この秋、一度は泊まってみたい憧れのホテルに滞在する旅はいかがでしょう。
ご紹介するのは箱根宮ノ下にある名門「富士屋ホテル」。温泉地箱根の伝統と格式を紡ぐクラシックホテルとして愛され続ける145年の歴史を振り返りながらご紹介しましょう。
「富士屋ホテル」の創業者山口仙之助は、20歳で渡米し、帰国後慶應義塾で、今後の国際観光の重要性を学び、外国人用ホテルを開業することを決意しました。箱根の「藤屋旅館」を買い取り、洋館を建築し、「富士屋ホテル」と名付けられたこのホテルは、1878(明治11)年に日本初の外国人を対象とした本格的なリゾートホテルとして誕生しました。また仙之助は現在の国道1号線の一部にあたる、塔ノ沢・宮ノ下間の道路の整備にも尽力しました。
その後、昭和初期には“建築道楽”だった3代目社長、山口正造によって本館や西洋館といった明治期の建物の他に、日光東照宮を思わせる食堂棟や花御殿などの、和洋折衷の建物が加わりました。現在5つの建物が、国の登録有形文化財となっています。
天井に描かれた日本アルプスの高山植物、壁に施された動植物の彫刻など、館内の至る所に外国人客を意識した、日本文化を伝える趣向が施されています。これらが海外で評判となり、国内外の多くの著名人に愛用されてきました。
たとえば、1932年にチャップリンが滞在した際には、トレードマークのチョビ髭に山高帽とステッキという出で立ちでなかったために、周りに気づかれず滞在できたそうです。館内のホテルミュージアムには、富士山のイラスト入りの直筆サインが残されています。
1937年にヘレン・ケラーが訪れた際は、近隣のお店で飼われていた尾長鶏を膝に乗せて大変かわいがったとのこと。このことに因んで、フロント前の柱に見事な尾長鶏の彫刻が彫られています。
また、三島由紀夫が新婚旅行で訪れた際に、ホテルの便せんに書いた手紙が近年発見されました。さらに、ジョン・レノンの好物だったというホテルの名物アップルパイは、今もラウンジで提供されています。
このように多くの著名人にも愛されてきたホテルは、創業140年の節目を機に、2年以上の大改修工事を経て2020年“新生”富士屋ホテルとしてリニューアルオープン。宮ノ下温泉の源泉を引いた大浴場や、宿泊者専用ラウンジなど、新たな魅力も加わりました。
歴史と伝統を受け継ぎながらも、日本を代表する名門クラシックホテルの先駆者として、今も進化し続ける富士屋ホテル。皆さまも歴史の1ページをご自身で刻んでみてはいかがでしょう。
この旅は、1日目に徳川家ゆかりの料亭での昼食や、久能山東照宮の参拝などをお楽しみいただき、富士山の絶景が自慢の「日本平ホテル」に宿泊します。2日目は、箱根ロープウェイの乗車と大涌谷を散策。最終日は箱根の岡田美術館で、企画展「歌麿と北斎−時代を作った浮世絵師−」へご案内する、秋を満喫する充実の旅となっています。