[ 国内特集③ ]

山形・寒河江の清らかな自然に抱かれて

佐藤繊維が究める
モノづくりの世界へ

企画=小森一輝/関尚美 文=浅見浩司
  • イメージ イメージ 四季折々の美しい大自然が、豊かな文化と歴史を育む山形県寒河江市

山形といえば、蔵王や羽黒山をはじめとする雄大で神秘的な自然、レトロな趣のある温泉街、米沢牛やさくらんぼといった特産グルメなどを思い描く方が多いのではないでしょうか。今回ご紹介する山形の旅のハイライトは、そんな観光スポットと趣を異にする、クリエイティブなモノづくりの世界。紡績とニットの分野で世界中のラグジュアリーブランドを魅了する「佐藤繊維」を訪れます。代々、山形・寒河江(さがえ)の地にこだわり、糸とブランドの常識に挑み続けてきた、独自のモノづくりへの熱い想いを4代目社長の佐藤正樹さんに伺いました。

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佐藤繊維株式会社 4代目
佐藤正樹社長
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1966年山形県生まれ。

日本大学山形高校から文化服装学院に進学し、卒業後アパレル会社に就職。

1992年に佐藤繊維に入社し、2005年に4代目社長に就任した。

天然素材からつくる独自の糸の開発やニット製品のブランド化に成功し、

国内外の高級ブランドと取引する。

日本ニット工業組合連合会の理事長や寒河江市観光物産協会の会長を歴任。

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イタリアで衝撃を受けた糸職人の誇りとこだわり

山形・寒河江の地で紡績とニット製品の製造を行う佐藤繊維が世界中から脚光を浴びるきっかけとなったのは、2009年1月のオバマ元アメリカ大統領就任式。その際、ミシェル大統領夫人が着ていた黄色いカーディガンに使われていた糸が、佐藤繊維の極細モヘヤ糸『Fuuga(フーガ)』だったのです。

「映像を見ると、その糸は紛れもなく私たちの『Fuuga』でした。感激で心が震えたのを昨日のことのように覚えています」と佐藤社長は振り返ります。

佐藤繊維の創業は、1932(昭和7)年。現社長の曽祖父が、羊を飼いながらウールを原料とする紡績会社を起こしたのがはじまりです。その後、1964年に3代目社長がニット製造部門を新設し、レディスニットウェアをつくるようになります。

「4代目を継ぐために私が会社に入った頃までは、繊維産業が時代の花形で、会社も活況を呈していました」と佐藤さん。しかし、アパレルメーカーが生産拠点をコストの安い中国に求めるようになったことで、下請けの立場にあった会社はたちまち苦境に陥ります。

「ついには、余った糸でつくったオリジナルのセーターをトラックに積んで、妻と山形中を売り歩きました。必死でしたね」と佐藤さん。しかし、そんなふうに自分でつくることで、モノづくりの奥の深さや提案する面白さを知ることにもなったといいます。そんな厳しい状況のなか、偶然出あったイタリア製の風変わりな糸に惹かれ、すぐにフィレンツェにある工場を訪ねたことが1つ目のターニングポイントに。

「その独創的な糸のつくり方を聞くと、自分たちがつくりたい糸を紡げるように、彼ら自身で機械を改良したというのです。さらに“糸のクリエイターである自分たちがファッションのもとをつくっているんだ”という誇りとこだわりにも衝撃を受けました」という佐藤さんは、そこから今までの歴史にないものを自らの手でつくる思いを強くしたといいます。

  • イメージ イメージ オリジナル糸の開発からニット製品づくり、ブランド展開までを網羅する佐藤繊維
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ニューヨークではじめての自社ブランドを発表

イタリアから帰国後、佐藤さんは、世界のどこにもない魅力的な糸の開発にのめり込んでいきます。そして粘り強い取り組みの末に完成させたオリジナルの糸やニット製品の数々を、東京で開かれたアパレル展示会に出展します。

「この展示会が私の2つ目のターニングポイントです。そこでたくさんの反響や失敗を体験できたからこそ、2001年にはじめての自社ブランド『M.&KYOKO』をニューヨークでスタートする決意ができたし、世界のラグジュアリーブランドからサンプル依頼が殺到した極細モヘヤ糸『Fuuga』を生み出すことができたんだと思います」と佐藤さんは話します。

現在、佐藤繊維が手掛けているのは、オリジナルの糸やテキスタイル、ニット製品などの開発と製造、製品デザイン、独自ブランドの展開、直営店舗、セレクトショップまで、まさにファッションに関わるすべてのこと。世界のトップデザイナーが佐藤社長に会いにやって来るのは、そんなすべてを知る者だけが持つ、クリエイティブなモノづくりの真髄にふれたいからかもしれません。

  • イメージ イメージ 佐藤繊維の自社紡績工場における精紡工程
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山形らしいモノづくり、ショップ、レストランを

今回の旅では、佐藤社長から長年突き詰めてきたモノづくりについての興味深いお話を伺うとともに、本社併設の工場見学にもご案内します。また、ゆっくりご覧いただきたいのが、かつて佐藤繊維が工場として使っていた築100年以上の石蔵をリノベーションしたセレクトショップ「GEA(ギア)」。山形の自然、文化、伝統、技術と新しい感性の結晶としてのモノづくりにこだわる佐藤社長の想いとマッチした、山形の伝統工芸品や新進気鋭のクリエイターの作品などほかではなかなか手に入らないアイテムの数々をラインアップしています。

  • イメージ イメージ 寒河江と世界をつなぐ文化発信拠点「GEA」
  • イメージ 世界の最新ファッションを集めた「GEA1」
  • イメージ 山形の工芸作品や雑貨などを揃えた「GEA2」

さらに、夕食は、山形の豊かな食の恵みを堪能できるレストラン「GEA0053」へ。山形の食に魅了されたシェフが、新鮮な旬の食材をふんだんに使って創作するイタリアンベースのコースディナーをお楽しみいただきます。また、お土産にぴったりのGEAオリジナル食品もおすすめです。

  • イメージ イメージ 山形の旬を味わうレストラン「GEA0053」
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1000年の歴史を持つ巨刹と上空から眺める蔵王の紅葉

1泊2日のツアーでは、山形が誇る2つの観光名所にご案内します。その1つ目は、東北有数の巨刹として知られる「瑞宝山 本山慈恩寺」。746年、聖武天皇の勅命によりインドの婆羅門僧正(ばらもんそうじょう)が開山したといわれ、江戸時代には本堂を取り囲むように3カ院と四八坊の屋敷が建ち並んでいたという壮大な一山寺院です。旅では、1618年に山形城主最上氏によって再建された茅葺屋根が美しい本堂をはじめ、薬師堂、阿弥陀堂、三重塔といった、江戸時代の姿そのままの文化財をめぐります。

今回訪れるもう1つの観光スポットは、息を呑むような紅葉が広がる蔵王の大自然。黄色、橙色、赤、煉瓦色のグラデーションを描くダイナミックな景観を、ロープウェイで上空からご覧いただきます。

世界の一流ブランドが注目するモノづくりと、1000年を超える歴史文化、大自然の壮麗なドラマを、秋の山形でご満喫ください。

  • イメージ イメージ 名画のような紅葉を上から眺められる蔵王ロープウェイ
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日本橋三越本店
営業統括部第二営業部本館4F
婦人服担当バイヤー 小梅 雅由さん
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百貨店でも人気のFUGA FUGAのクリエイションの原点、
山形の繊維工場を訪れる旅。私もおすすめします

独自の目線と自由な発想で極細のモヘヤを生み出し、世界で認められた佐藤繊維。糸づくりから製品仕上げに至るまで「日本のモノづくり」にこだわり生み出された製品は、オリジナリティ豊かでどれも魅力的なモノばかりです。今回のツアーでめぐる工場見学は、その生みの親である佐藤正樹社長のご案内でこだわりの原点にふれることのできる貴重な体験になると思います。