[ 三越創業350周年特別企画 ]

三越創業350周年プレ・オープニング企画

松阪から京都へ
創業者・三井高利の
道のりを辿る旅

企画=大川喜史 文=吉田千尋
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2023年、三越は創業350年を迎えます。皆さまへの感謝を込めて、三越伊勢丹グループ各社ではさまざまな企画をお届けしていく予定です。三越伊勢丹ニッコウトラベルからお贈りする特別なツアーのプレ・オープニング企画として、今年で生誕400年となる創業者・三井高利の道のりを辿る旅をお届けします。高利は、若くして類まれなる商才を発揮し、三越創業から次々と常識を覆していきます。波乱万丈なその人生にふれながら、秋が深まる松阪と京都をご堪能ください。

  • イメージ イメージ 三井高利と妻・かねが描かれた『三井高利夫妻像』(公益財団法人三井文庫所蔵)
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商いの常識を覆した「三井越後屋呉服店」

江戸の町に構えられた呉服店。その看板にある「現銀掛値なし」の文字は、庶民を大いに驚かせたといいます。「現銀」とは、今の現金のこと。当時、呉服店の売り方は主に訪問販売で、大名や武家の屋敷へ赴いて注文を取り、代金は年に数回まとめて後払いしてもらうのが普通でした。その手間賃と金利分を載せていた「掛値(かけね)」をやめ、店頭での現金取引を良しとする商いは、呉服店と縁遠かった庶民に広く受け入れられ、人気を博していきました。

当時の常識を打ち破ったこの店が、「三井越後屋呉服店(越後屋)」、三越の原点です。創業した三井高利はこの時、52歳。遅咲きだったといえるかも知れません。そして意外なことに、江戸には住んでいませんでした。離れていながら斬新な商いを成功させた、その道のりを辿ってみましょう。

  • イメージ イメージ (左)「三井越後屋呉服店」が掲げた「現銀掛値なし」の看板(画像提供:三井文庫)
    (右)『駿河町越後屋図』奥村正信・画(株式会社 三越伊勢丹)
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江戸で修業を重ねた後に再び故郷の松阪へ

今を遡ること400年前の、1622年。高利は、現在の三重県松阪市にあった商家に、4男4女の末子として生まれます。武家の出であった父は商いに関心が薄く、店を切り盛りしたのは商家から嫁いでいた母。息子たちが商人の道を志して江戸へ出たのも、母の姿を見て育ったことが大きいでしょう。高利も14歳で江戸へ赴き、呉服店を営む兄・俊次の元で奉公人となります。

後に豪商となる高利の手腕は、この頃から発揮されていたようです。28歳の時に、彼は母の面倒を見るという名目で松阪へと戻されるのですが、実は高利の類まれなる商才に恐れをなした俊次が言いくるめたともいわれています。

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江戸庶民を沸かせた高利の新商法

故郷へ帰った高利は、複雑な想いを抱いていたことでしょう。しかし、その才覚がついえることはありませんでした。母を守りながら家業の商いを広げ、金融業にも乗り出します。結婚し、15人もの子宝にも恵まれました。息子たちは15歳になると、修行のために江戸商人の元へと送り出されます。高利はこの頃から、将来を見据えていたのかもしれません。

松阪へ戻って、24年。兄の俊次が亡くなったのを機に、高利は呉服店街である江戸本町1丁目に「三井越後屋呉服店(越後屋)」を開業します。1673年、52歳にして自分の店を持ったわけですが、実際に切り盛りしたのは江戸にいた息子たち。高利は松阪にいながら彼らに指示を出し、時には相談に乗りながら経営を進めていきます。

老舗の呉服店が軒を連ねるなか、そこで抜きん出るために高利が実行した商法の1つが、先にご紹介した「現銀掛値なし」です。また、商品の反物を一反まるごと売るのが当たり前だったこの時代に、必要な分だけの切り売りもはじめます。

斬新な商いで盛況を極める一方で同業者の嫌がらせも多く、大火で店を焼失したこともあり、1683年に隣町の駿河町へ移転。さらに繁盛したその店があったのは、現在の日本橋三越本店とほぼ同じ場所です。

その後も三井銀行の前身となる両替商を開くなど、精力的に事業を広げた高利。65歳からは京都に移り、73歳で人生の幕を下ろしました。長く暮らした故郷ではなく、京都の真如堂に葬るようにという遺言を残したのは、走り続けた人生で、晩年を過ごしたこの地に深い安らぎを得られたということかも知れません。

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高利の人生をめぐる旅は商人の町・松阪から

松阪に生まれ、三越を創業して成功し、京都で穏やかに暮らした高利。その人生にふれる3日間のツアーを、2つのコースでご用意いたしました。今回は、そのなかから魅力あふれる見どころをいくつかご紹介いたします。

旅のはじまりは、三井家発祥の地であり、商人の屋敷が多く残る、風情豊かな松阪から。三井家の屋敷跡地にある「豪商ポケットパーク」では、三越伊勢丹ホールディングスから寄贈された、三越の玄関でおなじみのライオン像が堂々たる姿で迎えてくれます。さらに、高利と同様に江戸で大成功を収めた豪商の本宅「旧長谷川治郎兵衛宅」へ。松阪商人の繁栄ぶりがうかがえる屋敷構えに圧倒されることでしょう。

  • イメージ イメージ 松阪の「豪商ポケットパーク」のライオン像は、三井家と松阪の歴史と未来をつなぐ象徴として、「来遠(らいおん)」と命名された

ご宿泊は伊勢志摩まで足を延ばし、鳥羽湾を見渡す美しい景観の「鳥羽国際ホテル」。伊勢海老や鮑を使ったコース料理をお楽しみください。翌日は伊勢神宮の神楽殿において、「御神楽奉納」のご祈祷を行います。雅な舞とともに、荘厳な空気に包まれるひと時です。

  • イメージ 新鮮な海の幸を彩りも美しく仕上げた、「鳥羽国際ホテル」のディナー
  • イメージ 鳥羽湾の絶景が広がる「鳥羽国際ホテル」オーシャンビュースイート
  • イメージ イメージ 伊勢神宮のお参りやおかげ横丁での散策も
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高利が晩年を過ごし、三井家の歴史紡ぐ京都へ

伊勢から、ゆったりとした空間で人気の観光特急「しまかぜ」に乗って、高利が晩年を過ごした京都へ。こちらでのご宿泊は、高利の長男・高平が屋敷を構え、後に三井総領家の邸宅となった跡地に建つ「HOTEL THE MITSUI KYOTO」などをご用意しております。

  • イメージ 二条城を臨む三井家ゆかりの地に建つ「HOTEL THE MITSUI KYOTO」
  • イメージ モダンな和の空間が美しい「HOTEL THE MITSUI KYOTO」の客室

その京都では、1925年に完成した「旧三井家下鴨別邸」へ。明治期と大正期の建築を物語る大規模な屋敷構えに、三井家に受け継がれる美学を感じられることでしょう。通常は非公開となっている主屋の2階と3階の望楼も、特別に見学していただけます。

  • イメージ イメージ 明治期から大正期にかけての面影を今に伝える「旧三井家下鴨別邸」

高利と妻・かねが眠り、三井家の菩提寺となっている「真如堂」は、味わい深い枯山水の庭が見事な古刹です。墓所には江戸時代につくられた奉公人の供養塔もあり、人を大切にする三井家の歴史にふれることができます。

そのほか、高台寺岡林院では通常非公開の美しい苔庭、大徳寺興臨院の特別公開では凛とした品格が漂う枯山水庭園など、秋の京都を堪能できる風情に満ちた見どころを盛り込みました。

三越創業350周年という節目を控え、満を持して皆さまへお贈りする特別企画のプレ・オープニング企画。創業者・三井高利の人生を辿る、三越伊勢丹ニッコウトラベルならではの豊かな旅を、ぜひお楽しみください。

  • イメージ イメージ 三井京都創業の地として保存・伝承されている三井越後屋京本店記念庭園