[ クルーズ特集① ]

WELCOME TO SERENADE 2

春のセレナーデ号の船旅
建築探訪記

企画=南家知文/寺澤欣吾/阿部遥奈 文=小野瀬宏子
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用途も歴史も さまざまなドイツの城

今回は寄港地での観光やクルーズ中に出あう個性豊かな建築に注目。その歴史や見どころをご紹介しましょう。

ドイツでは多くの古城が見られますが、本来の用途によって呼び方が異なります。ドイツ語で「城」を表す言葉は主に3つあり「ブルク」は要塞として使われていた城を指し「シュロス」は居住目的の山城、「レジデンツ」は宮殿です。

ライン河クルーズの寄港地、ハイデルベルクでは独特な魅力を放つ城へ。ハイデルベルク城は13世紀にプファルツ選帝侯の居城として建てられ、約500年にわたり多様な建築様式での増改築が繰り返されました。17世紀、戦争により破壊された後、外観の一部は再建されましたが、内部はほとんど修復されないまま。廃墟の美ショパンなどにもインスピレーションを与えたそうです。テラスから一望できるレンガ色の街並みもまた、郷愁を誘います。

ライン古城渓谷クルーズでは次々と城が現れますが、今回ご紹介するのは河の中州に立つプファルツ城。元々は船の通行税を徴収するために建てられました。徴税が不要になった後、1960年代までは航行船の信号塔として利用されたそうです。五角形の城の形は河の流れによる損傷や流木などにより城壁が壊れるのを防ぐ工夫だとか。古くから交易路として利用されてきた河の役割を今に伝える小さな城は、リバークルーズならではの見どころの1つです。

  • イメージ 芸術家たちも魅了されたハイデルベルク城
  • イメージ ライン古城渓谷クルーズ中に見られるプファルツ城

マイン河に程近いヴュルツブルクのレジデンツは、18世紀に建造された領主司教の宮殿。ナポレオンが「世界で一番美しい司教館」と称したことで知られています。特に有名なのが「階段の間」に描かれた世界最大級のフレスコ画です。四大陸を表現した絵画は迫力たっぷり。巨大な天井でありながら支柱が無い独自の設計にも、ぜひご注目ください。

  • イメージ イメージ 壮麗さが際立つヴュルツブルクのレジデンツ
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時を超えて守られる 祈りの空間

ライン河を望むケルン大聖堂はゴシック様式の建築として世界最大級です。初代の大聖堂が建てられたのは四世紀のこと。その後、火災や建て直しなどを経て、現在の大聖堂は4代目。財政難で資金が不足し、建設が一時中断されましたが、約600年を超える年月をかけて完成に至りました。

外観は細部にまで装飾がほどこされ、重厚な雰囲気を漂わせています。なかへ入ると、窓から差し込む陽光に包まれ、自ずと神聖な気持ちに。南側の側廊には、2007年に現代絵画の名匠、ゲルハルト・リヒターによってデザインされたステンドグラスがあります。厳かな空気に包まれながら、光と色彩の美しさをゆったりとご堪能ください。

  • イメージ イメージ ケルン大聖堂でリヒターのステンドグラスを見学

さらにライン河を進み、フランス・ストラスブールのノートルダム大聖堂は赤色を塗り重ねたような外観が特徴的。これは砂岩を使ってつくられたことが理由だそうです。こちらでの見どころの1つは、14世紀につくられた天文時計。月の満ち欠けや太陽の動き、うるう年なども計算でき、天文学的に非常に正確なもの。また、からくり時計になっていて、1日に1回、機械仕掛けの人形が目を楽しませてくれます。

  • イメージ イメージ 外観の色合いから「バラ色の天使」とも呼ばれるストラスブールのノートルダム大聖堂
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河と人々の暮らしをつなぐ ヨーロッパの橋

ハイデルベルクのネッカー河にかかるアルト橋(アルテ・ブリュッケ)は、ドイツ語で「古い橋」という意味です。元々は木造の橋がかけられていましたが、洪水により流失。当時のバイエルン選帝侯、カール・テオドールが石橋の建造を命じたことから、カール・テオドール橋とも呼ばれるようになりました。全長約200メートルの橋のなかほどからは、山間に佇むハイデルベルク城を望み、写真撮影にもおすすめです。

  • イメージ イメージ アルト橋から望むハイデルベルク城は必見

ストラスブールでは旧市街のなかを流れる運河を遊覧船でクルーズ。そこで遭遇するのがフェザン橋。狭い運河を船が航行できるように橋自体がぐるりと回転するユニークな構造です。

また、ヨーロッパのリバークルーズならではの建築といえば、閘門(こうもん)があげられるでしょう。マイン河で多く見られ、船が通過できるように水量の高低差を調整する仕組みになっています。時には幅が狭い閘門もあり、船が通れるかな?とドキドキするような楽しさも。大小さまざまな橋や閘門の存在は、河と共存する暮らしの象徴ともいえます。街なかやクルーズ中に見つけたら、それらがつないできた時の流れに思いを馳せてみるのも一興です。

  • イメージ ストラスブールのプチ・フランス地区にあるフェザン橋
  • イメージ マイン河クルーズでは閘門通過も楽しみ