[ 国内特集② ]

迷えるほどの歓びで満たす

秋の美食を求めて

企画=山口真司/伊藤麻美子/小林絵梨/柳幸治/塩田華世 文=井上智之
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食欲は、爽やかな風に誘われて目覚めるのでしょうか?豊饒なる実りに刺激されるのでしょうか?いずれにしても、秋ほどに美食家が心待ちわびる季節もありません。なかでも房総の海から順次解禁になる地揚がりの伊勢海老と、森の香を授かったような松茸はまさに秋の味覚の王様です。ご案内するのは、そんな海の幸と山の恵みの旬を名産地で満喫する全10コースです。大いに迷いながら、これぞ!の旅をどうぞ。

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解禁とともに房総で、
湯処の下田で伊勢海老を。
五島列島では、驚きサイズの天然物が

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館山の古民家オーベルジュで 日本でいち早く伊勢海老を

プリプリとしたあの歯ごたえ、芳醇な甘みと濃厚な味噌のたまらない旨味。旬の伊勢海老を待ちわびる皆さまは、千葉県・南房総の館山へ急ぎましょう。産卵期に入る個体を保護するために一定の期間、禁漁状態にある伊勢海老ですが、その漁が全国的にもいち早く8月に解禁されるのが千葉県です。この地の伊勢海老は浅瀬に生息することが多いため、日に焼けて色が黒いことが特徴。引き締まった身と甘みから、「房州海老」の名でブランド化されています。

南房総は、暖流の黒潮と寒流の親潮がぶつかる格好の漁場が広がるとともに、温暖な地でもあることから魚介や野菜、果物の宝庫です。そんな地産食材を活かしたガストロノミー体験の舞台が、築百年の古民家をリノベーションした百年古民家オーベルジュ「季の音」です。旧家の邸宅を偲ばせる和の空間で、自家保有する定置網漁船から水揚げされたばかりの「房州海老」をご満喫ください。

客室は、温泉露天風呂、サウナ、水風呂を完備しテラスと庭園も配された2室と、庭園を望む温泉露天風呂を楽しめる4室の全6室。風情ある日本家屋の雰囲気に抱かれながら、安らぎの旅時間に浸りましょう。

  • イメージ イメージ ほかの地に先駆けて解禁になったばかりのブランド伊勢海老を味わう
  • イメージ 旧家の邸宅を偲ばせる佇まいの百年古民家オーベルジュ「季の音」
  • イメージ 露天風呂・サウナ・テラス付きの客室「季の風雅」(一例)
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南伊豆・下田で旬の伊勢海老 そして温泉に癒されるひと時を

海景色も麗しい南伊豆の下田は、歴史ある湯処であるとともに魚介の宝庫として知られます。その理由は、豊饒なる相模湾に望んでいるから。黒潮と親潮の海水と、箱根や丹沢の森から養分たっぷりの河川水が交じり合うこの湾は、日本の海に生息する約4,000種の魚のうち、実に1,600種ほどがみられるそうです。

なかでも水揚げ量日本一を誇る金目鯛とともに、下田の名を轟かせるのが伊勢海老です。ご案内する旅では、天城山系の山々に囲まれた地に佇む「里山の別邸・下田セントラルホテル」を滞在先に、伊勢海老をはじめ金目鯛などの魚介と、地産の里山野菜をふんだんに使った料理に舌鼓。豊富な湯量を誇る自家源泉で、ゆったりとお寛ぎください。

  • イメージ 「里山の別邸・下田セントラルホテル」で自家源泉の温泉を満喫
  • イメージ 伊勢海老、金目鯛などの海鮮料理は下田ならではのごちそう
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五島列島で大ぶりの天然伊勢海老そして“幻の和牛”を堪能

伊勢海老も思い出も大物狙いの皆さまは、足を延ばして五島列島への旅がおすすめです。長崎県西部に位置するこの列島は、いにしえのカトリック教会が今も点在し、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」として2018年に世界遺産に登録されました。と同時に、暖流の対馬海流の流れに乗って多彩な魚が回遊することから、海産物の名産地でもあります。

その代表格が、伊勢海老です。目を見張るのは、そのサイズ。他地域と比べて、大物が揚がることで知られています。ご案内する旅では、美食の宿で定評ある「五島リトリートray by 温故知新」に滞在し、天然物の伊勢海老をお造り、姿焼きなどお好みの調理法でご堪能いただきます。地産の厳選食材で奏でられるコース料理のもう一つのお楽しみは、年間400頭ほどしか出荷されないため“幻の和牛”と呼ばれる五島牛を使った料理。ミネラル豊富な牧草で培われた、ジューシーでとろけるようなおいしさに唸らされることでしょう。

寛ぎのひと時を彩るのが、高さ約6メートルにおよぶガラス張りのロビーや、客室から望むオーシャンビューです。清々しい朝とともに目を覚ますと、大きな窓からは東シナ海の青い輝きが。備え付けの露天風呂に身を任せながら、水平線に包まれるかのような非日常のひと時をどうぞ。

  • イメージ イメージ 「五島リトリート ray by 温故知新」では、濃厚な甘みとプリプリ食感の伊勢海老をお好みの調理法で
  • イメージ 市場に出回らないことから“幻の和牛”と呼ばれる 五島牛の味わいも旅の思い出に
  • イメージ 高さ約6メートルにおよぶガラス張りのロビーから望む東シナ海の絶景
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秋景色の信州で名産の松茸に舌鼓。
滋賀のかくれ里で味わう、
焼き松茸も心ひかれて

松茸で秋を感じ その味わいを五感で楽しむ

海外ではそれほど珍重されないそうですが、五感で食を楽しむ私たち日本人にとって香りさえも麗しい松茸は土瓶蒸し、炭火焼き、酒蒸し、松茸ご飯と、かけがえのない秋のご馳走です。

そんな松茸の価値をさらに高めているのは、椎茸などのきのこ類と違って人工栽培の手法がいまだ確立されていないため、自然発生したものを収穫するしかないことや、森林破壊などの影響によって収穫量が減少していることも一因でしょう。それだけに、軸が太く傘がひらいていない「つぼみ」と呼ばれる松茸は特に高嶺の花です。

貴重な天然松茸を、一度は味わってみたい。その芳醇な香り、おいしさを、名産地で堪能したい……ご案内するのは、そんな美食家の想いにお応えする松茸三昧の旅。品質の良さで定評ある長野県産の「信州松茸」を堪能できる旅を中心に、多彩なコースをご用意しました。

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「信州松茸」の産地で豊饒さを堪能する4コース

まずは、松茸の生産量全国1位を誇る信州で、旬の味わいに心躍る4コースをご案内していきましょう。松茸のほかにもこの地は、ぶどうやりんごをはじめ秋の実りが多種多彩。選りすぐった滞在先やアクティビティと併せて、それぞれに魅力的な旅に仕立てました。

Aコースは、昭和四年創業の上林温泉「仙壽閣」で松茸懐石や信州牛のすき焼きを堪能するとともに、りんご狩りを楽しむなど、秋の信州の醍醐味を満喫いただく旅です。県内最大級の湯量を誇る「仙壽閣」でかけ流しの温泉につかり、疲れを癒しましょう。

Bコースでは、近代建築の巨匠フランク・ロイド・ ライトに師事した建築家・遠藤新が設計し有形文化財にも指定される数寄屋造りの笹屋ホテル「豊年虫」で、土瓶蒸、信州牛と松茸のせいろ蒸しなど、松茸三昧の会席料理と源泉100パーセントの温泉をどうぞ。ボリュームたっぷりの焼き松茸にも、心躍ることでしょう。また、マスカットのような香りとシャインマスカットを上回る甘さが特徴の、長野県オリジナルの赤ぶどう「クイーンルージュ®」狩りも楽しみの1つです。

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Cコースは、信州最古の湯といわれる別所温泉に創業150余年の歴史を刻む「玉屋旅館」で、旬の「信州松茸」と、地元のりんご入り飼料で育つ柔らかく旨味の濃い肉質が特徴の「信州プレミアム牛肉」の会席料理をご堪能いただきます。平安の世から語り継がれる名湯、和モダンなプレミアムスイートルームで過ごす上質なひと時をお過ごしください。

  • イメージ イメージ 創業150余年の「玉屋旅館」では、「信州松茸」と「信州プレミアム牛肉」の会席料理

Dコースは、全国の約6割以上の収穫量を誇る松茸の産地である長野県でも、特に良質な松茸が採れることで名を馳せる南信州を訪ねます。昼神温泉郷の静かな山間に隠れ家のように佇む「石苔亭いしだ」で、とろりとした肌触りの湯で寛ぐとともに、日本の原風景が広がる奥天竜の不動温泉「佐和屋」で松茸懐石の昼食を堪能していただきます。また、りんご狩りを楽しむ旅時間も思い出になることでしょう。

  • イメージ イメージ 松茸産地・不動温泉「佐和屋」での昼食は、良質なことで知られる南信州産の松茸懐石
  • イメージ 信州が誇る秋の実り、りんご狩りにも心躍る
  • イメージ 長野県期待の赤ぶどう「クイーンルージュ®」の 味わいはいかに
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味わい深い「信州松茸」を軽井沢で楽しむ2コース

日本屈指のリゾート地・軽井沢で「信州松茸」ならではのおいしさを体験する旅…… それだけで美食家の旅人は心躍ることでしょう。ときめきの舞台は、自前の松茸山を有しているという別所温泉「松籟亭」。松茸丸ごと一本焼や名物の「信州産牛サーロインと松茸のすき焼き」といった贅なる昼食に、思わず笑みがこぼれます。

宿泊先は、上質なリゾート滞在を提案する「ふふ」が軽井沢に誕生させた2つの施設です。Aコースは「ふふ軽井沢 陽光の風」で爽やかなリゾート気分をたっぷりと。Bコースは、旧軽井沢の森に佇む「ふふ旧軽井沢 静養の森」で、大人の寛ぎ時間をお過ごしください。

  • イメージ イメージ 自前の松茸山を有する「松籟亭」で、旬の松茸と信州産牛の贅なる昼食を
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山里の料理宿「比良山荘」で「焼き松茸と子持ち鮎」を満喫

美食処の噂を聞けば、遠くとも訪れたくなるのがグルメの性でしょう。そんな皆さまを魅了してやまないのが、滋賀県の秘めやかな山里に佇む料理宿。山の奥へ、奥へと進みゆくと、比良岳の清流が水車を回すのどかな風景と、趣のある日本家屋の「比良山荘」が現れてきます。

目の前で焼きあげる「焼き松茸と子持ち鮎」は、お客さまから「今年の秋も『比良山荘』のツアーはありますか?」とお問合せをいただく評判の美食コースのひと皿です。ただし、元来が登山宿として創業しただけに、個人で訪れるにはアクセスが容易ではありません。このツアーを通じて訪れるのが無難でしょう。

こと食に関する限り、旅人はとても欲張り。さて、皆さまは生き生きとした伊勢海老に心躍らせますか? それとも香しい松茸に心酔わせますか? 尽きせぬ美食への想いをたらふくの感動で満たすこの旅は、秋景色に負けず劣らずの彩にあふれます。

  • イメージ イメージ 「比良山荘」の松茸料理は、奥深い山里をはるばる訪れた甲斐があるというもの