[ 海外特集① ]

生活者目線で見つめる街と芸術

建築家・中村好文さんと行く
イタリア

企画=竹下はるか 文=佐藤淳子
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旅先として世界中の人々に愛されるイタリア。これまで何度も訪れているという方も少なくないのではないのでしょうか。この人気の観光地を少し別の目線で眺めてみる。そんなツアーを、新潮社「青花の会」とともに企画しました。

イタリア旅行に新たな視点を与えてくれるのは、建築家・中村好文さんです。人の暮らしに寄り添う、普段着のように居心地の良い住宅の設計を得意とされる中村さんは、風土や風景にふれる旅をこよなく愛しています。なかでもイタリアは大のお気に入りで、毎夏をヴェネツィアで過ごすほど。そんな中村さんと、フィレンツェ、ヴェローナ、パドヴァ、ヴェネツィアをめぐります。はたしてどのような旅になるのでしょうか。中村さんご本人に、イタリアの魅力やツアーへの想いを語っていただきました。

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イタリアの魅力とは? なかでもヴェネツィアが好きな理由は?

イタリアの魅力の1つは美術でしょうね。ローマ時代からルネッサンス期に至るまでにもすばらしい美術が生まれています。建築も面白い。

ヴェネツィアは、実ははじめて訪れた時の印象は良くなかったんです。観光地のイメージが強すぎてね。でも再訪した時、ちょっと裏道を入ったらまったく印象が違った。静かな通りに洗濯物が干されている感じがとてもいい。活版印刷所があったり、小さな織物工場があったり、物づくりをする人たちが多いことにも気づきました。地元の人たちがチケッティと呼ばれるツマミを食べながら立ち飲みするバーカロ(居酒屋)の雰囲気も格別でね。そこには、観光地としての表の顔とはまったく別の世界がありました。

10年ほど前からは、コロナ禍の三年間を除き、毎夏1カ月半くらいヴェネツィアで過ごしています。世界中に好きな街はありますが、住もうと思うところはそれほど多くありません。この街は僕の体内リズムと合うのかな。移動は徒歩以外、ヴァポレットという水上バスでしょう? 千鳥足のようにたゆたいつつ航行するこの船の感じも好きなんですよ。

  • イメージ イメージ 中村さんが毎夏を過ごすヴェネツィア。移動手段は徒歩か船
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今回のツアーの見どころを教えていただけますか?

フィレンツェの捨て子養育院、ヴェローナのカステル・ヴェッキオ博物館、パドヴァのスクロヴェーニ礼拝堂など、見どころはたくさんあります。ヴェネツィアでは、人の暮らしぶりも見てほしいですね。洗濯物が通りをまたいで干されている風景など、本当に面白いです。ここには愛すべき庶民が住んでいるって感じがするでしょう? 僕は洗濯物が好きでね。これまで800枚くらい写真を撮っているんじゃないかな。天気の悪い日が続いたあとの晴れの日はいても立ってもいられない。皆一斉に洗濯しますからね(笑)。南北軸の通りなど、正午に行くと、道全体、上から下まで陽光に照らされたすばらしい洗濯物に出あえます。

  • イメージ イメージ 「洗濯物は土地を表す」と語る中村さん。 通称「洗濯物通り」はお気に入りのスポット
  • イメージ サンタ・マリア・ノヴェッラ教会(フィレンツェ):「緑の回廊」が中村さんの寛ぎスポット。付属の薬局でのお買物もおすすめ
  • イメージ 捨て子養育院(フィレンツェ):外壁にはめ込まれたメダリオン(円形陶板)には子どもたちの姿。一人ひとり異なるその表情が愛くるしい
  • イメージ カステル・ヴェッキオ博物館(ヴェローナ):古城を改装、博物館として再生したのは、中村さんが敬愛する建築家カルロ・スカルパ。展示作品だけでなく建築そのものも必見
  • イメージ スクロヴェーニ礼拝堂(パドヴァ):ジョットの最高傑作とされるフレスコ画が内部を埋め尽くす
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中村さんにとって旅とは どのようなものでしょうか

ル・コルビジェもそうでしたが、建築家は旅する人種です。旅から学ぶことが多いんですね。僕が手がけるのは主に一般の人の住宅なので、人の暮らしが見たい。風景、風土、風俗を見て歩くことが、家をつくる時のヒントになるのだと思います。

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参加の方々にぜひ メッセージをお願いします

旅の良さは、自分に向き合えることだと思います。今回の旅ではぜひご自身の心に向き合ってみてください。そして建築も美術も、ご自身の目や感覚で味わってほしいと思います。

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