「ベルサイユ宮殿晩餐会」を楽しむ多彩な旅のうち、今号では、人気のプロヴァンスとコート・ダジュールを訪れるコースをご紹介しましょう。
この旅でぜひとも楽しみにしていただきたいのが、リュベロン地方での滞在です。リュベロン地方といえば、南仏人気の火付け役となったイギリス人エッセイスト、ピーター・メイルを魅了した地。今から30年以上前、都会の生活に倦んでいた彼は、この地で豊かな自然とともに暮らし、生きる喜びを享受する人々の生活にすっかり魅了されます。そして、それらを詩情豊かに綴ったエッセイ『南仏プロヴァンスの12か月』が、ベストセラーとなり、プロヴァンスは世界に知られる人気の地となったのです。
この地の魅力をとことん味わっていただくべく、今回の旅では、ガルガという美しい村にある邸宅風ホテル「コキヤード・ヴィラージュ」を滞在場所に選びました。プロヴァンスの伝統建築様式を取り入れた建物は、周囲の穏やかな田園風景に馴染み、客室からはオリーブの木々やぶどう園など南仏らしい風景が望めます。広大なホテルの敷地には、糸杉などプロヴァンスらしい植栽が施された庭園だけでなく、菜園も有しており、まるで1つの村の趣です。有機農法で育てられた自家菜園の野菜や果物は、まさにプロヴァンスの恵みとして、ホテルでの食事に色を添えてくれることでしょう。洗練された南仏料理を心ゆくまでご堪能ください。
今やすっかり人気となったプロヴァンスですが、交通の便が良いとはいえない場所にあるリュベロン地方には、かつての素朴な佇まいが色濃く残ります。一般的なツアーでは、都市部に滞在して日帰りで訪れる場所ですが、今回はここに1泊して、メイルを虜にしたプロヴァンスの真髄をゆったり味わいましょう。
リュベロン地方では、ガルガ村を拠点に、「フランスの最も美しい村」に登録された村々もめぐります。まずは、“鷲の巣村”として人気のゴルドへ。小高い丘にへばりつくようにして家々が並ぶ様子は、まさに木の上につくられた鳥の巣のようです。村を歩けば、石畳と石造りの家々がつくり出す風情を感じていただけることでしょう。ラッセル・クロウ主演の映画『プロヴァンスの贈りもの』(2006)では、冒頭で朝陽に照らされた印象的な村の風景が映し出されますが、それがまさにこの村です。ゴルドの東には、同じく「フランスの最も美しい村」に登録されているルシヨンがあります。村がどことなく明るい印象なのは、家々の壁を塗る漆喰に、この辺りを産地とする赤みがかった土、オークルが混ぜられているため。家並みの明るさが、街歩きをさらに心浮き立つものにしてくれるはずです。
この旅では、ガルガ村1泊を含め南仏に計6泊。コート・ダジュールでは、ニースに3連泊して紺碧の地中海に面した街や村をめぐります。
南仏を愛した芸術家たちの足跡もぜひお楽しみください。プロヴァンスでは、ゴッホの作品のモデルとなった跳ね橋やカフェ、コート・ダジュールでは、ルノワールのアトリエを改装したルノワール美術館、シャガールの眠る墓地のあるサンポール村、マチスが建物の設計から内部装飾まで手がけたヴァンスのロザリオ礼拝堂を訪れます。旅のフィナーレ、ベルサイユ宮殿晩餐会の前日にお楽しみいただくパリのオルセー美術館貸切見学では、こうして画家たちゆかりの地を辿ったあとだからこその深い感慨を味わっていただけるのではないでしょうか。