ゆったりと長期滞在し、暮らすように楽しむ。そんな新しい旅が、富山県の情報発信拠点「日本橋とやま館」とのコラボレーションで実現しました。今号では、企画担当・飯尾賢一が、現地の方とふれあいながら視察し、完成させたプランをご紹介いたします。
4月号で長期滞在の新しい旅についてお知らせした頃、私は富山市とその周辺の町を幾度となく訪れていました。そして、今回ご協力くださった「日本橋とやま館」を通じ、地域でご活躍されるたくさんの方々や、魅力あふれる場所とつながることができました。
感動に満ちたさまざまな体験と出あいを重ねて完成させた、夏のツアー。今回、いよいよそのプランの内容をご紹介します。
ツアーは、2つのコースをご用意しました。富山市に連泊する5日間のAコース、さらに周辺の町も訪ねる2日間を加えたBコースです。
初日に富山駅へ到着した後は、「やまふじぶどう園ホーライサンワイナリー」にてウェルカムパーティーを催します。こちらは、北陸で最も歴史あるぶどう園とワイナリーです。地元でとても愛されているため、自慢のワインはそのほとんどが富山で消費されてしまいます。県外ではなかなかお目にかかれない貴重なワインと、富山の家庭料理、収穫がはじまったばかりの旬のぶどうを味わえる贅沢なひと時です。先日まで人気を博していた朝の連続テレビ小説のトランペット指導を担当し、ご自身も出演されていたMITCH(ミッチ)さん率いるジャズバンドの演奏とともに、お楽しみください。
ご宿泊は、今年3月に開業したばかりの新たなランドマーク「ホテルヴィスキオ富山」です。4連泊で楽しむ旅の拠点となる、富山駅隣接の便利なホテルを選びました。4階までの低層は商業施設で、富山の魅力を物語る、今注目のお店が集まっています。
2日目からは、終日自由行動です。スケジュールがあらかじめ決められていない旅が、ここからはじまります。富山市は町の中心に魅力的なスポットが数多く集まっているので、ホテルからの徒歩圏内だけでもたくさんの見どころがあります。いくつかご提案するプランを参考にしながら、まずは地元の方が慣れ親んでいる場所を散策してみましょう。
町のシンボルである富山城は、内部が郷土博物館になっていて、富山の歴史をわかりやすく紹介しています。隈研吾さん設計の、斬新ながらも木の温もりを感じる富山市ガラス美術館も、ぜひ訪ねてみてください。併設のおしゃれな図書館、そのなかのカフェなど、地域の人が友達や家族と楽しく過ごしている心地良い空間を体感していただけることと思います。また、この辺りが「総曲輪(そうがわ)」というエリアであることを覚えておかれると良いでしょう。人気の飲食店が集まっていて、本格イタリア料理、割烹料理など、地元で愛されているグルメを気軽に楽しめます。
水辺の空間が広がる富岩運河環水公園では、地元の方々が日々の暮らしのなかで楽しまれているように、朝の散歩などをしてみてはいかがでしょうか。
ホテル周辺を散策したら、公共の乗り物を使って近場の町へと出かけてみましょう。地元の足として親しまれる、路面電車に乗るのがおすすめです。市内と港町の岩瀬地区を結ぶ富山港線なら、20分ほどで東岩瀬駅に到着。そこには、北前船の交易で栄えた歴史を物語る町並みが広がります。個性豊かな新しい店がオープンしているのも大きな魅力です。
帰りは岩瀬浜から、遊覧船「富岩水上ライン」に揺られて戻るのはいかがでしょう。運河沿いにゆっくりと、富岩運河環水公園までの水辺の景色を満喫できます。
もちろん近場だけでなく、ちょっとした遠出もお楽しみいただけます。今回のための特別な観光・体験プラン(事前予約制・送迎付)へご案内いたします。
たとえば、富山駅から車で30分ほど、立山の麓にある「ヘルジアン・ウッド」。モダンながらも田園に調和する佇まいの建物は、ハーブをテーマにした新名所です。立山連峰を望みながら、アロマ香るバスソルトづくりの体験など、心身を癒すひと時を味わっていただければと思います。
富山市での5日間、さらに2日間の滞在を加えたBコースでは、石川県と県境を接する南砺(なんと)市、高岡市へご案内します。
金沢にほど近いこのエリアは、江戸時代から栄えた絹織物などの伝統工芸を今に伝えています。古い蔵や石畳が残る南砺市の城端(じょうはな)地区は、しっとりとした情緒にあふれ、越中の小京都と呼ばれるのもうなずける話です。この町では、明治10年に創業し、絹織物をつくり続ける老舗「松井機業」を訪れ、貴重な匠の技にふれたり、シルク製品などで知られるオリジナルブランドのお買物を楽しんでいただけます。
高岡市では、金属工芸の体験もご用意しました。金屋町の「大寺幸八郎商店」では、柔らかくて不思議な触感の錫(すず)を使ったオリジナルアクセサリーやキーホルダーづくりを。または、仏像からインテリアまでさまざまな鋳造品の着色を手がけてきた老舗「モメンタムファクトリー・Orii」で、米ぬかを使った独創的な着色技法など、お好みの体験をお選びください。
地域の方とつながったからこその観光・体験プランは、ほかにもいろいろとご用意しております。地元の人気カメラマンであるイナガキヤストさんとの撮影ツアーも、ぜひご参加ください。落差日本一、迫力満点にしぶきを上げる称名滝など、絶景の地でプロとともにシャッターを切る時間は、特別な想い出になることでしょう。
最後にご紹介するのは、富山湾の宝石といわれるシロエビの漁の見学です。国内でシロエビ漁ができるのは、富山湾に面した2つの港のみ。今回はその1つ、新湊から出航します。うんと早起きをして、漁師さんたちと出かけましょう。シロエビはとても繊細で、獲れたての透き通った姿を見られるのは海から引き揚げられたその瞬間だけ。漁場から港へ戻るわずか15分のうちに、白っぽく変化してしまいます。獲れたての透明なシロエビを船上で味わうひと時は、この上ない贅沢です。
ここで暮らす人々のように、お天気を見て「今日は何をしよう?明日はどこへ行こうかな?」と考え、楽しむ。そんな富山の旅を、これからもお届けしていきます。まずは第1弾の夏、ぜひこの新しい旅をご体験ください。