[ 国内特集② ]

企画担当・高橋京子がご紹介する
「或る列車」の魅力

幻の豪華車両で味わう
コース料理と優雅な時間

企画=高橋京子 文=佐藤淳子
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輝く車体に見事な内装 行き届いたサービス

列車の旅にご興味のあるお客さまにぜひともご紹介したいのが、JR九州運行の「或る列車」です。2015年に誕生したこの観光列車は、豪華な車両や車内で提供されるスイーツのおいしさで人気を博してきましたが、昨秋からコース料理の提供を開始し、今改めて注目を集めています。

  • イメージ イメージ 木の温もりを感じさせる1号車。格天井が優雅な空間を演出

この列車のすばらしさは、まずはその車両そのものにあります。そもそものはじまりは明治末期。九州鉄道(当時)がアメリカに客車を発注し、当時の日本で最も豪華といわれる客車が完成しますが、九州鉄道が国有化されたことで運行の機会が失われてしまいます。それから100年以上もの時を経て、2両編成の観光列車として蘇ったのが「或る列車」なのです。時に“幻の列車”と呼ばれるのはそのため。鉄道模型の神様といわれた故・原信太郎さんが作成した模型をもとに、「ななつ星 in 九州」の設計者でもある水戸岡鋭治さんがデザイン・設計を手がけています。

私は2018年に添乗で乗車しましたが、それはすばらしい体験でした。感動は、その輝く車体が入線した瞬間から。レトロモダンな内装も見事です。繊細な組子細工やステンドグラスがあしらわれた車内にはやわらかな陽光が差し込み、優雅そのもの。カウンターや廊下など細部にまで凝った内装が施され、その1つひとつを写真に納めるお客さまも多くいらっしゃいました。

サービスの質の高さにも脱帽です。乗車時には、常に笑顔を絶やさないクルーがレッドカーペットの上を丁寧に車内へエスコートしてくれて、自分が特別な存在になったような気分になったことを覚えています。

  • イメージ イメージ 黄金と黒を基調にした「或る列車」が由布岳を背景に走る
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1つひとつの料理が こだわりの器に

食事のすばらしさはいうまでもありません。丹念につくられたスイーツは、いずれもこだわりの器に美しく盛り付けられ、舌だけでなく目も楽しませてくれます。メニューと照らし合わせながら、1つひとつをじっくり味わう幸せな時間になりました。フリードリンク制の飲み物も、地元産のお茶や柑橘類のジュースなど種類が豊富で、食事ごとに注文して全種類を制覇してみたくなるほど。グラスが空になる頃にさりげなく声をかけてくれるクルーの気遣いで、食事や会話が遮られることもありません。ご一緒したお客さまからは、「夢のような時間でした」とのお言葉をいただきました。

この列車で、今度はお食事のコースが楽しめるようになるなんてまさに夢のようです。

コース料理の監修は、ジャンルを越えた唯一無二の料理で知られる東京・南青山のレストラン「NARISAWA」の成澤由浩シェフ。前菜、お魚料理、お肉料理、スイーツ、ミニスイーツと続く料理に使われるのは、いずれも成澤シェフが厳選したこだわりの食材。それらを彩る器も、九州の職人さんたちが列車のために製作したオリジナルだそうです。九州産の食材と器、その一品一品が会話を弾ませてくれることでしょう。

  • イメージ イメージ 旬の食材を使ったコース料理。メニューは季節ごとに変わる予定(写真は今年2月までのもの)
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組子細工体験と列車三昧 趣の異なる2つのコース

今夏出発のツアーでは、この「或る列車」の貸切り乗車をメインに、A・B2つのコースをご用意しました。

Aコースでは、「或る列車」の車内に使われている大川組子の細工をご体験いただきます。釘などの接合道具を使わずに細かな板を組み上げる大川組子は、約300年の歴史を有する伝統工芸。「或る列車」の内装を手がけた職人さんのお話に耳を傾け、緻密な細工を体験することで、翌日のご乗車時には、より感慨深く車内をご覧になれるのではないでしょうか。Aコースは歴史を感じていただける旅程でもあります。初日の宿は、柳川藩主立花家の別邸としての歴史を持つ福岡県柳川市の旅館「御花」。柳川の町とともに、情緒あふれる宿での滞在をお楽しみください。最終日には、江戸時代の風情を残す大分県の城下町・杵築(きつき)で、武家屋敷の大原邸を訪ねます。

  • イメージ 「或る列車」の内装に取り入れられた大川組子の緻密な細工
  • イメージ 内装を手がけた木下木芸を訪れて組子細工を体験するコースも
  • イメージ 由布院の「山荘わらび野」。客室でいつでも温泉が楽しめる
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Bコースは、列車好きのお客さまに、よりご満足いただける内容となっています。初日は東京駅から小倉駅まで新幹線の旅(飛行機のご利用を希望されるお客さまには現地発着プランもご用意しています)。到着後は、九州鉄道発祥の地に建つ九州鉄道記念館で、往年の実物車両の見学などをお楽しみください。そして翌日は、博多駅から由布院駅まで「或る列車」に乗車、その翌日には「特急ゆふいんの森」で逆ルートを戻ります。豪華な車両、車窓を流れる風景、車内でのお食事など、鉄道旅の醍醐味を存分に味わっていただける旅程だと思います。

両コース共通のお楽しみはまだあります。Aコースでは、敷地内に源泉を持つ由布院温泉の宿「山荘わらび野」、Bコースでは、海に面した別府上人ケ浜温泉の「AMANE RESORT SEIKAI」にそれぞれお泊まりいただき、客室に備えられた半露天風呂でゆったり温泉をお楽しみいただきます。旅の途中で立ち寄る別府の神楽女湖では、花菖蒲がちょうど見頃を迎えます。初夏の九州を、列車とともにぜひご満喫ください。

  • イメージ 往年の鉄道車両の展示が楽しめる九州鉄道記念館
  • イメージ 別府の名勝地の1つ、神楽女湖。6〜7月は花菖蒲が見頃に
  • イメージ イメージ 博多・由布院間を「或る列車」と「ゆふいんの森」で往復するコースも(写真の列車は「ゆふいんの森」)