青森県の八戸市から宮城県の牡鹿半島に至る太平洋岸が三陸海岸。その北部にあたる、JR八戸線の八戸駅から久慈駅までの海岸線を走るレストラン列車が「TOHOKU EMOTION」です。今回ご案内する旅は、その“走るレストラン”を貸切って、車窓を流れるダイナミックな断崖の海を眺めながら、有名シェフ監修のランチコースやデザートなどをご満喫いただきます。麗しい伝統工芸をまとう列車のドラマティックな旅路へお出かけください。
「TOHOKU EMOTION」での片道約2時間の列車旅をお楽しみいただく秋のツアーは、往復貸切乗車のプランと、八戸駅発の往路のみ乗車するプランの2コース。
「東北レストラン鉄道」と銘打つ列車の最大の魅力は、ライブキッチンスペース車両で調理の仕上げや盛り付けが行われる、できたてのおいしさにこだわった「食」。往路では、半年ごとに変わる人気シェフがプロデュースする、地元の旬の食材を使ったコース料理の昼食を。復路では、色とりどりのデザートとオードブルをお召しあがりいただきます。
今回ご案内する往路のランチメニューを監修するのは、岩手県奥州市にある料亭「日本料理 新茶家(しんちゃや)」の7代目料理長・和賀靖公(わがやすたか)さん。京都の名料亭「瓢亭」で4年、創業200年を超える老舗旅館「柊家」で2年半修業された後に帰郷し、実家である1850(嘉永3)年創業の料亭を継いだ和賀さんの手による、温故知新の精神に則る本格コース料理をご堪能ください。
また、復路のデザート監修は、「ホテルメトロポリタン盛岡」のシェフパティシエ・熊谷崇(くまがいたかし)さん。最初にアソートプレートを楽しんだら、東北の選り抜きの食材を使った多彩なスイーツとオードブルのブッフェをご満喫いただきます。デザートやドリンクは気に入ったものは何度でもどうぞ。
3両編成の「TOHOKU EMOTION」は、どの車両にも、東北各地の伝統工芸をモチーフとした上品なインテリアが施されています。まず、4人1組の個室が7室設けられたコンパートメント個室車両は、幾何学模様が美しい福島の「刺子織(さしこおり)」がモチーフの壁面ファブリックをアレンジ。三陸の海を思わせるブルーの革張りシートや人工大理石の白いテーブルもおしゃれです。
また、ライブキッチンスペース車両では、キッチン背面に青森県津軽地方の「こぎん刺し」を、カウンター壁面には岩手県の盛岡市と奥州市特産の「南部鉄」、八戸市の「南部姫毬」をデザインモチーフに採用。心和む上質なインテリアのなか、さまざまなコース料理やデザートが目の前でできあがっていく様子をご覧いただけます。
さらに、オープンダイニング車両では、床に「こぎん刺し」、照明に岩手の「琥珀」、什器の仕上げ材に宮城の「雄勝硯(おがつすずり)」をデザイン。雪国の温かみを感じる雰囲気と大きな連続窓による開放感のもと、優雅にお食事をお楽しみいただきます。
全長64.9キロを走る貸切レストラン列車は、料理だけでなく、三陸ならではの大海原の景観も贅沢です。往路では、八戸駅を午前11時頃に出発するとまもなく、ウミネコの繁殖地として国の天然記念物に指定されている「蕪島(かぶしま)」が車窓に。その頂には「蕪嶋神社」が鎮座しています。
さらに海岸線を走ると、1938年に建設され、「日本の灯台50選」にも選ばれた「鮫角(さめかど)灯台」や、かつて旧日本軍が軍事施設として使用していた、城壁のような「葦毛崎(あしげざき)展望台」が見えてきます。見どころでは、列車がスピードを落としたり停車したりするので、ごゆっくりお楽しみください。
また、沿線有志の方々による列車のお出迎えも見逃せない楽しみの1つ。縁起を担ぐ派手な色彩の大漁旗や両手を振って乗客を歓迎してくれる心温まる姿には、大きな感動を覚えることでしょう。