[ 三越創業350周年特別企画① ]

ベルサイユ宮殿晩餐会

企画=木村聡/飯尾賢一/石川俊平/長谷川賢/篠原陽子 文=佐藤淳子
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この秋、いよいよ催行となります「ベルサイユ宮殿晩餐会を楽しむ旅」。今号では、その多彩な全16コースのうち、4コースで訪れるモン・サン・ミッシェルと、2コースで訪れるロワール渓谷についてご紹介します。いずれも、フランス屈指の観光地。訪れれば、人気の理由に必ずや納得していただけることでしょう。

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海越しに朝夕の
モン・サン・ミッシェルを眺望
「ルレ・サン・ミッシェル」に
泊まる贅沢

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海上に浮かぶ修道院は唯一無二の神々しさ

多くの見どころを有するフランスですが、そのなかでもぜひ訪れていただきたい場所の1つが、ノルマンディー地方の名所、モン・サン・ミッシェルです。

小さな島とその上に建つ修道院からなるこの地は、フランス語で「聖ミカエルの山」を意味する名のとおり、708年、大天使聖ミカエルが司教の夢に現れ、彼の名前を冠した聖堂を建設するよう告げたことに由来します。

この地がしばしば“世界で最も有名な世界遺産”といわれる所以は、その立地によるところが少なくないでしょう。修道院の建つサン・マロ湾は潮の干満差が激しいことで知られます。干潮時、島は陸とつながりますが、時に「馬が駆ける速さ」にもたとえられる勢いで潮が満ちると、島は海に隔てられ、世界にも稀な“海に浮かぶ修道院”が出現します。その唯一無二の神々しさは、誰もが一度は見たいと願う光景といってよいのではないでしょうか。そしてそれは、対岸から全景を望むことで、より感動的なものとなります。

  • イメージ イメージ 夕刻のモン・サン・ミッシェル。宿泊するからこそ堪能できる幻想的な風景

今回の旅では、そんな光景を部屋にいながら楽しめる大人気のホテルをご用意しました。それが、対岸に建つホテルのなかでも最も島に近い「ルレ・サン・ミッシェル」です。

大きな窓のあるホテルの客室からは、朝の目覚めから夕暮れまで、いつでも修道院の威容を望むことができます。早朝には、朝もやに覆われた海の向こうで柔らかな朝日を浴びて輝き、夕方には刻々と色を変える空を背景に、美しいシルエットとなって浮かび上がるモン・サン・ミッシェル。時間帯によってさまざまな表情を見せるその姿に心を奪われない人がいるでしょうか。この地を訪れる人に日帰りではなく宿泊することをおすすめするのは、この表情豊かな景観を楽しんでいただきたいからです。

レストランからは、美しく手入れされた庭越しの修道院が望めます。海風に吹かれながら眺める贅沢なひと時も忘れがたいものとなるでしょう。

  • イメージ イメージ 「ルレ・サン・ミッシェル」のレストランから修道院を望む
  • イメージ イメージ 静かな時間が流れる「ルレ・サン・ミッシェル」の客室(一例)
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巡礼者への想いが生んだふわふわの名物オムレツ

モン・サン・ミッシェルは完成後まもなく巡礼者たちがこぞって目指す聖地となり、それは一大観光地となった今も変わりません。

今回の旅で召しあがっていただく名物のオムレツは、巡礼地としてのモン・サン・ミッシェルを感じていただけるものでもあります。日本で一般的に食べられているものとは異なり、しっかり焼かれた表面に対して中側はふわふわ。見た目の大きさにも驚くはずです。このオムレツ誕生の背景には巡礼者への想いがありました。現代のように宿や食事処が整っていない時代の巡礼は文字通り命がけ。そんな旅を経て辿り着いた巡礼者の空腹を満たすため、この地で宿屋を営む“プラールおばさん”が考案したのが、当時、食材の乏しかった当地で手に入る卵の料理でした。見た目だけでもボリュームのあるものを、という想いから、目一杯泡立ててつくったのがこのオムレツだったのです。

  • イメージ イメージ “プラールおばさん”考案のレシピに基づいてつくられたクッキーは人気のお土産に

モン・サン・ミッシェルでは、もう1つの名物、プレサレもお召しあがりいただきます。絵ハガキなどでよく見られるのが、修道院と対岸の間に広がる草地で草を食む羊の群れ。潮の満ち引きの影響で塩分を多く含む草を食べるこの子羊たちの肉は、軟らかいだけでなく独特な塩の風味があるとされます。モン・サン・ミッシェルの風景とともに、この地に伝わる味も、ぜひお楽しみください。

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ロワールの古城をめぐる旅
フランスの優美な城の歴史は
ここからはじまった

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「フランスの庭」ロワール渓谷の古城群

ロワール河中流域に位置するロワール渓谷。“フランスの庭”とも称えられるこの風光明媚な地方は、フランスらしい風景の宝庫といえるかもしれません。

フランスらしさの大きな要因は、深い森や河沿いに点在する古城です。パリを拠点とする中世の王たちにとって、気候が温暖で、広い森を有するロワール渓谷は、趣味の狩猟を楽しむのに適した場所でした。王が移動すれば貴族たちも移動します。彼らはこぞってこの地に城を建てました。しかも当時はイタリアからルネッサンス様式が入ってきた時代。そこかしこに壮麗な城が建てられたのです。

城は時代によってその役割を変えます。戦いの絶えなかった時代、城は要塞の役割を果たすものでした。戦いの世が終わり、政情が安定すると、今度は王や貴族たちの住まいとなります。

  • イメージ レオナルド・ダ・ビンチゆかりのアンボワーズ城
  • イメージ シャンボール城はロワール河流域最大規模

ロワール渓谷の城も多様です。たとえば、アンボワーズ城は、もともと要塞城だったものが、その役割を終えて居住を目的とする城館に改装されたもの。ここで生を受けたシャルル8世をはじめ歴代の王たちが増改築を繰り返し、当時ロワール河畔を代表する城館となりました。現在、残されているのはその数分の1ともいわれますが、当初は軍事目的で築かれただけに「要塞」然とした風格があります。レオナルド・ダ・ビンチゆかりの城としても有名で、彼はフランソワ1世によってこの地に招かれ、生涯を終えました。

一方、シャンボール城やシュノンソー城は、はじめから居住を目的に建てられた城館です。いずれも広く美しい庭が併設され、その佇まいは優雅そのもの。眺めるだけでうっとりした気分になります。

ただ、シャンボール城を建てたフランソワ1世にとっては権力の誇示という側面が大きかったようです。本人が滞在したのはわずか。多くの著名人がここで宴を開き、狩猟のために滞在しました。この城を特徴付けるものの1つが、ダ・ビンチ考案ともいわれる二重螺旋階段です。対になった2つの階段は交わることなく螺旋を描き、人はすれ違わずに昇降できました。

  • イメージ イメージ “羽を休める白鳥”にもたとえられるシュノンソー城

城は愛憎の舞台ともなりました。シュノンソー城は、アンリ2世が20歳ほど年上の愛人ディアーヌに贈った城です。正妻カトリーヌは当然これを良しとはしませんでしたが、城内ではディアーヌが娘のような歳の正妻を庇護するなど奇妙な三角関係が成り立っていたといわれます。“6人の女城主の城”の異名からもわかるとおり、この城では歴代、女性たちが実質的な城主となりました。他の古城と異なり、構造に女性的な視点が見られるのはそのためでしょう。ルネッサンス期の傑作といわれ、タペストリーや絵画などのコレクションでも知られます。

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城館ホテル宿泊で古城の余韻に浸る

ロワール渓谷を訪れる2つのコースでは、宿泊地として「ル・ショワズール」と「シャトー・ド・ロシュコット」という城館ホテルをそれぞれご用意しました。いずれも当時の趣を残す建物で、日中に訪れた優雅な城の余韻に浸るのに最適な場所です。フランス料理に舌鼓を打ちながら、古の時代に想いを馳せてはいかがでしょう。

フランスの優雅な城の歴史はロワールではじまったといっても過言ではありません。ここで用いられた建築様式がその後、全国に波及しますが、その過程で、権力の象徴としての意味合いが強まり、建築様式はルネッサンスからバロックへと変遷しました。その豪華絢爛な様式を取り入れた集大成が、晩餐会会場のベルサイユ宮殿です。新旧の王の住処からフランスの歴史を振り返るのも、今回の旅の楽しみになりそうです。

  • イメージ イメージ ルネッサンス期の趣を今に伝える城館ホテル「ル・ショワズール」の客室(一例)