[ 国内特集① ]

京都祇園祭のクライマックス

絢爛豪華な山鉾巡行を
特等席で観る

企画=伊藤麻美子 文=浅見浩司
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神様が通る道を清めるため全34基の山鉾が練り歩く

毎年7月、1カ月にわたって多彩な祭事が繰り広げられる京都の祇園祭は、大阪の天神祭、東京の神田祭とともに日本三大祭りにも数えられる、八坂神社の重要な祭礼です。はじまりは、今から1,100年以上前。869(貞観11)年に流行した疫病の退散を祈願して行われた「祇園御霊会(ぎおんごりょうえ)」に端を発するものと伝えられています。

長い歴史のなかで生まれ育まれてきた壮大な祭りのクライマックスは、絢爛豪華な山鉾が練り歩く「山鉾巡行」です。“動く美術館”とも呼ばれる個性豊かな装飾を施した山鉾の数は、前祭(さきまつり)の17日が23基、後祭(あとまつり)の24日が11基。その全34基のうちの29基が重要有形民俗文化財に指定されています。そんな祇園祭のハイライトとされる山鉾巡行は、実は、八坂神社の神様を乗せた神輿がめぐる「神輿渡御(みこしとぎょ)」の道を前もって清めるための、露払いのようなもの。そこで、前祭巡行後の夕方に、本来の主役である神輿が八坂神社を出発し、四条通にある「御旅所(おたびしょ)」に御神体をお迎えします。そして1週間後の後祭巡行のあと、今度は、八坂神社に神輿を帰す渡御が行われます。

  • イメージ イメージ コンチキチンと祇園囃子が流れるなかを進む前祭山鉾巡行

また、祇園祭の開催期間内に各山鉾の会所や八坂神社で販売されるのが「粽(ちまき)」です。粽といっても、祇園祭のものは食べ物ではなく、疫病や災難除けのお守りのこと。京都では、このお守りが民家などの玄関先に飾られているのをよく目にしますが、これも山鉾ごとに特徴があります。今回ご案内する各ツアーでは、それぞれの旅の内容に即した山鉾の粽をご用意します。

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風情ある京町家の2階から眼前を通る前祭巡行を堪能

前祭巡行をご覧いただく4コースと、後祭巡行を鑑賞する1コースをご用意した今回のツアーのうち、まずおすすめなのが、山鉾に手が届きそうな距離から巡行を堪能できる2日間のコースです。ご用意した観覧場所は、明治期の風情ある京町家を復元した「百足屋(むかでや)本店」。前祭巡行は四条通、御池通と広い大通りを進んだあと、最後に道幅が狭い一方通行の新町通に入ります。百足屋本店は、その新町通に面しているうえ、2階のお部屋からご覧いただけるため、文字通り、目の前を山鉾が通る感覚。空調の効いた居心地の良い町家空間で、一大歴史絵巻さながらのシーンの連続をゆっくりとご鑑賞ください。

  • イメージ 明治中期の京町家の佇まいがそのまま残る、百足屋本店の2階から山鉾巡行を鑑賞
  • イメージ 祇園うえもりの夏会席で楽しめる、豆腐の名店・森嘉のからし豆腐

巡行の前日にあたるツアー1日目の昼食は、「祇園うえもり」で、嵯峨野にある豆腐の名店「森嘉(もりか)」のからし豆腐と夏会席をお楽しみいただきます。お食事のあとにご案内するのが、天明の大火による焼失から約50年後の1839年に復元された「函谷鉾(かんこほこ)」の搭乗拝観。保存会の方のお話とともに、壮麗な懸装品などを間近でご覧いただけます。

また、ご宿泊は、京都屈指の繁華街・四条通から歩いてすぐの「ホテル日航プリンセス京都」。烏丸四条の交差点周辺には、翌朝出発する、「長刀鉾(なぎなたほこ)」、「菊水鉾(きくすいほこ)」、「月鉾(つきほこ)」といった大型の鉾が立っています。そのほか、縁結びのご利益があるといわれる「保昌山(ほうしょうやま)」がホテルのすぐそばに、棒振り囃子で知られる「綾傘鉾(あやがさほこ)」や前祭巡行の最後を飾る「船鉾(ふねほこ)」も徒歩圏内にあり、夜の宵山めぐりを存分にご満喫いただけることでしょう。

  • イメージ イメージ 祇園祭は、古くから“祇園さん”と呼ばれ親しまれる八坂神社の祭礼
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宿泊者専用ラウンジからゆったり快適に祭を鑑賞

次にご紹介するのは、巡行ルートの御池通に面して建つ「ザ・ロイヤルパークホテル アイコニック京都」に泊まり、開放感あふれる2階のホテル宿泊者専用ラウンジから、眼下の山鉾巡行をご覧いただく2つのコース。当日は、専用ラウンジはもちろん、ロビーもホテル利用者のみのため、外の人だかりがうそのような、ゆったり涼しい空間で巡行を満喫いただけます。また、ホテルのメインダイニングは、銀座の名店「アロマフレスカ」のオーナーシェフである原田慎次さんが京都に初出店した「シンクロニア ディ シンジハラダ」。京を感じるモダンイタリア料理の夕食と、洗練された和洋食の朝食をどうぞ。

  • イメージ イメージ ザ・ロイヤルパークホテル アイコニック京都から、山鉾巡行を快適に楽しめるコースも
  • イメージ 伝統と現代がシンクロする、シンクロニア ディ シンジハラダのイタリア料理
  • イメージ 大かまきりが羽を広げ、御所車の車輪が回る、山鉾で唯一からくりを施した蟷螂山

そんなホテルから優雅に鑑賞する1つ目の旅は、前祭に訪れる3日間のコースです。まずは宵山の日、屋根に乗る大かまきりのからくり人形が人気の「蟷螂山(とうろうやま)」と、鉾頭に新月型(みかづき)を付けた「月鉾」を拝観。さらに、蟷螂山では、保存會役員の岡部正宏さんから、その歴史や装飾などについてのお話を伺います。2日目に前祭巡行を楽しんだら、最終日は、青もみじの森と湧き水に癒される「貴船(きふね)神社」へ。山あいにある境内は京都市街より気温がぐっと低いことが多く、夏でもひんやりした心地良さを味わえます。

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都大路についに姿を現した鷹山に注目が集まる後祭

もう1つの旅は、後祭巡行を鑑賞する2日間のコース。特に注目なのが、昨年196年ぶりに復活した「鷹山(たかやま)」です。室町時代の「応仁の乱」以前から巡行していたというものの、1826年の文政年間の巡行時に大雨で汚損して以来、「休み山」となっていました。しかし、2014年の囃子方結成以降、再建と巡行復帰に向けて保存会が動き出し、苦労の末ついに、都大路に雄姿を見せたことで話題となりました。

  • イメージ イメージ 昨年、196年ぶりに山鉾巡行に復帰した鷹山の辻回し 

この旅では、まず巡行前日の1日目午後に、山鉾巡行のテレビ中継で解説を務める民俗学者の八木透さんから、後祭についてのお話を伺います。その後、保存会理事の西村吉右衛門さんご案内による鷹山の搭乗拝観へ。由緒ある御神体や懸装品について知るほどに、後祭巡行への期待が高まることでしょう。巡行鑑賞のあとは、京都東山のシンボルとして映像にたびたび登場する「八坂の塔」の特別拝観をお楽しみください。