京で平清盛がこの世の春を謳歌している頃、伊豆の弱小豪族の次男だった北条義時は、源頼朝と姉・政子との出あいをきっかけに、時代の渦の中心へと押し出されてゆきます。ご紹介するのは武家政権誕生の時代を描いた大河ドラマの舞台を訪ねる2つの旅です。
豊かな自然が広がり、昔ながらの雰囲気が残る伊豆。北条氏や源頼朝ら今年の大河ドラマの主人公たちゆかりの地です。
平治の乱に敗れた頼朝は、14歳で流罪人として伊豆に流され、20年の月日を過ごしました。源氏再興を祈願するため通ったのが三嶋大社。古くから伊豆国一の宮として栄え、今も頼朝由来の神事が行われています。境内には頼朝が腰かけたと伝わる「腰掛け石」などが残され、頼朝亡き後も鎌倉幕府からあつく信仰されました。
北条義時やその父時政、姉政子らが生まれ育ったのが現在の伊豆の国市。名刹・願成就院は、点在する北条家ゆかりの史跡の1つで、頼朝の奥州合戦勝利を祈願して時政が建立しました。樹齢800年を超えるご神木「梛(なぎ)の木」は頼朝と政子の出あいの場とされています。必見は、運慶が手がけた5体の仏像(国宝)。躍動感ある姿で並ぶ様は圧巻です。義時によって建立された北條寺の本尊も慶派の仏師によるもの。政子が奉納した『牡丹鳥獣文繍帳(ぼたんちょうじゅうもんしゅうちょう)』も残されています。
お泊まりは、修善寺の宿「柳生の庄」。それぞれ異なったしつらえの純和風のお部屋は心地良く、温泉と京懐石を礎とする料理が自慢の人気の宿です。修善寺は、2代将軍となった源頼家終焉の地でもあります。早めのチェックイン後、ガイドによる歴史の話とともに、桂川沿いに続く竹林の小径の散策もお楽しみください。
日本史上初の武家政権が誕生した鎌倉は、今も緑深い山と海に囲まれた風光明媚な古都です。狭い地域に源頼朝や北条義時だけでなく、幕府を支えた御家人たちの足跡も多く残っています。
当時も今も鎌倉の中心となるのが鶴岡八幡宮。現在の本宮御社殿は江戸時代に造営されたものですが、歴史の舞台となった場所がたくさんあります。境内に入るとすぐ、頼朝が造営させたと伝わる源平池が迎えてくれます。本宮に向かう大石段の西側には、3代将軍実朝を暗殺するため、公暁が隠れていた樹齢約1,000年といわれる大銀杏がありました(2010年強風により倒伏)。境内にある鎌倉文華館 鶴岡ミュージアムにオープンした大河ドラマ館では、ドラマのメイキングシーンなども見られます。
頼朝の怒りを買い鎌倉入りを拒まれた源義経が滞在したのが、江の島の近くの腰越にある満福寺。義経はここで、頼朝に許しを請う「腰越状」を書いたと伝えられています。また、義時が建立した薬師堂を起源とする覚園寺も見逃せません。木立に囲まれ風格を漂わせる本堂は、往時を彷彿とさせる佇まい。義時を救ったとされる戌神将像ら十二神将像が本尊をお守りしています。
元々、源氏の御家人の荘園が広がっていた北鎌倉周辺にも、北条氏によって建立された名刹があります。その1つ、義時のひ孫、5代執権北条時頼が建立したのが、鎌倉五山第1位の格式高い禅宗寺院の建長寺。「建長汁(けんちん汁)」の発祥のお寺ともいわれています。
鎌倉でのご宿泊は、鎌倉パークホテル。湘南の明るい海を見渡せる、ゆったりした広さの客室で、ご自分だけの時間をゆっくりお過ごしください。