列車だからこそ出あえる風景、旅情、心躍る体験があります。単なる移動手段ではなく、乗車そのものが旅の思い出となる観光列車、ローカル線に乗車する秋の旅を2コースご紹介します。
まずご紹介するのは、戦国時代の武家、真田家の家紋「六文銭」から命名された観光列車「ろくもん」に乗車する、秋の信州を楽しむ3日間の旅。「ななつ星」など数々の豪華列車をデザインした水戸岡鋭治さんが手がけた「ろくもん」の車両は、快適でぬくもりのある空間。約2時間の上質なひと時をお過ごしいただけます。
乗車前に軽井沢駅の専用ラウンジで飲み物をいただくと、これから乗る列車に気持ちも高ぶります。乗車中は通過する自然や歴史について乗務員の説明を聞きながら、歩かずしても向こうから流れてくるのどかな風景を楽しみます。時には地元の小学生や園児が、行き交う列車に向かって元気いっぱいに手を振る姿に気持ちもほっこりとします。今までご乗車されたお客さまのなかには、どこか懐かしい印象を持つ方も多いようです。また「ろくもん」で特筆すべきことは信州の旬の食材をふんだんに使ったお食事です。軽井沢駅から長野駅の区間では、地元の銘店による洋食をお召しあがりいただきます。浅間山と千曲川の雄大な景色やおもてなしとともにお楽しみください。
ツアー初日は、清涼な軽井沢にある、世界的にも知られる画家 千住博さんの美術館を訪ね、彼の代表作ともいえる「滝」をモチーフにした作品をご覧いただきます。 翌日は「ろくもん」の下車地である長野駅到着後、小布施にある岩松院で葛飾北斎晩年の作品「八方睨み鳳凰図」を鑑賞し、名産の栗を扱った店が軒を連ねる町を散策します。お泊まりは文豪志賀直哉がこよなく愛し、登録有形文化財にも指定されている、わずか8室の「笹屋ホテル 豊年虫」にご宿泊。最終日はこの時期にしかお楽しみいただくことができない、長野県で生まれたぶどう品種「ナガノパープル」狩りをご体験いただきます。初秋の味覚とともに観光列車、温泉宿で寛ぐ旅にぜひお出かけください。
次にご紹介するのは、日本の最果てともいえる根室へ、釧路から1両編成で運行する「花咲(はなさき)線」の乗車を楽しみ、道東をめぐる4日間の旅です。花咲線の歴史は古く、大正10(1921)年に開通。昭和9(1943)年から31年間貨物輸送も担い、住民にとって重要な路線となりました。2021年には開通100周年を迎え、道東の大自然を感じることができるローカル線として親しまれています。
乗車後しばらくすると、そこは大自然に囲まれた別世界。広大な原野、湿原、森林、牧場、そして太平洋など、風光明媚な車窓をゆっくりと眺めながら列車は走行します。そんな大自然のなかを進むと、エゾシカや野鳥などの北海道にしか生息していない動物も線路沿いに姿を現すことがあります。
なかでも絶景といわれているのが、厚岸(あっけし)駅を出発するとすぐに見えてくる別寒辺牛(べかんべうし)湿原という、水鳥や希少な植物の保護を目的としたラムサール条約に登録されている地域を眺める車窓です。北海道ならではの湿原や湖などの雄大な自然をご覧いただけます。花咲線はディーゼルカーで運行していることもあり、頭上に架線(送電線)がなく、大きな空が車窓から広がります。観光列車とはまた違った素朴な北海道の原風景ともいえる景色をご堪能ください。
ご旅行は道東訪問の起点となる釧路にて3連泊し、花咲線のご乗車や日本本土最東端の納沙布(のさっぷ)岬への訪問、専門ガイドとの釧路湿原散策をお楽しみいただきます。花咲線に加え、列車の車窓から広大な湿原を一望するノロッコ号にも乗車。お体にあまり負担をかけず道東の大自然を堪能します。9月の道東は平均気温が約16.5度で、関西の同時期に比べ約10度低く暑さもしのぎやすいので、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。