旅好きなグルマンにとって、地方の知られざる食材や美食の隠れ処ほど心ときめく誘惑はないでしょう。ご案内するのは、そんな皆さまの想いを満たす山形ガストロノミーの旅。旅行家のイザベラ・バードが“東洋のアルカディア”とたたえた山形南部・置賜(おきたま)の地で、食の豊穣をたっぷりとご満喫ください。
山形の初夏の味覚といえば、全国生産量の約70%を占めるさくらんぼ。第2位の北海道が9%ほどですから、まさに他を圧倒するさくらんぼ王国です。そんな山形が今年、満を持して新品種を本格的にデビューさせました。
驚くのは、見事な大きさです。「やまがた紅王」としてその名を語れる資格は、最小でも500円玉に相当する横径25mm以上。多くは横径30mm前後で、これまでの栽培試験では横径34mm以上に達する個体も現れたそうです。
この新品種が誕生するまでには、「山形県農業総合研究センター 園芸農業研究所」を中心とした約20年におよぶ苦闘がありました。大玉品種である「紅秀峰」に、高級アメリカンチェリー「レーニア」と、色合いも鮮やかな「紅さやか」由来の品種をかけ合わせるなど試行錯誤を重ねることで、ついに世界最大級のさくらんぼの作出に成功したのです。
山形の威信をかけて全国出荷する新品種だけに、大きさだけでなく糖度や着色性にも厳しい選別基準が設けられています。たとえば糖度は、代表品種「佐藤錦」と同等の20度以上。酸味が少ない、上品な甘さが自慢です。また、赤い着色も実の部分の50%以上と定められています。“鮮光色”と呼ばれるまばゆいばかりの輝きは、まるでルビーのよう。果肉が硬いので日持ちもする「やまがた紅王」は、さくらんぼ王国の情熱の結実といえるでしょう。
この旅では、山形県からご紹介いただいた農園を特別に訪問。初夏の陽光が降り注ぐ下で、たわわに実った「やまがた紅王」を目の当たりにし、みずみずしいおいしさを体験していただけます。お土産もご用意していますので、ご家族などに感動のお裾分けをどうぞ。
旅のもう1つの楽しみは、宿泊先で、昼食先でと和洋の山形ガストロノミーを一度に体験いただけること。旅心に寄り添う、2つのコースをご用意しました。水を一滴も加えない“十割源泉”かけ流しの露天風呂でゆったりと過ごす宿泊先でのひと時も、美食の思い出を倍加させることでしょう。
Aコースは、開湯920余年の赤湯温泉郷に佇む「山形座 瀧波」に宿泊。米沢牛や最上川のアユ、コシアブラなどの山菜、伝統野菜など置賜地産の食材をふんだんに使った料理をご満喫いただきます。
2017年、この老舗は美食宿としてリニューアル。古民家の雰囲気とモダニズムを融合させた全面改装とともに、料理の質や料理人、サービススタッフのスキル向上に勤しんできました。その努力が報われて、「Relux OF THE YEAR 2022」の「20室以下のラグジュアリーな宿」ランキングで第1位を獲得しました。
地産食材で奏でる食の饗宴に酔いしれた翌日は、「RESTAURANT AKIYAMA」でシェフが紡ぐ彩り豊かな山形フレンチのランチをお楽しみください。
Bコースは今年4月、「山形座 瀧波」の同敷地内に開業したオーベルジュ「Osteria Sincerità(オステリア・シンチェリータ)」に宿泊。世界的なグルメガイドで評価された原田シェフによるイタリア料理を、限定3組の皆さまにご堪能いただきます。
感性あふれるイタリアンに圧倒された翌日は、「馬場乃町はやし」にて、名店「分とく山」で修業を積んだ店主の日本料理の昼食をカウンター席でどうぞ。
また、偶然にも古民家で発見された約160年前のそばの実を発芽させ今によみがえらせた、幻といわれている天保そばも味わえるとなれば、お腹とともに胸もいっぱいの感動で満たされることでしょう。