[ 海外特集 ]

風薫り、陽光穏やかに降り注ぐ
ヨーロッパへ

企画=飯尾賢一/木島将也/森脇潤/安部川帆南 文=佐藤淳子
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ヨーロッパのバカンスシーズンといえば夏。でも、実はその少し前、春から初夏にかけてこそ、ヨーロッパの“隠れたベストシーズン”といえるかもしれません。寒い季節を越え、新緑に輝く街は活気に満ち、風は爽やか。陽光も穏やかに降り注ぎます。そして、この時期にしか味わえないイベントや景色、過ごし方があります。そんな輝く季節のヨーロッパの旅をご紹介しましょう。

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スメタナ「我が祖国」で開幕 曲に込められたチェコの風景

この季節ならではのヨーロッパの楽しみとしてまずご紹介したいのが、チェコの人々が毎年、春の訪れとともに心待ちにしているクラシックの祭典です。

開催地は、中世の趣を残した美しい古都、プラハです。街を見下ろすように壮麗なプラハ城がそびえ、蕩々と流れるヴルタヴァ河(モルダウ河)に架かるのは見事な彫刻の施されたカレル橋。石畳の広場には賑やかに人々が集い、老舗のカフェには優雅にコーヒーを楽しむ人々の姿。どこを切り取っても絵になるこの街は、そぞろ歩くだけでも楽しくなります。

  • イメージ イメージ プラハ城とカレル橋はチェコの首都プラハのランドマーク

この街で毎年、チェコの国民的音楽家スメタナの命日である5月12日に「プラハの春音楽祭」が開幕します。オーストリアの支配から抜け、自国の文化を守る機運が高まっていた時代に、民族的な要素を取り入れた「チェコ国民の音楽」を創出したのがスメタナでした。音楽祭は、数ある曲のなかでも特に愛されている「我が祖国」で感動的に幕を開けます。

チェコとハンガリーのツアーでは、チケット入手も簡単ではないこの音楽祭を楽しむコースをご用意しました。世界中から音楽好きの人々が集まる華やかなクラシックの催しを存分にお楽しみください。ちなみに、音楽祭が開かれる「スメタナホール」は、市民の拠り所でもある市民会館のなかにあります。チェコスロバキア共和国の独立が宣言されたこの建物は、内部にアールヌーボー様式の装飾が施され、その美しさは見るだけでも価値があるといわれるほどです。

  • イメージ イメージ 「プラハの春音楽祭」の演奏が行われるスメタナホール(©Twang_Dunga)
  • イメージ 歴史ある市民会館は市民の拠り所。内部の美しい装飾は必見
  • イメージ チェコ東部に広がるモラヴィア草原

チェコでは、この季節だからこそ楽しめるすばらしい景観もご覧いただけます。その1つが、鮮やかな新緑の丘が波打つように連なるモラヴィア草原。「まるで絵画のよう」という比喩がこれほど似合う風景はないでしょう。スメタナは「我が祖国」で祖国の美しさや希望を表現しました。チェコの美しい風景を目に焼きつけた後での音楽鑑賞は、格別なものになるに違いありません。

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女王コンテストやバラの花摘み体験

もう1つ、ヨーロッパの初夏を鮮やかに彩る祭りが、ブルガリアのバラ祭りです。

ブルガリア名物といってヨーグルトの次に挙げられるのがバラ。バラ栽培はこの国を代表する産業の1つとして発展してきました。バラの一大産地である、通称「バラの谷」の各村や街では毎年、その収穫を祝い、お祭りが開催されます。その中心となる街の1つがカルロヴォ。この祭りの魅力は、花々の醸し出す華やかさだけでなく手づくり感あふれる素朴さにもあります。バラの女王コンテスト、民族音楽演奏やダンスなど、さまざまな催しからは、ブルガリア人の生き方や国民性が見てとれます。この国に一歩近づく貴重な機会となるでしょう。

  • イメージ イメージ 「バラの谷」に点在する街や村で開催されるバラ祭り。人々のまとった鮮やかな民族衣装がバラ畑に映える
  • イメージ バラ祭りではダンスや歌も披露される
  • イメージ バラの女王コンテストはバラ祭りのハイライト的イベント

バラの蒸留工場の見学や、バラ畑での花摘み体験などもお楽しみいただけます。質の良い香料の原料となるダマスク種のバラは、小ぶりながら愛らしいピンクの美しい花で、何より香りの良さで知られます。摘んだ花は持ち帰ることができるので、ホテルの部屋に戻ったら窓辺に置き、しばし香りを楽しんではいかがでしょうか。乾燥させても鮮やかな色と香りは残ります。ネットに入れてバスタブの湯に浸し、バラ風呂をお楽しみいただくのも一興でしょう。まさに、この時期のブルガリアでしか経験できないお楽しみです。

ブルガリア・ルーマニアのツアーでは、このほか、蛇行するヤントラ河沿いに広がる美しい山間の古都ヴェリコ・タルノヴォなどを訪れ、首都ソフィア滞在中には、フレスコ画で有名なリラ修道院もめぐります。田舎が魅力ともいわれるこの国を、季節とともに存分に味わってください。