[ 三越創業350周年特別企画② ]

最果ての地の短い夏

高山植物が大地を彩る

“花の浮島”礼文

企画=小林絵梨 文=吉田千尋/小林絵梨
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氷河期の記憶を継ぐ日本最北の離島

雪解けとともに顔を出す、小さな芽。やがて、色とりどりの光を散りばめたかのように、可憐な花が大地を彩っていきます。待ちわびた季節を謳歌する、礼文島。生命がとびきりの輝きを放つ、短い夏の到来です。

北海道・稚内から西へ60キロほどの日本海に浮かぶ礼文島は、日本最北の離島。この地に降り立てば、“花の浮島”と呼ばれる理由を体感することでしょう。草原を行けば、どこまでも続く花畑。葉を包む白い綿毛が雪のように見えることから名付けられた「レブンウスユキソウ」、金色の梅の花のような姿が由来の「レブンキンバイソウ」など、300種を超えるといわれる高山植物が花開き、その向こうには紺碧の海が煌めきます。

  • イメージ イメージ レブンソウ
  • イメージ レブンウスユキソウ
  • イメージ レブンキンバイソウ

大陸とつながっていた氷河期、礼文島に根付いたといわれる高山植物。気温が低いこの地では、本州であれば山の頂上付近に咲くような珍しい花々が、海抜ゼロメートル付近から見られます。絶海の孤島が花に包まれてゆく、そのピークは6月から7月頃まで。ほんのひと時、穏やかになる日射しのもとで、はるか昔から続く美しい風景に私たちが出あえるのは、あふれる生命力がもたらしてくれる奇跡といえるでしょう。

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断崖絶壁の入り江など豊かな自然の表情

大陸の記憶を受け継いでいるのは、植物だけではありません。氷河期に形成されたなだらかな地形が、変化に富んだ景色をつくり出しているのも礼文島の魅力です。

海に突き出た最北の「スコトン岬」は、まさに最果ての地。花々を楽しみながら歩く原野の向こうには、一変して荒々しい岩場と日本海の大海原が待っています。展望台に上がると1キロほど先に見えるのが、かつて人が住んでいた歴史もある無人島の「トド島」。晴れた日はその先のサハリンまで望める、旅情あふれる風景です。

  • イメージ イメージ 青く澄み渡る日本海を望む、礼文島最北端のスコトン岬

島のなかで屈指の高山植物群に出あえるのが「桃岩(ももいわ)展望台」。息を呑むほど彩りあふれる花畑、そして展望台からは、マグマが固まってできたという高さ190メートルほどの巨大な桃の形をした「桃岩」を見ることができます。

その名の通り、澄み切った水の美しさに思わず目を奪われるのが「澄海(すかい)岬」です。なだらかな弧を描く入江、その周りにそそり立つ断崖絶壁、そして季節を告げる花々と、礼文島ならではの豊かな自然の表情を存分に味わえます。

  • イメージ 桃岩展望台
  • イメージ 澄海岬

魅力あふれるこの島を、余すところなく楽しんでいただきたい。そんな想いから生まれたのが、三越創業350周年特別企画である礼文島へのツアーです。島への玄関口となる北海道の稚内や、利尻富士の絶景に出あえる利尻島にも立ち寄り、夏に旬を迎える海の幸もたっぷりと堪能していただけます。次ページより、企画担当・小林絵梨の視察記としてご紹介しますので、ベストシーズンを迎える礼文島へぜひお出かけください。

  • イメージ イメージ 利尻島・姫沼