地元では“やわたのはちまんさん”と呼ばれ親しまれている石清水(いわしみず)八幡宮。実に10棟の国宝建築を有する京都有数の社の1つです。極彩色の美しい社殿が鎮座している男山が位置するのは京都府南部の八幡市。木津川、宇治川、桂川の三河川が合流し淀川となる地点を挟み、天王山と対峙しています。男山一帯は交通の要であり、平安時代から続く桜の名所。時の権力者たちが天下泰平を願い詣でた石清水八幡宮の国宝建築と、桜を堪能する旅をご紹介しましょう。
石清水八幡宮の歴史は古く、創建は859(貞観元)年。奈良の僧だった行教が九州の宇佐八幡宮に参詣したところ、八幡大神から「男山へ移座し国家鎮護を」との託宣を受けたことがはじまりとされています。939(天慶2)年の平将門・藤原純友の乱の平定をはじめ、「国家鎮護の社」として朝廷や時の権力者から信仰されてきました。天皇や上皇が崇拝し、伊勢神宮とともに二所宗廟と称されています。源氏一門も八幡大神を氏神として信仰し、全国各地に八幡大神を勧請しました。
時代を越え、今では厄除開運、必勝・弓矢の神として知る人ぞ知る名所でもあります。
今回ご案内するのは、1泊2日のAコースと、2泊3日のBコース。どちらも、石清水八幡宮の特別拝観がハイライトとなっています。国宝建築の1つに指定されている「本殿」を神職のご案内で拝観。現在の社殿は徳川3代将軍家光の造替(ぞうたい)によるもので、現存する八幡造の本殿のなかでも最古といわれ、かつ最大規模。名だたる戦国武将が詣でていて織田信長が寄進したといわれる「黄金の雨樋」も残されています。随所に施された彫刻も見逃せません。猿やぶどうなどさまざまな動植物の愛らしい姿を楽しむことができます。鮮やかな色で彩られた豪華絢爛な世界をご堪能ください。
特別拝観は、一般の参拝時間が終了したあと。ライトアップされた桜と社殿が織り成す風景は幻想的です。非公開書院で3つの宝物を直にご覧いただけることが見どころとなっています。
1つ目は、国の重要文化財に指定されている、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の書状。戦国の三英傑の書状を間近でご覧ください。織田信長の書状に押されている「天下布武」の朱印もご確認いただけます。2つ目は江戸初期に製作された、『源氏物語』全54帖の写本。最近、蔵から発見されたばかりなので、このツアーに参加する皆さまへの公開が、なんと初披露となります。源氏物語の写本は日本各地に種々残るものの、この写本は桐の箱に納められ、約400年八幡宮の蔵に眠っていたことから極めて保存状態が良く、しかも54帖が揃っているところが大変貴重です。3つ目は、曼荼羅「篝火御影(かがりびのみえい)」。13世紀元寇の際、亀山天皇が必勝祈願をかけて描かせたと伝わる由緒ある曼荼羅です。いずれもガラスケースを通してではなく、直接ご覧いただけます。
石清水八幡宮は、発明王エジソンと深い縁があります。長持ちするフィラメント(発熱体)をつくるため「究極の竹」を探していたエジソンは、男山周辺の真竹の存在を知りました。彼はこの竹を使用して研究を重ね、当時最も長く輝き続けることができる電球を開発。その後、十数年間にわたり使用されたといわれています。八幡宮では、立派な記念碑を建て、「エジソンのランプ」を大切に保存しています。海を越えてつながる意外なご縁について、神職がお話くださいます。
また、石清水八幡宮を訪れる前には、ジャンボタクシーで背割堤(せわりてい)の桜並木を通ります。ここは、約220本のソメイヨシノが立ち並ぶ、関西屈指のお花見の名所。約1.4キロ続く圧巻の桜のトンネルを車窓からお楽しみください。
石清水八幡宮のほかにも、Aコースでは、京都市が一望できる将軍塚青龍殿や真如堂の特別公開など楽しみが満載。真如堂でこの時期に公開される巨大な「大涅槃図」は、縦およそ6.2メートル、横およそ4.5メートルという迫力。日本最多といわれる127種の生類が見守る涅槃の図をこのツアーでは特別に“絵解き”(解説)を聞きながら拝観します。2日目の昼食は、昭和天皇の義理の弟君、東伏見宮家の別邸として1932(昭和7)年に建てられた吉田山荘へ。和と洋が見事に組み合わされた空間で会席料理をご堪能ください。
Bコースでは混雑を避け、隠れた京都の名桜をめぐります。秀吉が京都の宿としていた妙顕寺では、山門前の紅しだれ桜をはじめ、ソメイヨシノなどでお花見を。本満寺では、円山公園に咲く有名なしだれ桜「祇園しだれ桜」の姉妹桜をお見逃しなく。2日目の昼食は、「ザ・リッツ・カールトン京都」へ。ピエール・エルメのスイーツとホテルメイドのセイボリーが楽しめるアフタヌーンティーを優雅にご堪能ください。最終日には、京都・二条城の北側にある「佐々木酒造」を訪れます。京都市洛中に現存する唯一の蔵元。名水に育まれた伝承の技が脈々と受け継がれています。佐々木晃社長にご案内いただき、非公開の酒蔵見学と自慢の銘酒の数々の試飲、お買物をお楽しみください。
この春は、「国家鎮護の社」で国宝建築の魅力を識り、桜色の京都を堪能する旅へ出かけませんか。