日本生まれのラグジュアリークルーズブランド、クリスタル。大規模な改装を経て、2023年に運航を再開しました。2隻の客船「クリスタル・セレニティ」「クリスタル・シンフォニー」の魅力や船でのおすすめの過ごし方について、販売代理店セブンシーズリレーションズの榎本律子社長にお話をうかがいます。
― 数あるラグジュアリークルーズのなかで、クリスタルはどのような特徴を持ったクルーズラインでしょう。
榎本 自らを「ラグジュアリー」と語らない、ということでしょうか。あえて言わなくても、お客さまが「この船は洗練されていて上品だ」と感じ、お1人おひとりが、「自分の船」として親しみを抱いてくださる。そんなサービスを提供する奥ゆかしいクルーズだと思いますね。このクラスには珍しい無料のランドリーもあります。1度廃止しようとしたらお客さまから存続のリクエストがあったのです。長い船旅では、自宅のように過ごされたいお客さまが多いのでしょう。肩肘張らずに乗れるラグジュアリー客船の証だと思います。
― 日本由来の客船であるということも関係しているのでしょうか。
榎本 もともと日本の郵船クルーズが手がけていましたが、2023年に2度目のオーナー交代があり、富裕層に特化したアメリカの旅行会社アバクロンビー&ケント(A&K)が2隻の客船「クリスタル・セレニティ」「クリスタル・シンフォニー」の運航を再開、今に至ります。オーナーが変わっても、「和(わ)」の心でおもてなしする伝統は受け継がれていると感じます。
― 客船は大幅に改装されましたね。
榎本 はい、運航再開に向け、改装に大きな投資をしました。最大のポイントは、部屋の数を減らし、ゆとりのある客室デザインとしたことです。公共スペースも広々とした設計にしました。ゆったりとした空間でのんびり優雅にお過ごしいただくのに最適な客船に生まれ変わっています。
― クルー1人あたりのお客さまの人数が1.1人という数字は、同船のサービスの質を示していますね。
榎本 その通りです。どこにいても困っているとクルーがすぐに声をかけてくれるし、食事の際も、よく目を配り、実に良いタイミングで料理を運んできてくれます。名前を覚えてくれることにも感心しますね。各室にバトラーが付くので、さらにきめ細かなサービスが提供されています。
― 日本人は言葉の問題もあり、なかなかバトラーサービスを使いこなせないという方も少なくないようですが。
榎本 彼らはサービスのプロですから、英語が苦手なお客さまがいらしても、全力で要求を理解してくれますのでどうかご心配なく。私など1人で乗船した際、ドレスを着るのに肩が痛くて背中のファスナーが上げられず、助けを求めたことがありました。「マダム、素敵ですよ」と、良い気分にさせてくれることも忘れません(笑)。
― レストランも多いですね。
榎本 このサイズの客船に飲食施設が9カ所というのは驚くべきおもてなしです。そのなかには松久信幸シェフ監修の「ウミウマ」もあります。世界に知られるレストラン「ノブ」の味が楽しめる唯一の海上レストランですから価値があると思いますよ。メインダイニングも、ここだけで十分にご満足いただける質の高さ。このほか、気軽なビュッフェ、ビストロ、大人気のアイスクリームバーなど食の楽しみは尽きません。レストランに行くのが面倒という時はインスイートダイニング(ルームサービス)がおすすめです。メインダイニングのメニューをバトラーがコース料理としてお部屋で提供してくれるので、寛いでお食事ができます。
― ドレスコードについては?
榎本 日中は「カジュアル」で、午後6時以降「イブニングリゾート」になりますが、男性ならネクタイなしでシャツだけでも大丈夫。1航海に1度程度の「フォーマルナイト」は、タキシードを着こなす紳士もいれば、スタンダードなスーツで装う方もおられます。女性はワンピースの方が多いですね。もちろん着飾るのも楽しいと思いますよ。
― 終日航海日のおすすめの過ごし方はありますか?
榎本 ゆったりした船内でお好きな飲み物を片手に思い思いにお過ごしいただければと思いますね。あと、日本プロゴルフ協会所属のプロが乗船していて無料でレッスンをしてくれるので、ゴルフをされる方はぜひ。海上でボールを打つのはとても気持ちがいいですよ。プロのダンサーによるレッスンも大好評です。社交ダンスからサルサまで数日おきに違うジャンルのレッスンがあるので、楽しみにされる方が少なくありません。知らないお客さまとの交流も楽しいのではないでしょうか。
― 航路も独特ですね。
榎本 運航会社のA&Kはもともと富裕層向けアフリカン・リゾートの開発から始まった会社なので、クルーズにもその歴史が生かされていると思います。優雅な乗船体験とともに、クリスタルならではのユニークな航路をお楽しみいただければと思います。
ロビーに足を踏み入れて最初に驚いたのは、天井から流れる滝。船内にはゆったり優雅な雰囲気が漂っていました。各所に椅子が配置されているので、お気に入りの場所もすぐに見つかりそうです。船が大きすぎないので歩きやすく、施設の場所もすぐに覚えられ、当社のお客さまにとってもほど良いサイズ感ではないかと思います。2023年の改装だけあって、船内の柱にタッチパネル式の船内新聞が設置されているなど、使い勝手の良さも随所で感じました。
各施設は華美でなく落ち着いた感じ。最も印象に残ったのは客室です。見学した「サファイア・ベランダ・スイート」と「アクアマリン・ベランダ・スイート」には洗面台が2台備えられていて、ご夫婦で参加されるお客さまなどにはとても便利そう。「サファイア・ベランダ・スイート」のシャワーブースは広いうえに腰かけられるスペースがあるので、ゆっくりお使いいただけるのでないでしょうか。
レストランはバラエティ豊かです。数が多いだけでなく、どこもおいしそうで魅力的。私は最上階のラウンジ「パームコート」でアフタヌーンティーをいただきましたが、見晴らしの良い場所での幸せなひと時を過ごせました。そして最大の注目は、「ノブ」こと松久信幸シェフが監修する「ウミウマ」。松久シェフの店は世界中どこも予約が大変と聞きますが、この船に乗れば、予約も簡単なうえ追加料金もなし。同船の価値をあらためて感じた見学会でした。