[ 海外特集① ]

REPORT
当社社員による現地レポート 第3弾

古澤雅史 ポルトガル視察記

世界を制した小国ポルトガル

企画=古澤雅史 文=古澤雅史
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後に「航海王子」と呼ばれるエンリケの像が見つめる先は大西洋なのだろうか。

かつて彼がその礎を築いてから大航海時代の幕が開け、ポルトガルは黄金期を迎えていく。間もなく、彼らは種子島にもやってくるが、その約100年後、我が国は扉を閉ざしてしまう。大きなモニュメントの先頭でカラベル船を抱え立つエンリケ、ヴァスコ・ダ・ガマ、マゼラン……久しぶりに再会した大航海時代の勇者たちからは、「早く世界に出るがよい」と、メッセージが発せられているかのようだった。6月中旬、“プレ”アフターコロナに湧くポルトガルへ視察に赴いた。実に2年半ぶり。

いささかおこがましいが、この視察がアフターコロナの「大航海時代」幕開けになることを期待して……。

  • イメージ イメージ 大航海時代の勇者が並ぶ発見のモニュメント。先頭に立つのはエンリケ航海王子 
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五感を満たして潤いを 2年半ぶりのヨーロッパ 

今、ポルトガル北部の街ポルトのホテルで、この視察記の原稿を書いています。早いもので、ポルトガルに入って今日はもう5日目、最後の夜。久方ぶりの海外を満喫しようと、朝から晩まで歩き回ったせいか、足腰は悲鳴を上げています。早起きして地下鉄に乗り、夜は夜景の撮影へ。コロナ禍でも運動は欠かさなかったつもりですが、ヨーロッパ特有の石畳は、それなりにこたえたようです。

しかしながら、この心地良さはなんでしょうか。朝のピリッとする涼しさは体を引き締め、コーヒーの香りが鼻の奥まで入り込んでくるようです。夜、若者がビール片手に集う広場で見せる笑顔すら懐かしい気がします。

この時期に海外にいられる幸せを、スカイニュース読者の皆さまに余すことなく伝えたい、その一心で、カメラに収めたポルトガル北部の「至宝」をご紹介します。

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世界遺産の街を眺めるヴィラ・ノヴァ・デ・ガイア

先ほどポルトのホテルと申しましたが、正確にはドウロ河を挟んでポルト対岸のヴィラ・ノヴァ・デ・ガイア地区にあるホテル「ザ・イエットマン」に滞在しています。周囲にはポートワインの醸造所がいくつも並んでいます。

ここは「ルレ・エ・シャトー」加盟のホテルで、世界遺産ポルト歴史地区の全景を眺めることができます。滞在中、朝に夜にレストランや客室のテラスから、世界遺産の街並み全体を眺められるのは贅沢なひと時。世界を見てもこんなホテルは多くありません。

  • イメージ イメージ 青空にオレンジ色の屋根が映える。ヴィラ・ノヴァ・デ・ガイアからの眺め

ポルト歴史地区は世界遺産のため、新たな建築が許可されていません。そこで近年、このガイア地区に、モダンなホテルやレストランが新設されています。

「ザ・イエットマン」はポルト側のサン・ベント駅から地下鉄で1駅の立地。地下鉄といっても、乗車後すぐ地上に出て、ポルトとガイアの両方の街を眼下に望める絶景トレインです。朝は早起きして、ポルトの街歩きに出発。ドウロ河にかかるドン・ルイス1世橋を歩いて渡りながら、景色を悠々と楽しみました。そしてカフェで一杯。こんな朝も久しぶりです。

  • イメージ 「ザ・イエットマン」はセレブ御用達ホテル。美しき古都ポルトを全客室から望む
  • イメージ ポルトの夜景。手前のドン・ルイス1世橋は鉄道の線路を歩いて渡ることができる

今やポルト一の観光名所になったレロ書店には、開店前に入れてもらいました。外は長い行列となっていて、申し訳ない気持ちと優越感と……。ここは、とある映画で一躍有名になったのですが、書店というよりミュージアムのような美しさです。

アズレージョ(装飾タイル)のきれいな教会も訪れました。アルマス教会とカルモ教会の壁面が見事です。大聖堂前でふと見かけた子どもたちの遠足も楽しそうで、どの国でもその笑顔には癒されます。

  • イメージ イメージ 世界一美しい書店といわれる1869年開店の「レロ書店」。中央の階段が美しい
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エッグタルトだけじゃないスイーツ天国ポルトガル

日本に専門店もあるエッグタルトなど、ポルトガルスイーツはもはや知られるところです。ポルトの南に位置する街アヴェイロで、ショーウィンドウにひかれて立ち寄ったのが、名物「オボシュ・モーレッシュ」の老舗。ポルトガル風卵モナカとでもいいましょうか。船や貝殻など独特の形のモナカ皮に砂糖で味付けした黄身がキュッと詰められていて、ほんのりした甘さが口のなかに広がります。日持ちするのがありがたく、賞味期限は10日ほどあるのもうれしい限り。アズレージョ風の箱もポルトガルらしく、お土産に最適です。ほかにもカステラのルーツ「パン・デ・ロー」は、日本のカステラよりもふんわり柔らかく、甘さ控えめで日本人の口によく合います。

どこに行っても、その地域独特の料理との出あいがあり、それぞれのレシピでつくられるのが飽きのこないポルトガル料理の秘訣です。

  • イメージ イメージ アヴェイロの銘菓「オボシュ・モーレッシュ」。箱も美しくおしゃれなお土産に
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世界的ワインの産地 美しき世界遺産、ドウロ河流域

河口の街ポルトからドウロ河を遡り50キロ余り。ここがポートワインのふるさと。ドウロ河両岸に広がるぶどう畑で栽培されたぶどうだけが、ポートワインを名乗ることができます。

今回、ドウロ河流域の世界遺産になっている地区を訪ねました。河の両側斜面にぶどう畑が広がるピニャオンの美しい景色は、クルーズでも人気。水門を通りながら時間をかけてポルトまで行くクルーズもあれば、スペインとの国境付近まで行く宿泊を伴うクルーズもあり、多くの客船が行き来しています。SL列車も走るピニャオン駅舎のアズレージョは見事で小さな美術館のようでした。

ここでのドウロ河とぶどう畑の織り成す風景を見ながらの食事は最高の贅沢です。周辺には、ホテルを併設した多くのキンタ(ぶどう農園)があります。大きな樽が客室になっているホテルもあると聞き、ちょっと覗いてきました。ぶどう畑を見ながらの一夜は素敵な思い出になることでしょう。

  • イメージ ドウロ河畔のぶどう畑の風景などが描かれたピニャオン駅のアズレージョ
  • イメージ 街を見渡す丘に建つポルトの大聖堂。
    回廊のアズレージョも見事
  • イメージ 穏やかに蛇行しながらポルトガル北部を横断するドウロ河流域のぶどう畑
  • イメージ 広大なぶどう畑に、ホテルの客室として利用されている大きな樽が並ぶ
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小国ポルトガルは再訪の国へ観光でも世界を制す

今やヨーロッパの国々への訪問は、短い時間にすべてを慌ただしく見るのではなく、エリア別訪問が当たり前になりました。国土の小さいポルトガルですが、見どころに富み、一度の訪問で好きになる方は少なくありません。食文化が日本と似ており、魚介を用いた料理が多く、パンも薄くて柔らかく日本人好み。ポルトガル料理は素朴でおいしいと感じる方が多いようです。やはり食べることは、その国の印象を左右することになるのでしょう。

リスボンからポルトまでを陸路で走れば、世界遺産の修道院に数多く出あえます。そんな周遊型のコースもおすすめですが、今回の視察を経て、北部ポルト周辺とドウロ河流域をじっくり訪ねる、ポルトガル再訪の旅を企画中です。ご期待ください。

  • イメージ かわいらしい伝統衣装を羽織るナザレの女性をパチリ。頭のスカーフと刺繍が印象的
  • イメージ ストライプの家壁がかわいらしい
    コスタ・ノヴァは小さなリゾート地
  • イメージ アヴェイロ近郊の街コスタ・ノヴァのレストラン。元漁港なだけに魚介が絶品
  • イメージ コルクに刺繍、アズレージョや貴金属など、ポルトガルは雑貨めぐりが楽しい

ポルトガル入国は、日本がファストトラック対象国だったこともあり、拍子抜けするほどスムーズ。本日現在、日本はまだ「開国」しきれていませんが、親日家の多いポルトガルでは、各地で早く開けてほしいという声が聞かれました。ホテルのエレベーターで居合わせたニュージーランド人は「日本には毎年行っているよ。京都に日光、ニセコ。でも今は行きにくいから、今年はポルトガルさ」。

待ち遠しいのは諸外国の方も同じ。一刻も早く、海外との往来が活発化することを望みながら、筆を置くことにします。

  • イメージ 街中を運河が流れ、モリセイロと呼ばれるカラフルな小舟が行き交うアヴェイロ
  • イメージ 北部のヴィアナ・ド・カステロも今回視察。ポサーダから大西洋を望む