ると、後鳥羽上皇をはじめ貴人の遠流の地と定められた時代がありました。都から離れているという理由だけでなく、作物も育つ豊かな地だからこそ、その役目を担っていたのです。時を超え、その名称には遠い島であることの誇りが込められています。

シンプルでナチュラルな客室はすべて海に面しています。目の前には島前(どうぜん)カルデラが広がり、壁一面のガラス越しに見える雄大な風景と一体化したような感覚となる空間です。朝は海に、夜は星空に包まれた時間をお過ごしください。島根県産の竹の歯ブラシや島の土でつくられた陶器など、自然の恵みを取り入れたアメニティからも環境に配慮するこだわりを感じます。

  • イメージ 客室は木の温もりを取り入れ、周囲の自然と隔たりがない空間(Photo by Kentauros Yasunaga)
  • イメージ 無彩色の真っ白い展示は本物にふれるための予習の場(Photo by Kentauros Yasunaga)
  • イメージ イメージ 客室は木の温もりを取り入れ、周囲の自然と隔たりがない空間(Photo by Kentauros Yasunaga)

古生物の化石が展示されたラウンジや、ジオパークについての知識を得ることができる展示室も必見。地球の歴史における隠岐の立ち位置を知り、島前三島(中ノ島・西ノ島・知夫里島)の魅力にふれる空間です。解説が最小限にとどめられた無彩色の展示は、実際に現場へ踏み出して本物にふれる前の予習の場となっています。現代アートのような展示に、想像力と好奇心が掻き立てられることでしょう。

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 隠岐の海と山を味わい 地球創造のロマンを体感

ダイニングでの夕食のメニューは、隠岐牛や季節によってブランド岩がき「春香」など、暖流と寒流が交わる豊かな海と、太古の噴火による肥沃(ひよく)な大地が育んだ隠岐の恵みが並びます。食材のほとんどは、島の生産者が自らの手でつくったり採取したりしたもの。その日の料理や食材から島を知り、島の人々との対話につながってほしいという願いが託されています。食体験を通して、命の循環を実感することができるのも、この島ならでは。ミネラル豊富な牡蠣殻と隠岐牛の堆肥を土壌の栄養として育った野菜やブランド米「海士の本氣」など、SDGs(持続可能な開発目標)を知るきっかけとなる食材が豊富です。今回のツアーでは、海産物の加工場でシイシビ(イカの一夜干し)づくりを体験します。

隠岐へは伊丹空港を経由し、往復とも飛行機を利用します。島から別の島へは一部チャーター船を利用し効率良く移動することで、3日間の旅程は、自然がつくり出した絶景をめぐる時間もたっぷり。ネイチャーガイドによるジオパーク講座や自然探訪での解説、国賀海岸にある断崖絶壁の摩天崖などの絶景を楽しみ、後鳥羽上皇の歴史残る隠岐神社の参拝へ。

隠岐への旅は、大地の息吹を全身で感じる壮大な体験です。

  • イメージ 日本海の激しい海食作用を受けてつくられた魔天崖は絶景スポット
  • イメージ 肉厚でクリーミー、濃厚な味わいのブランド岩がき「春香」